今回は、多くの方が朝食の楽しみとしている、美味しいジャムの賞味期限について解説します。スーパーなどで販売されているジャムは、年単位の非常に長い賞味期限が設定されていることから、優秀な保存食と考えている方が多いです。実際に、ヨーロッパなどでは、イチゴやラズベリーを収穫した時には、甘いジャムを作って、いつでも食べられる保存食としていたという歴史があるようです。それでは、ジャムの賞味期限がこれほどまで長く設定されているのはなぜなのでしょうか?

実は、砂糖が大量に入れられるジャムは、食べものを腐らせるカビ、細菌などの微生物が増える原因となる「水分」を減少させることで傷みにくい保存食にしているのです。カビや細菌などの微生物は、水がないと増えることができません。多くの食べ物は、水分を含んでいて、これがカビや細菌を増殖させています。ただ、食品に含まれる水は、「結合水」と「自由水」という2種類があり、結合水は、炭水化物、タンパク質など食べものの成分と一体となっているため、微生物が増えるために利用されることはありません。しかし、自由水は、カビや微生物の増殖に利用されることから、これを減少させることが食べ物を腐りにくくするのに大切なのです。砂糖は、この自由水を結合水に変えることができるため、大量の砂糖が使用されるジャムは、保存食として長持ちするようになるのです。

ただ、長期的な賞味期限が設定されている市販のジャムですが、開封後は記載されているほど長持ちすることはないので注意が必要です。この記事では、皆さんがおさえておきたいジャムの賞味期限について解説します。

参照:食品中の水の不思議:結合水について

ジャムの賞味期限について

市販されているジャムについては、必ず賞味期限が記載されていると思います。棚の奥などからジャムが見つかった時には、必ず賞味期限が切れていないか確認しましょう。なお、ジャムに記載されている賞味期限については、未開封で保管している場合の賞味期限が記されています。

ジャムの賞味期限については、糖度の高さや容器の種類によって期限の長さが変わります。一般的に、びん詰の高糖度・中糖度タイプのジャムが最も長い賞味期限が設定されており、2年程度となっていると思います。次にびん詰の低糖度タイプのジャムが1年半程度の賞味期限、紙カップ入りタイプのジャムが1年程度と短くなっていきます。なお、この賞味期限の設定は、あくまでも目安で、ジャムを製造するメーカーや生産者などによって賞味期限の設定基準が変わります。

例えば、田中ぶどう園のように、農園が新鮮なフルーツを収穫してジャムを作る場合、スーパーなどで販売されるような大手食品メーカーが製造するジャムよりも糖度が低い場合が多いです。その場合、メーカー製造品よりも賞味期限が短く設定されています。ジャムを購入する時には、どれぐらい持つのかを確認するためにも、賞味期限を必ず確認しましょう。

糖度と賞味期限の関係

糖度が高くなるほど賞味期限が長くなるのはなぜなのか疑問に感じる方が多いかもしれませんね。これは、冒頭でご紹介した、食品に含まれる水が関係します。

先ほどご紹介したように、食品を傷める原因となるカビや細菌などの微生物は、増殖するために水を必要とします。この場合の水は、食品に含まれる「自由水」のことを指しています。そして、砂糖は、水分を抱え込み離さない性質(保水性)を持っており、この性質が食品を腐りにくくするのに非常に有効に働くのです。

ジャムを作る時に、大量の砂糖を入れることで、食品に含まれる自由水と結合し、結合水の割合が増えていきます。そのため、カビや微生物が利用できる水が少なくなり、増殖できなくなるというカラクリなのです。こういった理由から、ジャムは糖度が高いものほど、腐りにくくなるため、賞味期限が長く設定されるのです。

開封後のジャムの賞味期限について

上述したように、大量の砂糖が使用されているジャムは、最長で2年程度と非常に長い賞味期限が設定されています。ただ、注意してほしいのは、この賞味期限はあくまでも「未開封」の状態のジャムに限るという点です。

