私たちの日常生活の中でも、身近な存在と言えるのが果物です。バナナやリンゴなどは、スーパーなどでお手頃価格で販売されていることもあり、日常的に口にしているという方も少なくないと思います。

しかし、大人になって一人暮らしをするようになってからは、なかなか果物を購入する機会はない…という方も多いのではないでしょうか?家族で暮らしている時であれば、複数人で果物を消費することができますし、購入した果物を腐らせることは少ないと思います。しかし、一人暮らしの方であれば、せっかく購入した果物でも、傷むまでに食べきることができず、廃棄する結果になってしまう…なんて危険があるのです。そのため、「果物は食べたいけど、捨てることになるのはもったいない…」などと考え、購入するのを躊躇してしまうというケースは非常に多いのではないでしょうか?

こんな時に非常にありがたい存在なのが、さまざまなフルーツを缶詰にした、フルーツ缶です。缶詰であれば、長期保存が可能ですし、一人でも十分に食べきれる量のものがあるため、気兼ねなく購入することが可能です。しかし、生の果物と比較した場合、「栄養は失われてないのか?」「缶詰のフルーツはむしろ体に悪いと聞いた」など、いくつかの疑問が頭に浮かぶ方も少なくないようです。そこでこの記事では、果物の長期保存を可能にしたフルーツ缶について解説します。

果物は缶詰にすると栄養がなくなるのか?

フルーツ缶詰については、生の果物を食べた時と比較すると、摂取できる栄養素がなくなるのではないか…と言った疑問を感じている方が少なくないようです。これは、少し前にスーパーやコンビニなどで販売されているカット野菜について、食品事故を防ぐために過剰に洗浄されているため、栄養がほとんどなくなっているなどと言った話がSNSなどでまことしやかにささやかれたのが要因かもしれません。フルーツ缶詰についても、食品工場で加工されるわけですので、生のまま食べるのと比較すると、栄養が著しく減ってしまう…と考えてしまうのでしょう。

結論から言ってしまいますが、フルーツ缶詰について、栄養がなくなる…なんてことはないので安心してください。それどころか、栄養素によっては、生のままの果物を食べるよりも、缶詰にしたものを購入して食べる方が多く摂取できる場合もあると言われています。

ただ、その一方で、生のままの果物には含まれている栄養素なのに、缶詰に加工する工程で失われてしまうものがあるのも事実です。フルーツの缶詰を作る際には、加熱の工程がありますので、熱に弱い栄養素はどうしても失われてしまうのです。例えば、果物は、ビタミンCなどを摂取する目的で食べる方が多いのですが、ビタミンCや酵素は加熱すると減少するという特性があるため、生の果物と比較すると缶詰の方が少なくなります。反対に、熱を加えることで体に吸収されやすくなる栄養素もあり、そういったものは生のものよりも増えるという結果になるのです。

ここでは、代表的なフルーツ缶詰について、食べることで摂取できる栄養素をご紹介しておきます。ちなみに、缶詰に含まれる栄養素については、商品の包装に記載されていると思いますので、特定の栄養素が摂取したくて果物を食べようと考えている方は、缶詰の横などを確認してみましょう。

みかんの缶詰に含まれる栄養

フルーツ缶詰の王道と言えば、みかんの缶詰なのではないでしょうか?みかんは、日本の冬を代表する果物というイメージで、好んで食べる方は多いと思います。ただ、冬が旬の果物ですので、それ以外の季節に食べたいと思った時には缶詰を購入することになるはずです。

みかんは、ビタミンCが豊富な果物というイメージを持つ方が多いと思いますが、それ以外にもビタミンE、カリウム、食物繊維などが含まれています。ビタミンは抗酸化作用、食物繊維は腸内環境の改善が期待できますので、小まめに摂取したい果物の一つですね。
ただ、缶詰にする工程で加熱されますので、生のものを食べる場合と比較すると、ビタミンCなどは減少しています。また、みかんに含まれる食物繊維は、みかんの薄皮や白い筋に含まれています。缶詰のみかんは、薄皮などを綺麗に取り除いた状態になっていますので、食物繊維も少なくなります。

桃の缶詰に含まれる栄養

フルーツの缶詰の中でも、桃缶が最も好きだという方は多いと思います。生の果物としての桃は、高級なイメージですし、手軽に購入して食べることができる大衆フルーツとは言えません。しかし、缶詰になると、他のフルーツ缶同様にお手頃価格で販売されているので、気軽に食べることができます。

桃缶に含まれている栄養については、桃の種類によって異なります。桃缶にも、白桃と黄桃があり、どちらの缶詰を購入するのかによって栄養素が変わります。白桃の桃缶の場合、カテキンが摂取出来ますので、抗酸化作用や脂肪の蓄積を抑制する効果が期待できます。一方、黄桃の桃缶は、カロテノイドと呼ばれる栄養素が含まれていて、白桃の缶詰よりも強い抗酸化作用を期待できます。

フルーツ缶が身体に悪いと言われる理由

皆さんも、フルーツ缶詰は「体に悪い」と言った話を耳にしたことがあるのではないでしょうか?上で紹介したように、一部の栄養素が減少しているものの、しっかりと栄養が含まれているフルーツ缶なのに、なぜ体に悪いなどと言われるのでしょうか?

