今回は、ここ20年ほどでその立場が大きく変わってきた「ぶどうの皮」について解説したいと思います。

このサイト内の他の記事でも何度か触れていますが、日本人にとってぶどうの皮は「剥いて捨てるもの」というイメージが強かったと思います。日本国内のぶどう品種の中でも特に知名度が高い、巨峰やピオーネ、デラウエアなどについては皮を剥いて果実だけを口に入れる、もしくは口の中で皮を剥いて吐き出すといった食べ方が一般的です。

しかし、ぶどうは現在でも新しい品種が登場しているのですが、近年トレンドとなっているのは、「種無し」「皮ごと食べられる」というポイントなのです。例えば、シャインマスカットや瀬戸ジャイアンツなどは、スナック感覚で皮ごと食べられるという点で、一気に全国的な人気を獲得したと言われています。

ただ、日本では「皮ごと食べられるぶどう品種」という視点で品種改良がおこなわれているのですが、そもそも諸外国では「ぶどうは皮ごと食べるもの」という認識が一般的だそうです。それでは、日本人が皮を剥いて食べるのが一般的な品種については、絶対に皮ごと食べてはいけないものなのでしょうか?この記事では、近年その取扱いが変化しているぶどうの皮について、皮ごと食べるメリットや注意点を解説します。

ブドウを皮ごと食べるメリットとは?

それではまず、ぶどうを皮ごと食べることで得られるメリットについて解説します。皮ごとぶどうを食べた場合、皮を剥いて食べるのと比較すると、より多くの栄養素を摂取できる点が最大のメリットです。

特に、ぶどうから摂取できる栄養素として有名なポリフェノールという成分については、ぶどうの色素成分でもありますので、果肉部分ではなく、皮の部分にその多くが含まれています。ポリフェノールは、老化防止や生活習慣病の予防に効果的だと言われていますし、これを目的にぶどうを食べている方も多いのではないでしょうか?また、ポリフェノール以外の栄養素についても、皮を剥いて食べるよりも皮ごと食べる方が多く摂取できるとされています。

以下で、ぶどう可食部100g当たりの栄養素について、皮ごとと皮なしで比較してみます。

■ぶどう可食部100g当たり、皮ごと食べた場合
・食物繊維:0.9g
・カリウム:220mg
・β-カロテン:39μg
・ポリフェノール:200mg

■ぶどう可食部100g当たり、皮を剥いて食べた場合
・食物繊維:0.5g
・カリウム:130mg
・β-カロテン:321µℊ
・ポリフェノール:―

このように、同じぶどうを食べる場合でも、皮ごとと皮を剥いて食べるのでは、摂取できる栄養素が大幅に変わるのです。

関連:ぶどうに含まれるポリフェノールとは?ポリフェノールの種類と効果についてご紹介

近年のぶどう市場は「種無し・皮ごと」がトレンド

ぶどうは現在でも品種改良が盛んに行われており、どんどん新しいぶどう品種が登場しています。そもそもぶどうの品種は、世界中を見渡してみると、なんと1万種類以上もあると言われています。

その中でも、近年日本国内で人気なのが、種無し処理が行われていて、皮ごと食べられるぶどう品種です。皮ごと食べられるぶどうと言えば、シャインマスカットが有名ですが、実はこれ以外にも皮ごと食べられる品種はたくさんあります。以下に、代表的な物をいくつかご紹介します。

  • ・シャインマスカット
  • ・瀬戸ジャイアンツ
  • ・ナガノパープル
  • ・サマーブラック
  • ・サニードルチェ
  • ・レッドグローブ
  • ・シードレス

上記以外にも皮ごと食べられるぶどうの品種がありますので、ぜひいろいろな品種を食べてみてほしいです。

皮ごと食べる品種以外は皮を剥いた方が良いのか?

冒頭でご紹介したように、日本人にとっては「ぶどうは皮を剥いて食べる」というのが一般的だったと思います。現在では、品種改良が進んで皮ごと食べられる品種が増えているのですが、それでは「皮ごと食べられる」ように品種改良されているわけではないぶどう品種については、皮は食べない方が良いのでしょうか?

