今回は、多くの方があまり考えたことが無いであろう、ぶどうの栄養について解説します。

突然ですが、皆さんはぶどうを食べる時には、どのようにして口にするでしょうか?最近では、皮ごと食べられるぶどうの品種が増えていますが、多くの日本人は、ぶどうの皮を剥いて口に運ぶ、デラウェアのような小粒のぶどうは口の中で皮を外し吐き出すといった食べ方をしているのではないでしょうか。

日本人にとっては、「皮を剥く」のが当たり前のフルーツであるぶどうですが、実は諸外国の方はぶどうを皮ごと食べるのが一般的だそうです。というのも、ぶどうの栄養素は、その多くが皮と種に含まれているそうで、日本人のぶどうの食べ方は栄養源を捨てているといった感じになるのです。
今回は、日本人にとっては意外なぶどうの食べ方や、栄養素について解説します。

ぶどうについておさらい

ぶどうの栄養素についてご紹介する前に、ぶどうというフルーツがどういったものなのかと言った基礎知識をおさらいしておきましょう。なお、ぶどうの分類や豆知識などをまとめたコラムも以前ご紹介していますので、お時間のある方は、以下の記事もぜひご参照ください。

関連記事:意外と知られていないぶどうの分類について!奥深いぶどうの豆知識をご紹介!

ぶどうは、ぶどう科の木になる果実の事です。日本人にとって最も身近なぶどうと言えば、スーパーなどでも比較的安価に販売されているデラウェアという小粒のぶどうですが、このぶどうはアメリカに自生していた生食用のぶどう品種で、1800年代に日本に入ってきています。ちなみに、世界中でさまざまな種類のぶどうが自生していて、古くはヨーロッパやエジプトなどで栽培が始まり、ワインなどのぶどうを使った加工品が開発されてきました。つまり、ぶどうは、何千年もの間、人々に長く愛されてきたという歴史を持っています。

日本でのぶどうの扱い

日本とぶどうの関係も非常に歴史深いです。日本にぶどうが伝来したのは、なんと奈良時代もしくは平安時代と言われていて、今から1000年以上も前にぶどうが伝わっているのです。そもそも、日本国内にも山ぶどうと呼ばれる固有のぶどう品種が自生しています。そして、鎌倉時代に、日本に自生していたぶどう品種と伝来したものを交配しながら、さらなる栽培がおこなわれるようになったとされています。ちなみに、これが甲州ぶどうです。

ぶどうの品種改良は、現在でも盛んにおこなわれており、日本国内では巨峰を始めとして、デラウェア、ピオーネ、ナイアガラ、スチューベン、甲州、シャインマスカットなど、幅広いぶどう品種の栽培がおこなわれています。なんと、日本国内だけでも、60品種以上のぶどうが栽培されています。

ぶどうの産地

本来、日本の気候は、ブドウの栽培にはあまり向いていないとされています。ただ、研究家や栽培者の努力によって、現在では日本の気候でも美味しい果実を実らせるぶどう品種がたくさん登場しており、生食用の日本のぶどうは世界ナンバーワンとも言われる品質になっています。

日本国内では、全国各地でぶどうが栽培されるようになっており、その中でも生産量が多く、ぶどうの名産地として有名なのが山梨県、長野県、山形県、岡山県です。特に、山梨県は、日照が十分あり、昼夜の寒暖の差が大きく、成熟期に雨が少ないなど、ぶどうの育成条件が揃っているため、さまざまなぶどう品種で日本一の生産量を誇ります。

ぶどうの旬は、基本的に8月から10月にかけてなのですが、最近ではハウス栽培が盛んになってきた、輸入物のぶどうが増えているといったことから、もっと早い時期から美味しいぶどうを手に入れられるようになっています。

参照:農林水産省公式サイトより

ぶどうに含まれる栄養とは?

ぶどうは、食事というよりもデザートやおやつとして食べられるものですので、「どんな栄養が含まれているのか?」と言った点に疑問を持つ方は少ないです。しかし、諸外国でのぶどうの扱いは、牛乳のように栄養価が高いことから、畑のミルクと呼んでいるような地域もあるのです。

ちなみに、ぶどうは色によって3つの種類に分けることができます。日本でもおなじみの巨峰やピオーネに代表される黒系、甲斐路やデラウェアなどの赤系ぶどう、シャインマスカットやロザリオ・ビアンコのような緑系です。そして、ぶどうの果実は、最初は全て緑色をしているのですが、成長過程で先述のような色に変化していきます。

ぶどうは栄養素で色が変わる

ぶどうは、果実が未熟なうちはどれも緑色の皮をしています。それが成長の過程で、黒や赤の色素が作られ、皮の色が変化していくのです。ぶどうの果実が熟しても、緑色のままなのは、色素が作られないからです。

上述のように、ぶどうは黒系や赤系のぶどう品種があるのですが、これらのぶどうの皮にはポリフェノールの一種である「アントシアニン」が含まれています。アントシアニンは、眼精疲労や活性酸素を除去する効果があるとされています。また、悪玉コレステロールの発生を防ぎ、血液を綺麗にする働きを持つことから、動脈硬化やがん予防も期待できると言われています。
さらに、ぶどうは体に吸収されやすいぶどう糖や果糖などの糖質が多く含まれており、食べるとすぐにエネルギーとして利用できる点も食べ物として優れています。ただ、ぶどうは15度以上の糖度を持っていますので、糖質制限をしている方は注意が必要です。

