いよいよ本格的な夏がやってきましたが、この時期になるとスーパーなどでも桃が店頭に並ぶのを楽しみにしているという方が多いのではないでしょうか?桃は、初夏から夏が旬の果物として有名で、瑞々しく爽やかな甘さを楽しめる果物として、多くの方から高い人気を誇っています。贈答品フルーツとしても人気の桃なので、これから頂き物として桃が手に入り、夕食後のデザートとして楽しめる機会が増えていくかもしれませんね。

ただ、桃に係わる失敗としては、カットしてしばらく放置していると茶色く変色してしまい、「なんだかおいしそうに見えなくなってしまった…」という話を耳にする機会が多いです。カットしてしばらく放置すると変色してしまう果物は、桃だけに限らないのですが、これらの果物について「なぜ変色するのか?」「変色させない方法はあるのか?」といった疑問を抱えたことがある人も多いはずです。

そこでこの記事では、カットした桃が変色する理由や変色を抑えるための工夫をご紹介します。

カットした桃が時間経過とともに変色する理由

それではまず、カットした桃の断面が時間経過とともに変色してしまう理由について解説します。皆さんの中にも、「食後に食べよう」と、あらかじめカットしておいた桃が、気付いたときには変色していてがっかりした…という経験をしたことがある人がいるのではないでしょうか?

実は、カットした桃が変色する現象については、きちんと名前が付けられているなど、「なぜなのか?」も分かっているのです。カットした桃の断面が変色する現象は「褐変(かっぺん)」と呼ばれていて、これが起こるのは桃に含まれる「ポリフェノール」と「酸化酵素」が要因と言われています。以下で、それぞれの要素が変色にどのように関係しているのかをもう少し詳しく紹介します。

ポリフェノールと酸化酵素の作用とは

ポリフェノールは、生活習慣病の予防やアンチエイジング効果が期待できる栄養素として注目されていますが、果物は、このポリフェノールを含むものが多いです。ポリフェノールは、色や苦みの元となる成分なのですが、健康面では抗酸化作用が注目されています。

ぶどうの果皮の色やワインやチョコレートを口にしたときに感じる苦みは、このポリフェノールが関係しているとされています。そして、桃にはこのポリフェノール以外にも酸化酵素と呼ばれる成分が含まれているのですが、この二つが組み合わさることで、褐変が起きるとされています。

酸化酵素は、空気に触れるとポリフェノールと共に化学反応を起こして、色素に変化をもたらすそうです。この反応は、いわゆる褐変と呼ばれる現象で、桃などの果物の断面が茶色くなるという変化が起きるのです。

ちなみに、褐変が起きる果物は、桃だけではありません。桃以外にも、以下のような果物は時間経過とともに変色するという褐変が起きます。

  • ・リンゴ
  • ・バナナ
  • ・アボガド

上記の果物も、ポリフェノールを豊富に含んでいるため、カットしてから時間が経つと、表面が茶色く変色します。

カットした桃の変色を防ぐ方法

それでは次に、カットした桃の変色を抑えるための対策についてもご紹介していきます。

上述したように、カットしてしばらく置いた桃が変色するのは、断面が酸素に触れてしまうことになるため、そこでポリフェノールと酸化酵素に化学反応が起きてしまうのです。逆に考えると、この化学反応を予防することができれば、桃の褐変を防ぐことができると考えられますよね。

ここでは、身近にあるもので桃の褐変を防ぐ方法をご紹介します。

塩水に浸ける

果物の褐色を防ぐ方法としては、塩水に浸けるという方法が有効です。塩水に果物を浸けると、塩に含まれるナトリウムがポリフェノール周辺に壁を作るため、酸化酵素と結びつくのを防ぐことができるのです。褐変を防ぐことだけを考えると、塩水の濃度は濃い方が良いのですが、余りに濃度の高い塩水に浸けてしまうと、桃本来の味が楽しめなくなるので、その辺りは注意が必要です。

褐変を防いだうえ、味にも大きな影響が出ないようにするには。濃度1%程度の塩水で大丈夫です。200mlの水に対して塩を1~2g程度加え、それに桃を浸けることで、一時的に褐変を防ぐことができます。
なお、味に影響が出ない程度の塩水の場合、変色を抑えられるのは最大3時間程度と考えておきましょう。

レモン水に浸ける

カットした桃の褐変を防ぐ方法として、同じ果物であるレモン果汁を使用するという方法もあります。

これは、レモンに含まれているビタミンCがポリフェノールよりも早く酸化酵素と結びつくため、ポリフェノールとの化学反応が押さえられるためです。

なお、レモン水についても、余り濃度を濃くしてしまうと、桃の味に影響が出てしまいます。したがって、200ccの水に対し、小さじ1程度のレモン果汁を入れる程度にして、そのレモン水に10分程度つけておくと良いです。この方法も、永久に褐変を防げるわけではありません。

砂糖水に浸ける

最後は砂糖水に浸けるという方法です。

砂糖水は、適度な粘度があるため、これにカットした桃を浸けると、切断面に砂糖の被膜が作られ、酸素と触れ合うのを予防することができるようになるのです。

レモン水や塩水と比較すると、味への影響が少ない変色防止方法となるのですが、効果は短めになるので、その点は注意しましょう。食後にデザートとしてすぐに食べるなど、1時間以内に必ず食べるという場合なら、砂糖水に浸ける方法で良いと思いますが、お弁当に入れるなど、それなりの時間おかれてしまう場合はおすすめではありません。

砂糖水の濃度は、200mlの水に対して大さじ1程度の砂糖が目安です。

まとめ

今回は、これから旬を迎える果物の桃について、カットした桃が変色するのを防ぐための方法について解説しました。記事内でご紹介した方法を使えば、カットした桃が茶色く変色する褐変と呼ばれる現象を防止することが可能です。どれも、キッチンに常にあるものを使って変色を防げるので、「カットしたけどすぐに食べない」なんて時は試してみてはいかがでしょう。

なお、カットした桃が変色した時には、「茶色くなっている=傷んでしまった」と考えがちですが、褐変による変色の場合、食べても問題ありません。もちろん、長時間放置していた桃の場合、水分が抜けてしまっていて、美味しく食べられなくなっている可能性もありますが、数時間程度なら問題なく美味しく食べられると思います。
ただ、カットする前から茶色く変色していた…なんて桃の場合は、外部の衝撃などを受けたことで、桃自身が傷んでいる可能性があります。この場合、変色した部分をよく確認し、異臭がしたり、カビのような物が生えているものは食べずに廃棄するのがおすすめです。