例えば、日本人にとって非常になじみ深いぶどう品種である巨峰やピオーネ、デラウェアについては、皮は剥いて食べる方がほとんどだと思います。ただ、これらの品種についても、皮を食べることで健康に害があるわけではなく、皮ごと食べても問題はありません。
もちろん、「皮ごと食べられる」ように品種改良がおこなわれたわけではないので、皮が分厚くて硬く感じたり、渋味を感じたりすることがあります。しかし、これらの違和感が気にならないという方については皮ごと食べても問題ありません。

ぶどうは、どの品種でも、皮やその周辺に多くの栄養素が含まれていますので、ぶどうの栄養を余すことなく頂きたいと考えるのであれば、皮ごと食べてみてはいかがでしょう。

ぶどうを皮ごと食べる時の注意点について

それでは、ぶどうを皮ごと食べる時の注意点についても簡単にご紹介します。なお、ここで紹介する注意点は、皮ごと食べられるように品種改良が進められたぶどうも同じです。

  • 良く洗ってから食べる
    ぶどうの皮には、汚れや残留農薬が付着している場合があります。なお、残留農薬については、出荷のための基準などがきちんと設けられているため、人体に悪影響が出るなどの心配は基本的にありません。ただ、汚れなどを落とす意味でも、食べる直前に良く水洗いしてから食べましょう。
  • 食べ過ぎに注意
    ぶどうは皮ごと食べる方が多くの栄養素が摂取でき、健康に良いのは確かです。しかし、いくら健康に良い食べ物でも、食べ過ぎてしまっては逆効果になる可能性があるのです。例えば、食物繊維が豊富なので、摂りすぎてしまい消化不良になる可能性がある、ぶどうは比較的カロリーが高い食べ物なので、カロリーの過剰摂取になってしまうなどの問題があるので、食べ過ぎには注意してください。

ぶどうを皮ごと食べる時は、上記の点は注意してください。
なお、どのような果物でも、食べ過ぎてしまうと健康に悪影響が出てしまう可能性があります。日本人の多くは、野菜や果物の摂取量が少ないと言われており、毎日それなりの量を摂取するように努力すべきとされています。ただ、むやみやたらに果物を摂取すれば良いというものではなく、適量というものがあるのです。
例えば、農林水産省などでは、「毎日くだもの200グラム運動」という活動を行っているのですが、これは日本人の毎日の食生活に果物を定着させるのが目的とされています。ただ、毎日果物を食べるにしても、一日に推奨される果物の量は『200g』程度が目安となっています。ぶどうに関しては、品種によって重さが異なりますが、巨峰だと一房300~400g程度だと言われています。つまり、一日に食べるぶどうの量は1/2房(巨峰の場合)が目安となります。

参照:農林水産省「毎日くだもの200グラム運動」

まとめ

今回は、ぶどうの食べ方に関するよくある疑問で「ぶどうの皮は食べても問題ないのか?」について解説しました。

記事内でご紹介したように、近年では、ぶどうの品種改良が進んで、種無しで皮ごと食べられるぶどうの人気が高くなっています。そのため、若者の中には、「ぶどうは皮ごと食べられる果物」というイメージが定着してきているかもしれません。ただ、40代以上の方が持つぶどうのイメージは、「ぶどうは皮を剥いて食べる果物」でシャインマスカットのような皮ごと食べられるぶどうを苦手とする方までいるようです。子供のころから「皮を剥く」という習慣があることから、なんとなくぶどうの皮に悪いイメージがあるのかもしれませんね。

なお、ぶどうは、皮を剥いて食べるのが一般的な品種であっても、皮を食べることで健康被害が出るような事はありません。諸外国では、昔から皮ごと食べるのが一般的とされていますし、ぶどうの栄養を余すことなく摂取するには、皮ごと食べるのが正解なのです。
今後、ぶどうの品種改良はさらに進んでいくと考えられますし、数十年後には全ての品種が皮ごと食べられる種無しぶどうになっているかもしれませんね。