果物には、それぞれに『旬』の時期というものがあります。中でもこれから迎える「秋の果物」については、ぶどうと並んで梨が季節の果物というイメージが強いのではないでしょうか?

梨は、その他の果物と比較しても、非常にみずみずしい食感と爽やかな甘みが特徴で、さまざまある果物の中でも梨が一番好きだという方は非常に多いです。ハウス栽培なども盛んになった現在では、7月頃よりスーパーの店頭に並び始めますし、毎年その時期を心待ちにしているという人は少なくないはずです。

ただ、「梨の季節とは?」と聞かれた場合、一概に「〇月」と指定することは難しいです。というのも、日本国内で流通する梨にもさまざまな品種がありますし、それぞれの品種ごとに収穫できる期間が意外に違ってきてしまうのです。
そこでこの記事では、日本人にも非常に高い人気を誇る梨について、各品種ごとの旬の時期や美味しい梨を選ぶために知っておきたいポイントをご紹介します。

基本的な梨の季節について

それではまず、梨全般がスーパーなどに出回る時期について解説します。品種別の細かな旬については後述しますので、まずは大まかに梨の旬の時期を掴んでおきましょう。

スーパーなどでは7月から翌1月頃まで見かける

梨は「秋の味覚」というイメージが強いですが、実は7月頃からスーパーの店頭に並び始め、真冬である翌1月頃まで店頭で見かけることができる果物です。

これは、梨にもさまざまな品種があり、それぞれの品種ごとに収穫時期が異なるのが大きな要因です。例えば、梨の中で最も早く出回り始めるのが「幸水」と呼ばれる品種で7月頃に見かける梨の品種です。そしてその後、二十世紀や豊水と呼ばれる品種が出回り始め、その年の最後に晩生品種の「愛宕梨」が12月頃に旬を迎えます。

なお最近では、梨のハウス栽培が盛んになっていて、露地栽培のものよりもかなり早く出荷されるようになっています。ハウス栽培のものは、春ごろから手に入れることができるようになっていますが、スーパーなどで梨を見かける機会が多くなるのは、あくまでも7月頃になるでしょう。

梨には「早生品種」「中生品種」「晩生品種」がある

梨は、約3000年前から栽培されているとされ、現在では世界中に2000種以上もの品種があるとされています。そして品種ごとに収穫時期が変わり、日本国内では「早生品種」「中生品種」「晩生品種」と言った分類をされています。それぞれの特徴については以下のような感じです。

  • 早生品種の梨について
    梨の品種の中で最も早く収穫されるものが早生品種です。代表的な品種で言えば「幸水」や「新甘水」で、7月頃から旬を迎えます。幸水については、国内で最も多く栽培されている品種なので、口にした経験がある人は多いはずです。
  • 中生品種の梨について
    梨の中でも8月下旬~9月下旬に旬を迎える物が中生品種です。代表的な品種で言えば、「豊水」や「新美月」「二十世紀」などです。
  • 晩生品種の梨について
    晩生品種は、10月から12月にかけて旬を迎える品種を指します。早生、中生品種の梨と比較すると、大玉で果肉が硬く、日持ちするのが特徴です。晩生品種の代表は「新興」や「愛宕」などで、冷暗所などで保存すれば1カ月ほど日持ちするとされています。

梨は、旬の時期により、上記の3種類に大きく分類することが可能です。なお、最近では梨のハウス栽培も盛んになっているのですが、ハウス栽培されたものは、露地栽培された同じ品種と比べ、約2週間ほど早く市場に出回るようになるとされています。ちなみに、ハウス栽培された梨は、露地栽培のものよりも糖度が少し低くなると言われているので、その点は注意が必要です。

代表的な梨の品種とその特徴

それでは次に、日本国内で出回っている代表的な梨の品種について、それぞれの特徴をご紹介したいと思います。上述したように、梨は非常に品種が多い果物で、世界中で2000種以上もの品種があるとされています。ただ、国内のスーパーなどで手に入れられる梨は、ある程度限られていますので、好みの梨を探すためにもそれぞれの特徴はおさえておきましょう。

幸水(こうすい)

幸水は、さまざまある品種の中でも最も栽培量が多い品種です。「菊水(きくすい)」と「早生幸蔵(わせこうぞう)」を掛け合わせた品種であることから、両親の名前から一文字ずつ取り「幸水」と名付けられたそうです。
幸水は、「豊水」のような赤梨と「二十世紀」のような青梨の中間のような色素した果実が特徴で、二十世紀などと比較すると、果肉が柔らかいのが特徴です。非常に甘味が強く、独特の風味がある梨として現在でも人気で、昭和34年に品種登録された幸水にかわる早生品種はいまだに育成されていないと言われるほどです。
幸水は、露地栽培のものが8月上旬からハウス栽培であれば7月頃より店頭に並び始めます。夏場に旬を迎える果物ですので、室温では5日ほどしか日持ちしないので早めに食べきるようにしましょう。

豊水(ほうすい)

豊水は、上述した幸水と「イ-33(「石井早生」×「二十世紀」)」を掛け合わせや品種で、昭和47年に登録されています。

果実は、幸水よりも大きく、糖度が高いことが特徴です。また、非常に多汁で酸味と甘みのバランスが良いことから、完熟した豊水は「極上の味の梨」とたたえられています。旬の時期は、中生品種にあたり、8月下旬から9月中旬に出回ります。日持ちに関しては、幸水よりも長持ちして室温で10日ほど持つとされます。

