皆さんは、いちじくと聞くとどのような果物をイメージするでしょうか?日本国内におけるいちじくの立場で考えると、「素人でも庭植えで簡単に育てられる」「難読漢字に良く出てくる」と言ったイメージで、栄養について着目する方は少ないように思えます。ちなみに、いちじくを漢字で表す場合、「無花果」と書くのが一般的ですが、「映日果」や「一熟」もいちじくを意味しています。

このようないちじくですが、実は非常に栄養価が高い果物で、古くは「不老長寿の果物」などと呼ばれ親しまれていたとされます。いちじくには、ビタミンやミネラル、食物繊維など、人が生きていく上で重要な栄養素が豊富に含まれています。自宅の庭で育てることもできる果物なので、いちじくを食べることでどのような効果が期待できるのかをご紹介していきたいと思います。

いちじくに含まれる栄養素

それではまず、「不老長寿の果物」などと呼ばれていたいちじくには、どのような栄養素が含まれているのかについて解説します。いちじくは、なんとキリスト教の聖書にも登場している果物で、古くは薬効が高いことで重宝されていたとされます。

現在でも、栄養価が非常に高い果物として有名ですので、ここでは「日本食品標準成分表(八訂)増補2023年」をもとに、いちじくに含まれる代表的な栄養素をご紹介します。

  • ・ビタミンE(α-トコフェロール):0.4mg
  • ・ビタミンB6:0.07mg
  • ・葉酸:22μg
  • ・カリウム:170mg
  • ・カルシウム:26mg
  • ・マグネシウム:14mg
  • ・銅:0.06mg
  • ・食物繊維:1.9g

※可食部100g当たりの数値です

いちじくには上記以外にもさまざまな栄養素が含まれています。全ての栄養素を確認したい方は、以下のページをご参照ください。

参照:食品成分データベース(いちじく)

いちじくに含まれる栄養素による効果とは

それでは、いちじくに含まれる栄養素は、人にとってどのような効果をもたらせてくれるのかについても見ていきましょう。以下で、各栄養素を摂取することで期待できる効能についてご紹介します。

ビタミンE(α-トコフェロール)

ビタミンEは、強い抗酸化作用を持つ栄養素として知られています。この栄養素は、細胞の酸化を防いで老化を防止する働きがあるとされていることから、若返りのビタミンなどと呼ばれることもあります。

動脈硬化や血栓の予防、血圧の低下、LDL(悪玉)コレステロールの減少、細胞膜を健全に保つなどの働きがあると言われています。

ビタミンB6

ビタミンB6は「ピリドキシン」とも呼ばれるビタミンB群の一種です。これは、たんぱく質の分解・合成を助け、皮膚や粘膜の健康維持に働きかけるとされています。また、神経伝達物質の合成に関わるとされているため、精神状態の安定を助けてくれるとされます。この他にも、ホルモンバランスを整える働きも持つことから、女性の味方となるビタミンとされています。

なお、ビタミンB6は、光に弱いという性質を持つため、新鮮ないちじくほど効率的に摂取出来ます。

葉酸

葉酸は、ビタミンB12とともに赤血球の生産を助けるビタミンとされています。代謝にも関与する栄養素で、DNAやRNAなどの核酸やたんぱく質の生合成を促進し、細胞の生産や再生を助ける栄養素であることから、身体の発育に非常に重要なビタミンとされています。特に胎児にとっては重要な栄養成分であるとされているため、妊活・妊娠中の女性は、積極的に摂取したい栄養素とされています。

カリウム

別記事でもご紹介していますが、果物に含まれるカリウムは、体内の過剰な塩分(ナトリウム)を排出してくれるという働きを持っており、高血圧の予防やむくみの解消などが期待できるとされています。

カリウムは、さまざまな野菜や果物に含まれている成分なので、比較的摂取しやすいと思います。

カルシウム

カルシウムは、骨や歯を健康に保つため重要な栄養素であることが有名ですね。この他にも、筋肉や神経の働きを正常に保つ働きなども持っているとされます。

一般的に、カルシウムは、小魚や牛乳などで摂取することができると考えられていますが、実はいちじくにもカルシウムが含まれているのです。カルシウム不足は、骨が弱くなるなど、私たちに日常生活を困難にするさまざまな問題を引き起こしますので、カルシウム不足に陥らないよう注意しましょう。

マグネシウム

厚生労働省が運営するe-ヘルスネットには、マグネシウムの効能として以下のように解説されています。

300種類以上の酵素を活性化する働きがあり、筋肉の収縮や神経情報の伝達、体温・血圧の調整にも役立っています。 マグネシウムが不足すると骨の形成に影響が出るほか、不整脈や虚血性心疾患、高血圧、筋肉のけいれんを引き起こします。
引用:e-ヘルスネット

上記の通り、マグネシウムは、人間の生命活動の多くに関係しており、この栄養素が不足した場合、さまざま健康問題の発生につながる恐れがあるとされています。

食物繊維

食物繊維は、整腸作用など身体の中で有用な働きをすることが注目され、第6の栄養素といわれることがあります。

食物繊維は、便通を整えて便秘を防ぐうえで欠かせない栄養素とされています。また、脂質・糖・ナトリウムなどを吸着して身体の外に排出する働きを持っていますので、肥満や脂質異常症(高脂血症)・糖尿病・高血圧など生活習慣病の予防・改善なども期待できるとされています。
なお、食物繊維の摂りすぎは、ミネラルなどの吸収を妨げることがあるとされていますので、注意が必要です。ただ、日本人の通常の食生活で食物繊維の摂りすぎに陥ることはほとんどないとされています。ただ、近年では、さまざまな栄養素を手軽に摂取できるサプリメントが販売されているため、サプリなどを多用している方は注意が必要です。