ぶどうは皮ごと食べるのがオススメ

冒頭でご紹介したように、日本では皮を剥いて食べる方が多いぶどうですが、諸外国では皮ごと食べるのが一般的です。というのも、ぶどうの栄養素は、その多くが皮と種に含まれていると言われており、日本人のように皮を剥いて食べた場合、多くの栄養を捨てているのと同じだからです。したがって、ぶどうの栄養素を余すことなく頂きたいと考えるのであれば、皮ごと食べるのがオススメです。

ちなみに、ぶどうを原料として作られる赤ワインは、果汁だけでなくぶどうの皮や種も一緒に発酵することで、赤ワイン特有の渋みと深い赤色が出ているそうですよ。

栄養を丸ごと頂くためのぶどうの食べ方

ここまでの説明で分かるように、ぶどうの栄養を余すことなく頂くためには、皮ごと食べるのが正解です。ただ、諸外国とは異なり、日本人にとっては「ぶどうは皮を剥いて食べる!」のが一般的です。実際に、シャインマスカットなどのように、皮ごと食べられるように品種改良されたぶどうであっても、皮ごと食べることに抵抗感を持つという方が一定数いらっしゃいます。

こういった方が気になるのは、ぶどうの表面に付着しているだろう『農薬』が人体に何らかの悪影響を与えるということです。まず皆さんに知っておいてほしいのは、日本国内で販売されている食品については、非常に厳しい基準が設けられていて、店頭に並んでいる果物や野菜などの生鮮食品は、残留農薬の危険性が無いものとなっています。つまり、食べる前に水洗いしておけば、農薬で人体に悪影響が出るなどと言ったことは基本ありません。
ただ、中にはどうしても残留農薬が気になってしまうという方もいると思います。そういった方は、食べる直前に重曹を溶かした水でぶどうを洗い、農薬をしっかりと落としたうえで食べると良いでしょう。そうすることで、ぶどうが持っている栄養を余すことなく取り入れることができます。

ぶどう表面の白い粉は農薬ではない

ぶどうを皮ごと食べるのに抵抗感がある方の中には、ぶどうの果実表面に白い粉のようなものがついていて、それが農薬なのでは…と考えているようです。はっきり言っておきますが、ぶどう表面についている白い粉は農薬ではありませんし、生産者も出荷時に白い粉が落ちないように注意するほどぶどうにとって大切なものです。

ぶどう表面に付着している白い粉は、ブルームと呼ばれる物質で、ぶどうが自発的に発した自然由来の物質です。ブルームは、雨や朝露などをはじいて病気を防いだり、水分蒸発を防いでくれる効果があり、ぶどうが新鮮な証拠でもあるのです。今までこの白い粉を農薬と考えて「ぶどうの皮は剥かなければいけない!」と思っていたのであれば、大きな間違いですよ。
ちなみに、スーパーなどでぶどうを選ぶときには、このブルームがきちんと残っている物を選ぶようにしましょう。軸が枯れていなくて、ブルームがきちんと残っているものほど、新鮮なぶどうです。

ぶどうの保存については、基本的に冷蔵庫の野菜室で保管するのがオススメです。その他にも、常温保存、冷凍保存と言った保存方法が選べます。ぶどうの保存や賞味期限については、以前別のコラムでご紹介していますので、ぜひ以下の記事もご参照ください。

関連記事:ぶどうの賞味期限ってどのぐらい?ぶどうの保存に関する基礎知識

まとめ

今回は、ぶどうの栄養素とぶどうの栄養を余すことなく頂くための食べ方についてご紹介しました。ブドウは、デザートやおやつと言ったイメージを持つ方が多いことから、ぶどうの栄養についてはあまり考えたことが無いという人が多いと思います。しかし、ヨーロッパなどでは、牛乳のように豊富な栄養があることから、ぶどうの事を畑のミルクと呼ぶほどなのです。

注意が必要なのは、いくらぶどうが豊富な栄養を持っていたとしても、一般的な日本人のぶどうの食べ方では、多くの栄養を取りそこなってしまいます。この記事でご紹介したように、ぶどうの栄養の多くは、皮や種に含まれていますので、皮を剥いて食べる場合、多くの栄養素を捨てているのと一緒と考えなければいけません。ぶどう表面の残留農薬などがどうしても気になるという方もいるとは思いますが、日本の法律では、店頭に並べる時に人体に影響が出るほどの残留農薬にならないようになっていますので、正直そこまで気にする必要はないと思いますよ。それでも気になる方は、重曹を溶かした水で良く洗うなどの対策を試してみましょう。

なお、夏場にギフトなどでぶどうを頂く機会が多い方は、ぶどうの保存に注意してください。特に、冷蔵庫に入れる前に水洗いする方もいるのですが、その場合、ぶどうを守ってくれるブルームを落としてしまうのでオススメできません。ぶどうは、食べる直前に水洗いする方が長持ちしますので、保存方法についてもきちんと覚えておきましょう。

田中ぶどう園では、日本国内でも非常に人気の高いシャインマスカットや巨峰を始めとして、非常に希少性の高いルーベルマスカットなども栽培しています。ぶどうの旬の時期になれば、通販サイトでの販売も行っていますので、自分用やギフト用に美味しいぶどうを探している方は、お気軽にお問い合わせください!