ここでは、フルーツ缶詰のネガティブな情報に関する理由について解説します。

長期保存されているから

フルーツは、生のままだと長期的に保存することは難しいです。冷凍庫などに入れておけば、それなりに長く保存できますが、年単位で保存したものはさすがに食べる気になりませんよね。

しかし、缶詰に加工されたフルーツは、理論上、何十年先まで保存しても食べることができる加工が為されています。缶詰に加工する際には、密閉状態の缶詰をそのまま高温で加熱殺菌します。これにより、缶詰の中は無菌状態になるため、フルーツが腐るのを防ぐことができるわけです。

つまり、フルーツ缶詰は、缶を開封しなければ菌が入らないため、長期間保存していても食べることができるという訳です。しかし、長期保存可能だという点から、身体に悪い防腐剤などが含まれているのではないかと考え、缶詰は良くないという話が出てきたのだと思います。

シロップ漬けにされているから

フルーツ缶詰を食べたことがある人ならわかると思いますが、缶詰の中にはフルーツだけでなく、ジュースのように甘い汁がたくさん入っています。

これは、缶詰の中に入っているフルーツの品質を保つためのシロップです。昔から、食品を長持ちさせるための加工方法として、フルーツなどを砂糖漬けにするという方法があります。実は、フルーツの劣化は、含まれる水分に微生物などがくっつくことから始まるのですが、砂糖漬けにすれば、砂糖が水分を吸収してくれるため、フルーツを劣化させる微生物が付きにくくなるのです。これは、野菜を長期保存するために漬物にするという対策と似たような感じです。(漬物の場合は塩)

つまり、フルーツ缶は、甘すぎるため、生のフルーツを食べるのと比較すると、糖分の摂りすぎになってしまうと考える方が多いわけです。実際に、フルーツ缶のシロップまで飲むといった食べ方はオススメしません。大量の砂糖が含まれているので、血糖値を急上昇させてしまいます。

添加物が多く含まれているから

フルーツ缶のシロップについては、全てが砂糖を利用しているわけではありません。実は、添加物を使用している缶詰がほとんどで、中には砂糖を一切使用していないものもあるのです。

この辺りは、缶詰の成分表を確認すれば分かりますが、砂糖以外は全て食品添加物と表記されています。食品添加物には、「体に悪い」というネガティブなイメージがついて回る場合があり、これが利用されているフルーツ缶も体に悪いと考える人が増えているのだと思います。

どうしても気になる方は、成分表を確認して、添加物が少ないものを選ぶと良いでしょう。

輸入品の果物が使われているから

フルーツ缶に使用される果物の多くは、中国など輸入品が多いです。輸入品の果物は、安く仕入れることができるため、缶詰の製造に適しているのだと思います。

ただ、外国産の果物については、栽培時に大量の農薬が使われているのではないか…など、どうしても悪いイメージを持ってしまっている方がいます。そしてそういった方が、輸入の果物が使われているフルーツ缶は身体に悪いと感じてしまうのだと思います。もちろん、日本国内で缶詰の加工に使用する果物は、きちんと検査されている物なので、体に悪い果物が使われることなどありません。

ただ、どうしても気になるという方は、国産の果物が使用されている缶詰もありますので、そういったものを購入すると良いでしょう。

まとめ

今回は、果物の長期保存を可能としたフルーツ缶詰についての疑問にお答えしました。フルーツ缶詰は、手軽に果物を口にすることができるようになるため、日々の生活を健康に過ごすための貴重な存在と考えている方がいます。ただその一方で、「生のフルーツは健康に良いけど、缶詰に加工したものは身体に悪い」「缶詰のフルーツを食べても栄養が得られない」と言った話を耳にする機会もあり、本当にフルーツ缶詰は食べても良いものなのか…と不安になるという方も少なくないようです。

この問題については、記事内で紹介したように、フルーツ缶詰を食べても栄養は得られないという情報は完全な間違いです。もちろん、加熱殺菌が為されるため、熱に弱い栄養素は生の果物と比較すると減少してしまいますが、熱を加えることで吸収しやすくなっている栄養素もあるのです。ただ、果物の中には、皮の部分に多くの栄養素が含まれている場合があり、その栄養をの摂取が目的の場合、缶詰ではなく生の果物を摂取するのがおすすめです。ぶどうなどは、ポリフェノールが摂取できると言われていますが、皮の部分にほとんどが含まれているため、果実のみに加工されたものを食べても目的の栄養素を摂取出来ないのです。

この他、缶詰は健康に悪いという情報について、缶詰のシロップまで飲むといった食べ方をしてしまうと、確かに身体に悪い影響が出る可能性が高いです。ただ、缶詰の中に健康に悪影響があるものが入っているわけではないので、常識的な食べ方をして健康に悪影響が出る心配はないと思いますよ。

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