日本の秋を彩る旬の果物と言われると、多くの方が美しいオレンジに色づいた『柿』をイメージするのではないでしょうか?

秋になると、スーパーの店頭などにも多くの柿が並ぶようになりますし、毎年秋の味覚として柿を楽しみにしているという方は多いと思います。ただ、一般的には、柿特有の固めの食感と強い甘みを楽しめる果物というイメージが強い柿ですが、渋柿と呼ばれる品種も多くあるのはご存知でしょうか?渋柿は、その名称通り、口にすると非常に強い渋みを感じる柿の種類を指しています。こういった渋柿は、干し柿にして食べるものと考えている方がほとんどだと思いますが、実は普段皆さんがスーパーで手に取っている柿の中にも、渋柿が含まれているのです。

こう聞くと、「スーパーで購入した柿の中で、渋くて食べられなかった…なんて物はなかったけど?」と疑問に感じてしまう方が多いと思います。これは、スーパーなどで販売されている渋柿については、渋抜きという処理が施されていて、甘柿と呼ばれる品種以上の甘さが引き出されているからです。そして、柿の渋抜きという処理については、皆さんの自宅でも簡単に施すことができますので、「自宅になった柿が渋くて食べられない…」なんて時には試してみてはいかがでしょう。
この記事では、渋柿でも美味しく食べるための『渋抜き』について解説します。記事内では、ご家庭で簡単にできる渋抜き方法も解説しますのでぜひ参考にしてみてください。

柿の渋抜きって何?

それではまず、柿の渋抜きが何を目的で行われる作業なのかについて簡単に解説します。一般的には、「甘くて美味しい果物」というイメージが付いている柿ですが、柿にも甘柿と渋柿の二種類が存在しています。そして、渋柿はそのまま食べることが難しいほど、非常に強い渋みを感じる果物なのです。

渋柿の食べ方と言えば、干し柿が有名です。昔から秋になると、農家の軒先などに柿がずらっと干してあるという風景を見かける機会があるため、多くの方が渋柿は干すことで「渋」が抜け、美味しく食べられるようになるのだと考えているではないでしょうか?実際に、渋柿は干すことで、非常に強い甘みを感じることができるようになります。

ただ、渋柿の渋抜きは、干す以外にもさまざまな方法が存在します。そもそも、柿の「渋を抜く」というのはどういう作用が働いているのでしょうか?渋柿の渋味の原因は、タンニンと呼ばれる成分で、タンニンを舌が「渋味」として感じているからだそうです。そして、渋抜きは、このタンニンを舌で感じさせなくすることを指していて、「抜く」と言ってもタンニンが柿の外に出ていくわけではありません。

タンニンは、水に溶けやすいという性質を持っていて、それが口の粘膜にくっつくと渋味を感じるという仕組みになっています。ただ、このタンニンは、アセトアルデヒドという物質と結合することで、水に溶けにくくなり、口に含んでも渋味を感じなくなるのです。つまり、渋柿の渋抜きというのは、タンニンとアセトアルデヒドをくっつける作業のことを指しているのです。ちなみに、口に含んでも渋味を感じない甘柿についても、タンニンを含んでいます。実は、タンニンにも水溶性の物と不溶性の物があり、甘柿は不要性の物を含んでいることから、渋みを感じないのだそうです。

渋柿は、一般的に、甘柿よりも多くの糖分を含んでいるとされるため、渋抜きを施してタンニンを感じなくさせることができれば、甘柿よりも強い甘さを楽しむことができる柿になるのです。

渋柿の渋抜き方法について

それでは、自宅で簡単にできる渋柿の渋抜き方法についていくつかの手段をご紹介します。上述したように、渋柿の渋抜き方法の中では、干し柿にするという方法が最も有名だと思います。ただ、この方法だと、柿特有の食感が楽しめなくなるため、柿の状態は変えずに渋抜きする方法はないのかな…と考えてしまう方が多いと思います。

