皆さんは、果物の『追熟』と呼ばれる現象がどのような物かご存知でしょうか?

分かりやすい例をあげると、メロンやキウイフルーツ、西洋梨などをスーパーで購入し、その日のうちに食べてみたら、大根のように硬くて美味しくなかったのに、残りを数日間常温で置いておくと果肉が柔らかくなり、美味しくなるといった現象のことです。実は、果物の中には、収穫時にはまだ完熟しておらず、収穫後に一定期間貯蔵することで成熟させるものがあるのです。このように収穫後に、完熟させることを『追熟(ついじゅく)』と呼んでいます。

もちろん、全ての果物が追熟させることで美味しくなるわけではないので、追熟する果物の種類は知っておく必要があります。追熟しない果物を「美味しくなるかも?」と考えて長期間保存していても、腐らせて食べられなくなるだけの可能性があります。
そこでこの記事は、追熟させることで美味しくなる果物の種類や、食べごろになったのを見極めるためのサインなどについて解説します。

追熟が必要な果物の種類について

それでは、スーパーなどで購入することができる果物の中で、購入後すぐに食べるのではなく追熟を待つ必要がある果物の種類について解説します。追熟が必要な果物は、さまざまな物がありますので、ここでは皆さんにも身近な果物をいくつかピックアップします。

バナナ

大衆フルーツの代表各「バナナ」は、好みの状態まで追熟させるのがおすすめの果物です。なお、バナナは樹上でも完熟する果物なのですが、熟してから収穫すると、実が柔らかくて輸送が難しくなる、販売可能期間が短くなるなどの問題が生じます。

そのため、やや未熟なうちに収穫して輸送中に追熟が進むようにするのが一般的となっています。スーパーなどに並んでいるバナナに関しては、既にある程度は追熟が進んでいますので、美味しく食べることはできると思います。ただ、完熟状態にまでは達していないものが多く、良く熟したバナナが好みだという方は、購入後にさらに追熟させると良いでしょう。

メロン

メロンも追熟が必要な果物として有名です。ただ、勘違いしている方が多いのですが、メロンの追熟は果肉を柔らかくするために行われるものです。メロン特有の甘さについては、収穫時に糖度が決まってしまうため、追熟しても甘くはなりません。

一般的に、メロンは収穫から1週間程度で柔らかくなります。

洋ナシ

最近では、スーパーでも購入することができるようになった洋ナシも追熟が必要な果物です。洋ナシは、樹になっている状態では熟さない果物なので、収穫したてで食べても、硬くて美味しくありません。したがって、収穫後、一定期間置くことで追熟させ、美味しく食べられるようにします。

ちなみに、洋ナシが追熟させる果物であることから、日本の梨も追熟が必要と考えている方が多いです。ただ、日本の梨は追熟の必要はありません。

その他、追熟が必要な果物

果物の追熟は、「樹になっている状態では熟さない」というものと「効率的な輸送のために収穫後に追熟させる」ものがあります。例えば、バナナやすももなどは、樹上でも完熟するのですが、熟した果物は輸送中の衝撃で傷んでしまう可能性があります。また、完熟してから流通にのせると、美味しく食べられる時期を逃してしまう可能性があるため、未熟なうちに収穫し、その後追熟させるという対処になっているのです。

上で紹介した以外にも、以下のような果物は追熟する果物となります。

  • ・キウイ
  • ・桃
  • ・すもも
  • ・マンゴー
  • ・アボガド
  • ・パパイヤ

アボガドについては、「野菜なのでは?」と考えるかもしれませんが、農林水産省の分類方法で果物になります。また、追熟は果物だけに起こるのではなく、野菜の中にも追熟するものは多いです。例えば、トマトは緑色の状態で収穫し、追熟が進むと赤くなります。またサツマイモやカボチャも追熟する野菜として有名で、なんとさつまいもは1ヶ月置いた方が美味しくなると言われています。

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追熟したかどうかの見極め方

それではここから、よりおいしく果物を食べるため「追熟したのか?」を見極めるためのポイントなどについて解説していきたいと思います。

追熟完了のサイン

追熟する果物については、「どうなったら追熟が完了したと判断すれば良いの?」という疑問を抱える方が多いです。一般的には、「果実が柔らかくなり、香りがたってきたら」というのが追熟完了のサインと覚えておきましょう。

