このサイト内でも何度か登場している言葉に「追熟」というものがあります。

追熟は、一部の果物に起きる現象で、収穫後に適切な環境下で保管しておくと、実が柔らかくなり、甘味が増して香りも良くなるという現象です。この追熟に関しては、よくある間違いで「全ての果物は追熟する」というものがあります。しかし、この記事をわざわざ書いていることから分かるように、果物には追熟する物とそうでない物が存在していて、追熟しない果物を間違って数日間置いておくことで、ダメにしてしまう…なんて失敗をするケースが意外に多いのです。

そこでこの記事では、果物の追熟とは何か、またなぜ果物は追熟するようになったのかなど、追熟に関する基礎知識をご紹介します。また記事内では、追熟する果物とそうでない果物について、代表的な種類をご紹介します。

追熟とは?そもそもなぜ果物の中には追熟する物がある?

追熟は、収穫後に成熟させることを言います。果物の中には、樹上で完熟させるものと、収穫後に追熟させるものがあるのです。果物を追熟させる理由は、完熟した状態で収穫すると、輸送や店頭での販売をしている間に食べごろを過ぎてしまい、場合によっては傷んで食べられなくなる可能性があるからです。そのため、完熟手前に収穫して、販売後に好みの状態まで追熟させてから食べるという習慣ができたのです。

なお、果物が追熟する仕組みについては、自然界に存在するガスの「エチレンガス」による作用で起こります。エチレンガスには、老化を促進させる作用があるとされていて、このエチレンによって収穫後の果物が熟成を続け、味や食感、見た目などが変化していくのです。

ちなみに、果物の追熟が進むと、実が柔らかくなる、甘味や香りが増すという効果が得られます。また、果皮の色が変化して、食べごろを知らせてくれるといった変化を見せることもあります。

追熟する果物とそうでない果物に分かれる理由

果物の追熟の意味やどう変化するのがわかったところで、皆さんが気になるのは「なぜ追熟する果物とそうでない物に分かれるのか?」ということではないでしょうか?これについては、私たち人間を含めた、動物が果物の進化の過程に関係しているとされているのです。

まず、植物が果物を実らせる理由についてですが、これは「動物に果物を食べさせることで、中にある種を運んでもらう」ことが目的とされています。動物が種ごと果物を食べたとしても、種は消化されないため、動物の糞と一緒に排泄され、そこから芽を出して成長していくことができます。つまり、果物を実らせるのは、植物の生存戦略の一つになっているわけです。したがって、果物は、動物に食べてもらうため、甘味を蓄えていたり、良い香りを発したり、目立つような色に色づいたりしています。

ただ、果物を食べて種を遠くに運んでくれる動物にもさまざまな種類があります。地上を徘徊して、地面に落ちた食べ物を探す動物がいれば、サルなどのように木のぼって果実を収穫する物、鳥や蝙蝠など空を飛んで食べ物を探すものなどがいます。
実は、これらの果物を食べる動物の違いから追熟という植物の機能が生まれたとされているのです。果物を食べ、種を運んでくれる動物は、大きく2種類に分けることができます。これは、果物の「追熟する」「追熟しない」という2種類に分けられるのと一緒ですよね。

つまり、果物の追熟する、しないというのは、「食べてもらいたい動物の違い」から来ているのだと、現在は考えられているのです。例えば、追熟する果物については、木から地面に落ちた果実が、長い期間を経て美味しくなっていく、強い臭いを放つようになります。そうすると、地上で食べ物を探している動物に食べてもらいやすくなるわけです。
一方、追熟しない果物は、高い位置(木の上)で美味しくなり続けることで、空を飛んでいるなど、高い場所にいる動物に食べてもらうことができるようになるのです。

追熟に関しては、果物の輸送性を高めるなど、人為的な操作のように感じますが、果物自身が自分たちの生息地域を広げる、子孫を残すために進化した結果な訳です。

追熟する果物としない果物

それでは、果物の中でも追熟する物とそうでない物、代表的な果物の種類をご紹介していきましょう。

追熟する果物

まずは、追熟する代表的な果物の種類についてです。以下の果物は、収穫後に適切な環境で保管することで追熟を進めることができます。

  • ・バナナ
  • ・マンゴー
  • ・メロン
  • ・アボカド
  • ・キウイフルーツ
  • ・桃
  • ・西洋梨

上記のような果物は、収穫後に20℃前後の室温で、直射日光が当たらず、風通しが良い場所で保管しておけば、追熟が進みます。完熟したかどうかの見極め方については、見た目や持った時の感触、香りなどを参考にすると良いです。
例えば、バナナであれば、果皮表面に黒い斑点が現れます。これはシュガースポットと呼ばれる完熟のサインで、皆さんも聞いたことがあるのではないでしょうか?この他には、メロンや桃の完熟のサインとして、底部や側面が柔らかくなる、果物特有の甘い香りを強く発するようになるなどのサインが分かりやすいです。

なお、追熟は冷蔵庫の中など、低温環境に置くとストップしてしまうので注意しましょう。さらに、バナナやアボガドなどは、10℃以下の低温環境に置くと果皮が黒く変色するなどの低温障害を引き起こします。

追熟させる際は、保管温度に注意するようにしましょう。

追熟しない果物

以下の果物は追熟しません。したがって、購入したらできるだけ早く食べきるようにしましょう。

  • ・リンゴ
  • ・イチゴ
  • ・スイカ
  • ・パイナップル
  • ・ブドウ
  • ・日本梨

これらの果物は、木に実っている間しか甘みを蓄えることがないため、収穫後に常温で保存しても、糖度が増すなどの変化は期待できません。

追熟しない果物は、収穫後の変化が少ないことがメリットといえます。この特徴は、産地で収穫後、小売店での販売までという流通の過程で、品質を保ちやすくなるという利点が得られるのです。特に、シャインマスカットなど、人の手で改良が進んでいる品種については、流通面のことを考慮したうえで品種改良がなされています。例えば、運んでいる際に劣化しにくい、枝から粒が外れにくいといった特徴を持っています。

ちなみに、追熟しない果物は、低温障害を引き起こさない果物が多いので、冷蔵や冷凍を使って長期保存を目指すことも可能です。

まとめ

今回は、果物の追熟について、なぜこのような変化が現れるのか、またどの果物が追熟するのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、果物の追熟という変化は、植物の進化の過程で生まれたとされていて、「食べてもらいたい動物」によって追熟するかしないかが変わると言われています。

果物の追熟について調べてみると、面白い豆知識がたくさんあるので皆さんも覚えておきましょう。