実は、多くの砂糖が含まれていて、腐りにくくなっているはずのジャムでも、開封後は冷蔵庫(10℃以下)で保存していたとしても、開封日から約2週間が賞味期限の目安と言われています。開封後の賞味期限がこれほどまで短くなるのは、容器の空気中にカビの胞子などが入り込むからだと言われています。

この他にも、スプーンなどでジャムをすくう時、ぱんくずなどの他の食品が混ざりこみ、それらがカビの発生原因になるとされています。したがって、開封後のジャムを安全に食べるためには、清潔なスプーンを使用する、出来るだけ早く食べきることが大切だと覚えておきましょう。

賞味期限が切れたジャムの取り扱いについて

ジャムは、贈答品などとして頂く機会も多いですし、棚の奥にしまっていたら、いつの間にか賞味期限が切れていた…なんてケースも珍しくありません。それでは、賞味期限が切れたジャムは、食べずに捨てた方が良いものなのでしょうか?ジャムは、保存食と言うイメージも強いことから、多少賞味期限が切れていても、食べられるのではないか…と考える方が多いです。

ここでは、賞味期限が切れたジャムについて、経過した時間ごとのおすすめのジャムの取り扱いをご紹介します。

賞味期限切れ1カ月のジャム

市販されているもので、長い賞味期限が設定されているジャムについては、未開封で適切な状態で保存されていた物であれば、1カ月程度の賞味期限切れなら「まだ食べられる」と判断しても良いでしょう。そもそも、賞味期限は多少の余裕をもって設定されていますので、賞味期限が切れたからといって、即座に食べられなくなるわけではありません。一般的には、実際の期限の4分の3ほどに設定されるケースが多いようです。

ただし、賞味期限が切れていることには間違いないので、食べる前にジャムが傷んでいないかはきちんと確認してから食べてください。傷んだジャムの見分け方は後述しますので、それを参考に食べられるかどうかを判断してください。なお、どちらにしても、開封後はなるべく早め(2週間以内)に食べきりましょう。

賞味期限切れ3ヶ月~半年のジャム

賞味期限は、ギリギリの期限が記載されるのではなく、ある程度の余裕を持った期限が記載されています。賞味期限は、メーカーによって多少の違いがあるものの、安全に食べられる期間に「安全係数(0.7~0.9)」をかけて設定されるのが基本です。

ジャムは、その他の食品と比較すると、非常に長い賞味期限が設定されていますので、安全係数のことを考えると、3~6ヶ月程度の期限切れでも、食べられる可能性があります。

ただ、ジャムは、製品によって糖度などに違いがありますので、低糖度タイプは3ヶ月も期限が過ぎている場合、少し危険です。また、正しい保存方法が守られていない場合、賞味期限内でも傷んでしまっている可能性があります。したがって、3~6ヶ月も賞味期限が切れているジャムが見つかったら、きちんとジャムの状態(見た目や臭い)を確認し、傷んでいないと判断できたもののみを食べましょう。

賞味期限切れ1年以上のジャム

賞味期限が1年以上経過したジャムは、いくら長期保存が可能だと言われるジャムでも、安全に食べられる可能性が低いため、口にするのはオススメしません。正しい保存方法を守っていた未開封のジャムでも、安全係数を考えたとしても賞味期限を切れています。

残念ですが、1年以上賞味期限が切れたジャムの場合は、食べずに廃棄しましょう。

傷んだジャムを見分けるポイント

それでは、「ジャムが傷んでいるから食べない方が良い!」と判断するためのいくつかのポイントをご紹介します。以下のような状態になったジャムは、傷んでいると考えられるため、食べるのをオススメできません。