なお、以下にそれぞれの果物について、追熟が完了し、美味しく食べられるようになった時のサインを簡単にご紹介します。

  • バナナ
    バナナの表面に黒い斑点(シュガースポット)が出たら食べごろです

  • 果実を指で押した時、少し凹むぐらいが食べごろです
  • メロン
    メロンのお尻の部分を少し押した時、柔らかい、または弾力を感じるぐらいが食べごろです
  • マンゴー
    皮に艶が出て、マンゴーに触るとベタベタするようになれば食べごろです
  • 洋ナシ
    先端部分に弾力が出る、皮の色に黄色味が出る、甘い香りが強くなってきたら食べごろです
  • キウイ
    キウイに触った時、弾力と柔らかさを感じるようになれば食べごろです

それぞれの果物に、上記のような特徴が出始めたら追熟が完了し美味しく食べられるようになったと判断してください。

果物の追熟のポイント

それでは最後に、果物を追熟させるときのポイントについて解説していきたいと思います。果物は、冷やしてから食べる方が美味しいと感じる方が多いからか、冷蔵庫の中で保存する方が良いと考えている方が多いです。しかし、全ての果物が冷蔵保存が推奨されるわけではありません。果物だけに限らず、野菜も同じですが、基本的に育った環境に近い状態で保存するのが望ましいです。例えば、暖かい環境で育つ南国のフルーツなどは、低温を苦手としており、冷蔵庫で保存することで傷むのが早くなってしまう場合があります。分かりやすい例をあげると、バナナを冷蔵庫で保存すると、皮が真っ黒に変色するのですが、これはバナナが低温障害を受けているからです。(※皮が黒くなっても実は食べられます。)

果物の追熟については、基本的に『常温』で保存するのが正解です。室温的には、15~20℃程度が望ましく、風通しが良く直射日光が当たらない場所に置いておきましょう。追熟する果物でも、完熟前に冷蔵庫に入れると、低温が問題となり追熟が止まってしまいます。ちなみに、長く保存したいと考える場合には、冷蔵庫の野菜室などに入れておき、食べる数日前に常温の場所に出し、追熟をすすめるという方法も可能です。

また、その逆に「早く追熟をすすめたい!」という場合、追熟させたい果物をビニール袋などに入れ、そこにりんごや熟したバナナなどを一緒に入れてください。そうすると、リンゴなどから出るエチレンガスの影響により追熟が早くすすみます。なお、リンゴは品種によってエチレンの生成量に違いがあります。生成量が多いものほど追熟を早める効果を期待できます。
リンゴのエチレン発生量について、多いもの順に並べると「つがる」や「きおう(黄王)」>「王林」や「ジョナゴールド」>「ふじ」や「シナノゴールド」となりますので、追熟させたい果物と一緒に入れるのなら「つがる」や「きおう(黄王)」がおすすめです。

まとめ

今回は、果物の追熟について解説しました。スーパーなどで販売されている果物については、店頭に並んでいる時点で「食べ頃を迎えている」と考えている方が多いですよね。もちろん、食べられないレベルの未熟な果物が販売されることはほとんどないと思いますが、追熟が進む果物については、購入後、数日間置いてから食べる方が美味しく食べられるものが多いです。

これは、店頭に並んだ時点で完熟状態になると、美味しさが持続する期間が短くなってしまい、お客様の手元に届く前に廃棄しなくてはならなくなる果物が増えてしまうからです。したがって、追熟が進む果物については、まだ未熟な状態で収穫し、店頭に並べるまでにある程度追熟させ食べられる状態にもっていくのが一般的です。そして、購入者が自宅に持ち帰った後、自分の好みの状態まで追熟させて食べることができるように考えられているのです。

この記事では、追熟する代表的な果物と、追熟が完了した時のサインなどもご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。ちなみに、農林水産省の資料では、追熟に関して以下のような解説がされています。

園芸生産物の追熟
果実がある一定の段階まで発育していると、緑熟な時に収穫されても成熟する
収穫後の果実でみられる成熟現象
・果実の色の変化、
・果実の軟化、
・芳香の発生 など
引用:農林水産省資料