今回は、果物をよりおいしく食べるための重要ポイント、果物を冷やすのか常温の方が良いかについて解説したいと思います。

皆さんは、果物を食べる時の温度に注目したことはあるでしょうか?「冷やす」か「常温」かという問題については、果物を保存する時のポイントで、食べることを考えると「どんな果物でも冷やした方が美味しいのではないか?」と考えている方も多いのではないでしょうか?

実はこの考え方は間違っていて、さまざまな種類がある果物でも、「冷やした方が甘くなる物」と「冷やしても味が変わらない果物」に分けることができるのです。そこでこの記事では、より果物を美味しく食べるため、皆さんに知っておいてほしい「冷やした方が甘い果物」と「常温で食べても構わない果物」について解説します。記事内では、同じ果物なのに、冷やすだけで甘くなるものがある理由について解説します。

果物の甘み成分にも種類がある

近年、果物の品種改良は、より甘みが強くなるような改良が進められていて、非常に高い糖度を誇る甘みの強い果物が開発されるようになっています。これは、消費者から甘みが強い物の方が好まれる傾向にあるということが大きな要因だと思います。

ただ、果物の甘みを作る成分にはいくつかの種類が存在していて、大きく分けると以下の4種類があります。

  • ①果糖(フルクトース)
  • ②ショ糖(スクロース)
  • ③ブドウ糖(グルコース)
  • ④ソルビトール

それぞれの甘み成分は、甘みの感じ方に違いがあり、果糖が一番強く甘みを感じるとされています。なお、上記成分では「①⇒②⇒③⇒④」の順で甘みの感じ方が弱くなっていき、果糖とソルビトールではなんと約3倍もの差が生じると言われています。

そして実は、果物に含まれるこれらの甘み成分について、何が甘みを構成しているのかによって「冷やす方が良いか、常温の方が良いか?」が変わるのです。次項でその辺りを解説します。

食べる温度によって果物の甘みが変わる?

それでは、「冷やすとより甘さを感じる果物」と「冷やさずに常温で食べる果物」について解説していきます。「果物は冷蔵庫に入れて冷やした方が美味しい」と多くの方が考えていますが、冷やすことで甘くなる果物の種類は限られています。

以下で、「冷やすと甘むなる果物」「冷やさずに食べる果物」をそれぞれご紹介します。

冷やすと甘さが強くなる果物

まずは、冷やすことで「より甘さが際立つ」果物についてです。このタイプの果物は、上述した甘み成分の中でも、果糖を多く含むという特徴を持つ果物となります。具体的には、以下のような果物たちです。

  • ・りんご
  • ・なし
  • ・びわ
  • ・マンゴー
  • ・いちじく
  • ・キウイ
  • ・さくらんぼ
  • ・ぶどう

これらの果物は、果糖を多く含んでいますので、冷蔵庫などで冷やすことでより甘く感じることができます。

これは、果糖の特性によって得られる効果です。果糖は、フラノースとピラノースという2つの型があるのですが、ピラノースの方がフラノースと比較すると約3倍も甘いとされています。そして果糖を冷やした時には、フラノースがピラノースに変化することから、甘みが強くなるのだそうです。この特徴から、上で紹介したような果物は、冷やすことでより甘さを強く感じることができるようになるわけです。

冷やさなくても良い果物

上で紹介した果物とは異なり、冷やしたとしても甘さに変化が生じないのは、以下のような種類の果物です。

  • ・バナナ
  • ・ミカン
  • ・もも
  • ・メロン
  • ・イチゴ
  • ・パイナップル

上記の果物は、果糖ではなく「ショ糖」を多く含んでいます。そしてショ糖は、冷やしても甘さが変わらないという特徴を持っているため、これらの果物は冷やしても常温でも甘さは変わらないわけです。

もちろん、「冷やしてはいけない」と言っているわけではなく、冷やしても常温で食べても美味しさにそこまで大きな変化はないというだけです。夏場などに食べる果物であれば、冷やすことで口当たりがよくなりますので、常温で食べるよりも美味しく感じることはあるでしょう。したがって、状況や自分の好みに合わせた温度帯で食べると良いでしょう。

果物を冷やす際の注意点

果物は、冷やすと甘くなるものがある、口当たりが良くなるといった理由があるため、冷蔵庫内で保管するのが正しいと考えている方が多いです。しかし、果物を冷やす際にはいくつかの注意点があります。

まず一つ目の注意点は、果物を冷やしすぎると、甘みを感じる舌の感度が低下してしまうため、逆に甘く感じなくなる可能性があるという点です。「より甘くしてから食べたい」と考えているのであれば、果物をキンキンに冷やすのではなく、10℃ぐらいを目安に冷やすのが、最も効率よく甘みを感じることができるようになるとされています。
冷やすと美味しいとされる果物についても、「食べる1時間前ぐらいに冷蔵庫に移して冷やす」「15分ほど氷水に浸す」と言った食べ方がおすすめされていますが、これは果物を冷やしすぎるのを防ぎ、果糖の甘みを引き出したうえで、舌で甘みを感じられる適温状態に近づけるのにちょうど良い冷やし方だからです。冷やすことで甘みが強くなる果物でも、「冷やし過ぎはNG」ということを覚えておきましょう。

また、果物の中には、温暖な地域で栽培されるものがあり、低温を苦手とする種類があることも忘れてはいけません。例えば、バナナなどは、長時間冷蔵庫内で保管すると、低温障害で皮が黒く変色してしまうなど、傷むのが早まることもあるのです。この他にも、みかんは冷蔵庫で長時間保存すると、酸っぱくなってしまいます。これは、常温と冷蔵では、みかんの中のクエン酸の消費量が変わるからです。

最後の注意点は、追熟が必要な果物については、好みの状態に追熟が進むまで常温状態に置かなければならないというポイントです。追熟が必要な果物は、未熟な状態で冷蔵庫に入れてしまうと、追熟が止まって本来の甘さを引き出せなくなります。したがって、そういった果物の場合、好みの状態に追熟が進むまで冷暗所などで保管し、食べごろになったところで冷やすようにしましょう。

関連:キウイなど、果物の追熟とは何?果物をよりおいしく食べるために知っておきたい追熟の基礎知識

まとめ

今回は、果物の食べ方について、冷やすことでより甘みが強くなるものと、冷やしても甘くならない果物の違いについて解説しました。

記事内でご紹介しているように、冷蔵庫などで冷やすことで甘くなるのは、果糖が多く含まれている果物です。例えば、ぶどうやキウイなどは、食べる前に少し冷やすことでより強い甘みを感じることができるようになるのです。そのため、ぶどう狩りでは、収穫したぶどうをその場で食べるのではなく、クーラーボックスに氷を入れて少し冷やしてから食べる方もいます。

ただ、冷やすことで甘みが強くなる果物でも、必要以上に冷やしすぎると、舌の感覚が鈍くなることが要因で、その甘さを感じられなくなるので注意しましょう。