スーパーなどで販売されている柿については、焼酎やドライアイス、エタノールなどを利用した渋抜きが有名です。そして、これらの方法は、一般の方が自宅で行おうと思えば、意外に簡単にできる方法ですので、ここではいくつかの渋抜き方法を簡単に解説します。
ちなみに、一昔前までは、家庭で渋抜きを行う場合、「お風呂の残り湯に1晩つけておく」という方法が一般的だったとされています。柿をお湯に浸けると窒息状態になり、実の中でアセトアルデヒドができるという仕組みだそうです。そして、アセトアルデヒドは40℃ぐらいの環境が最もできやすいとされていることから、それに近い残り湯に浸けておくという方法が採用されたのだと思います。鹿児島県などでは、温泉に浸けて渋抜きした柿が有名ですが、これは温泉の成分が渋抜きに関係しているというよりは、お湯に浸けていることが重要なのだと思います。

焼酎(アルコール)を使って渋抜きをする

一つ目の方法は、焼酎を利用した渋抜きです。自宅に焼酎がない場合は、アルコール度数が30度以上のアルコールであれば代用可能です。焼酎を使った渋抜きは、下の手順で行いましょう。

  • ①渋柿をキッチンペーパーなどで軽く拭く
  • ②渋柿1個に対して大さじ3程度の焼酎を容器(ボウルなど)に入れ、ヘタを下にした状態でヘタの部分を数秒浸ける
  • ③柿をビニール袋に入れて口を閉じ、1週間〜2週間ほどおく

ビニール袋に入れて柿を置いておけば、渋抜きが進みます。なお、置いておく期間については、小さめの柿で1週間程度、大きめの物なら2週間程度が目安です。

消毒用エタノールを使って渋抜きをする

次はエタノールを用いた渋抜き方法です。まずは、「消毒用エタノール・水・スプレーボトル・ビニール袋」を用意してください。これらのアイテムが用意出来たら、以下の手順で渋抜きをすすめましょう。

  • ①消毒用エタノールを水で2~3倍に薄めて、スプレーボトルに入れる
  • ②希釈したエタノール水を渋柿の全体にまんべんなく吹きかける
  • ③エタノール水を吹きかけた渋柿をビニールに入れ、口を閉じて密閉する

上記の手順を行ったら、1週間程度おいておきましょう。そうすると渋抜きが完了し、柿が甘くなります。

ドライアイスを使って渋抜きをする

最後はドライアイスを利用する渋抜き方法です。これは、プロの柿農家でも採用されるケースが多いです。

ドライアイスを手に入れることが最も難しいのですが、ケーキや生菓子を購入した時に、ドライアイスが付いてくる場合があります。このような物を置いておき、柿の渋抜きに利用すると良いでしょう。

  • ①渋柿を入れたビニール袋をダンボール箱に入れる
  • ②ドライアイスを1日分程度の新聞で包み、渋柿の上に置く
  • ③渋柿を入れたビニール袋から出来る限り空気を抜き、固く縛る

渋柿とドライアイスを入れた状態で4~5日間ほど置いておけば渋抜きが完了します。なお。柿の種類によって渋抜きにかかる日数が変わりますので、その辺りは注意してください。

参照:楽天レシピ

まとめ

今回は、渋柿の渋抜きについて解説しました。柿は、独特の食感と強い甘みを楽しめる果物として有名ですが、別記事でもご紹介しているように甘柿と渋柿の二種類があり、渋柿はそのままではとても食べられないほど強い渋味を持っているのです。ただ、渋柿は甘柿よりも糖分が高いため、渋抜きをきちんとしてあげると、非常に甘くて美味しい柿に変身します。

記事内でご紹介しているように、渋柿の渋抜きは自宅でも簡単にできる方法がたくさんありますので、渋抜きがすんでいない渋柿が手に入った際には、ぜひ試してみてください。

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