  • ジャムにカビが生えている
    ジャムにカビが発生している場合は、食べないようにしましょう。開封後、時間が経過してしまうと、砂糖が多く使用されているジャムにもカビが発生する場合があります。
  • ジャムが水っぽくなった
    ジャムは通常、粘度があってドロっとしています。これが、開封後に冷蔵庫などでそれなりの期間保存していたら、水っぽくなってきた…なんて場合、傷んでいると判断出来ます。ジャムが水っぽくなるのは、中で発生したカビや酵母によって、ジャムをゼリー状にするペクチンという材料が分解されるのが原因です。この状態になったジャムを食べると、健康被害の恐れがあるので、食べないようにしましょう。(部分的に水っぽいだけなら、混ぜたことで水分がしみだしただけで、傷んではいないです)
  • 通常とは異なる臭い(刺激臭)がする
    開封後のジャムをしばらく保存していると、シンナーや接着剤のような異臭が生じることがあります。このニオイは、ジャムに酵母が混入し、発酵している可能性があります。酵母が増殖する際には、独特の刺激臭を発しますので、その匂いを感じた場合は、傷んでいると考え食べないようにしましょう。
  • 色・味に違和感を感じる
    ジャムを口にしたとき、本来の味とは異なる苦みなどを感じる、もともとの色合いから変色しているといった場合、ジャムが傷んでいる可能性が高いです。

ジャムが傷んだ時には、見た目や臭い、味などに変化が生じますので、食べる前に注意深く確認すると、気付くことができるはずです。上で紹介したような特徴が出ている場合は、食べるのを控えましょう。

ジャムの保存方法について

それでは最後に、ジャムの保存方法について簡単に解説したいと思います。なお、市販のジャムであれば、容器に保存方法に関する注意書きが記されているはずですので、基本的に記載されている通りの保存方法を守ると良いでしょう。

未開封のジャムの保存

市販されているジャムは、一般的に、未開封の状態なら常温保存が可能です。比較的涼しくて、風通しが良く、直射日光が当たらない冷暗所があれば、そこで保存すると良いでしょう。

もちろん、ジャムの容器に記載されている保存方法は必ず確認し、冷蔵保存が指示されている場合は冷蔵庫で保存しましょう。

開封後のジャムの保存

開封後のジャムは、冷蔵庫での保存が望ましいです。上でもご紹介しているように、開封したジャムは、容器の中に空気中のカビの胞子などが混入する他、冷蔵庫の出し入れにより容器内の結露で、傷んでしまうことがあります。

一般的に、食事中のジャムの取り扱いについては、使い終わってもしばらくは常温環境下に置いていて、食事が終了してから冷蔵庫に入れる方が多いです。しかし、このような使い方は、容器内に水分が増える原因となり、ジャムが早期に傷んでしまう恐れがあります。ジャムは、使い終わった時点で、蓋をしっかりと閉め、冷蔵庫に戻すのがおすすめです。

冷凍庫で保存はできる

ジャムの長期保存を考えた時には、冷凍保存が思い浮かびます。しかし、多くの方が「ジャムってそもそも冷凍しても良いものなの?」という点に疑問を感じるようです。

答えから言ってしまいますが、ジャムの冷凍保存は問題なく可能です。冷凍することで風味が若干変わる可能性もあるのですが、長期的に保存したい時には、冷凍庫で保存するのが良いでしょう。なお、ジャムの冷凍保存をする際には、びんのまま冷凍庫に入れるのはNGです。びんのまま冷凍庫に入れると、容器が割れてしまう可能性があるので、冷凍に対応した密閉容器に入れ替えるか、ラップなどで個別に分けてフリーザーバックに入れるなどの対策を行いましょう。

糖度が40%以上のジャムであれば、冷凍庫で保存した場合、半年程度は持つと言われています。

まとめ

今回は、日本人も朝食などで口にする機会が多い、ジャムの賞味期限について解説しました。ジャムは、大量の砂糖を使って作る食べ物なので、正しい取り扱いを守れば、フルーツの状態よりも長持ちさせることができます。

ただ、ジャムの容器などに記載されている賞味期限は、あくまでも未開封の状態に関するもので、一度開封したジャムは2週間以内に食べきるのがおすすめです。記事内では、ジャムが傷んでしまう原因なども解説していますので、ぜひ覚えておきましょう。

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