二十世紀(にじゅっせいき)

二十世紀は、幸水とならんで非常に高い知名度を誇る品種です。実は、1888年の千葉県で、ゴミ捨て場で自然交配の苗木が発見され、それが梨園に移植され10年後に結実したのが始まりとされるなど、面白い逸話のある梨です。

二十世紀という名称は、非常に多汁で甘みのある梨が収穫できたことから、明治31年に「二十世紀に王者になるべき果物」という意味で名づけられたとされています。旬の時期は、9月上旬~下旬と、中生品種の梨となります。二十世紀ナシは、他の梨と異なり、表面に光沢があることから「水晶梨」「果物の芸術品」などと呼ばれています。ただ、皮が薄く傷が付きやすいという難点もあり、栽培時は袋をかけられて生育します。

愛宕(あたご)

晩生品種の代表格である「愛宕」は、「愛宕山」(東京都)のふもとで誕生した事が名前の由来です。この梨は、1kgにも達すほど大きな果実に育つことが特徴で、世界最大級の梨と言われています。

独特の芳香を持ち、やわらかで歯切れの良い口当たり、みずみずしくしゃきっとした食感を持つことから、非常に高い人気を誇ります。通常、日本梨は追熟しない果物であることから、新鮮な物ほど良いとされます。ただ、愛宕梨は、収穫後に熟成が進むという特徴があり、「貯蔵梨」とも言われています。

新高(にいたか)

新高は、果実の大きさや形、その美味しさから「梨の王様」とも呼ばれる人気品種です。この品種は、約80年ほど前に、梨博士として有名であった菊池秋雄氏が、高知産の「今村秋梨」と新潟産の「天の川梨」を交配させ誕生しています。名前の由来は、新潟県と高知県の頭文字を取り「新高」梨とされています。

新高は、大玉で味が良いことが特徴で、非常に強い甘みと梨特有のシャリシャリ感を楽しむことができます。なお、旬の時期は9月中下旬から10月上旬頃で、日持ちが非常に良い品種です。冷蔵庫などで保存すれば、1ヶ月以上持ちますので、贈答品用の梨としてとてもおすすめです。

※最近のDNA鑑定により、片親は「今村秋」ではなく、「長十郎」と推定されています。

美味しい梨の選び方について

梨は、スーパーの店頭などで手軽に購入できるポピュラーな果物となっています。ただ、スーパーで梨を購入する時には、たくさんの梨の中から「できるだけ美味しいものを選びたい!」と誰もが考えると思います。

それでは、購入する梨を選ぶときには、何を確認すれば良いのでしょうか?ここでは、スーパーなどで梨を購入する際、皆さんに確認してほしいポイントをいくつかご紹介します。

  • 上から見た時の『形』に注目
    梨を選ぶときには、真上から形を確認し、果形がなるべく正円に近いものを選びましょう。受粉がしっかりできた果実はたくさん種が入っています。そしてこのような梨は、大きく正円に肥大していき、甘くなるとされるのです。梨は、強い甘みが特徴の果物ですし、大きく正円に育ったものが美味しいと言えます。
  • 梨の大きさに注目
    梨を購入する時には、並んでいるものの中で、出来るだけ大玉のものを選びましょう。梨は、小さい果実よりも大きく育った果実の方が美味しいとされているからです。また、大玉に育っているということは、生育過程で、しっかりと日光を浴びるなど、栽培管理などに気を付けて栽培された証拠でもあります。
  • 果皮に注目
    梨は果皮に張りがあるものがおすすめで、張りのある物はすくすく順調に肥大した証拠でもあるのです。また、ほとんどの果物は、健康で元気に育った果実ほど、外観上も張りがあり、そういった果実は美味しいです。さらに梨は、収穫から時間が経過すると、徐々に張りがなくなっていきますので、果皮に張りがあるものは新鮮な証拠でもあるのです。日本梨は、追熟しない果物なので、新鮮な物ほど美味しいです。
  • 持った時の重みに注目
    梨は、持った時にしっかりと固く、ずっしりと重みのある物を選びましょう。持った時に、柔らかいと感じる、想像したよりも軽く感じるといった果実は、熟しすぎたり、収穫から時間が経過している可能性が高いです。梨は、固くてずっしりと重い物ほど、しっかり果汁を含んでいて美味しいです。

梨を選ぶときには、上記のようなポイントを確認しながら、おしいものを選べるようにしましょう。

まとめ

今回は、秋の味覚を代表する梨について、一般的な梨の旬や品種ごとの出盛り期について解説しました。記事内でご紹介したように、梨はたくさんの品種がある果物で、日本国内だけでもさまざまな種類の梨が栽培されています。そして、他の果物と比較しても、梨は品種ごとの旬の時期が大きく異なるのが特徴と言えます。例えば、梨の中でも最も早く出回り始めるものは7月頃なのですが、晩生品種の中には11月や12月頃まで販売されるものがあるのです。

なお、日本国内で栽培されるいわゆる日本梨は、樹上で完熟してから収穫されますが、最近国内でも手に入るラ・フランスなどの洋ナシは追熟が必要な果物です。したがって「梨=すべて追熟しない」と考えないようにしましょう。

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