いちじくにはポリフェノールも含まれている

いちじくには、上記のような栄養素以外にも、ポリフェノールの一種であるアントシアニンが含まれています。アントシアニンは、視覚効果の改善効果があるとされる成分で、ブルベリーなどにも含まれていることで有名です。アントシアニンは、疲れ目改善などのサプリメントなどとして販売されているのを見かける機会が多いと思います。

注意が必要なのは、いちじくにアントシアニンが含まれるのは確かなのですが、主に「皮」の部分に多く含まれています。いちじくは、ほとんどの方が皮を剥いて中の実だけを食べるはずですので、一般的ないちじくの食べ方をしている場合、多くのアントシアニンは捨てられていることになるのです。ちなみに、果物に含まれる食物繊維についても、その多くは皮に含まれている場合が多いです。

それでは、いちじくに含まれている栄養素を余さず摂取したいと考える場合、どのような食べ方が良いのでしょうか?

ドライいちじくなら皮ごと食べられる!

いちじくは、夏の終わりから秋にかけてが旬と、あまり長い期間収穫できる果物ではありません。また、いちじくは、一度収穫すると足が早い果物なので、長期保存が向かないという特徴もあります。そこで、いちじくの長期保存を目的として考案されたのが「ドライいちじく」で、簡単に言うと干し柿のいちじく版です。いちじくを乾燥させ、水分を少なくすることで、長期的な保存が可能となり、現在では1年中ドライいちじくを口にすることができるようになっています。

ドライいちじくは、長期保存が可能という点以外にも、栄養素が凝縮されている、皮ごと食べることができるようになるため、生のままだと摂取出来ない栄養素も摂取できるなどのメリットが得られます。例えば、ドライいちじくの栄養素について、上で紹介した生のいちじくと同じように可食部100gの場合、食物繊維は10.7g、カリウムは840mgとなり、圧倒的に多くなるのです。これは、ドライいちじくは、水分を除去していますので、当然と言えば当然です。ただ、いちじく1個あたりに換算しても、ドライいちじくのほうが約1.5~2倍多く含まれていると言われていますし、栄養素がギュッと凝縮される感じです。

さらに、ドライいちじくの場合は、皮ごと天日干しにされていますので、皮に含まれるポリフェノールも余すことなく摂取することが可能です。「定期的にいちじくを食べたい」「いちじくの栄養を余すことなく摂取したい」とお考えであれば、ドライいちじくがオススメかもしれませんね。

いちじくの注意点について

古くは薬効が高いと言われ不老長寿の果物などと呼ばれたいちじくですが、いくつか注意しなければならないポイントが存在します。実は、いちじくは、食べる人によってはアレルギー症状などの危険があるとされています。

以下のような方は、いちじくを食べる際は注意しましょう。

花粉症やアレルギー体質の人

いちじくは、花粉症の人、とくにシラカバ科の花粉にアレルギーをもつ人は注意が必要とされています。特定の果物や野菜を口にした時、口の中がかゆくなったり、腫れるといった口腔アレルギー症状が出たことがある人は少なくないと思います。果物のアレルギーでは、特にキウイを口にした際に多いとされていますが、シラカバ科の花粉症患者の方は、いちじくなどいろいろな果物へのアレルギーが考えられます。

シラカバアレルギーの人は果物アレルギーを併発することが多いとされていて、成人してから突然始まるなんてことも普通にあるそうです。ちなみに、シラカバアレルギーの人は、イチジク、キウイ、メロン、パイナップル、トマト、いちご、リンゴ、ナシ、桃、サクランボ、柿に注意が必要とされています。
これらの果物を食べる時には。少量ずつ様子を見ながら食べるのがおすすめです。

肌が弱い人

肌が弱い人は、いちじくに触れることでかぶれてしまう可能性があるので注意しましょう。イチジクは、イボ取りや水虫の万能薬などとして使用されていた時代があるのですが、これは、いちじくに含まれるフィシンの働きを利用したものです。しかし、肌が弱い人にとっては、この成分が原因でかぶれてしまう…と言った状況になる場合があるのです。

なお、いちじくによってかぶれるといった症状は、主にいちじくの樹液に触れることで生じるとされています。この他、いちじくの葉の裏の産毛に触れることでかぶれてしまった…という人もいますので、家庭菜園でいちじくを育てている方は特に注意が必要です。

おなかを下すことが多い人は注意

いちじくは、食物繊維が豊富に含まれている果物で、整腸作用が非常に強いとされています。そのため、もともと胃腸が弱い人にとっては、いちじくを食べることで逆におなかの調子を崩してしまう…なんてことが考えられるのです。

今までいちじくを食べ慣れていないという方の場合、少量から食べてみて、様子を見ながら食べる量を増やしていくといった工夫が必要だと思います。

まとめ

今回は、さまざまな果物の中でも栄養価が高いと言われるいちじくについて解説しました。イチジクは、家庭菜園でも比較的容易に育てることができる果物で、庭植えすれば特に手間をかけなくてもしっかりと果実をつけてくれます。そのため、日本国内では、柿などと並んで一般の方が育てられる果物としても非常に高い人気を誇っています。

記事内でご紹介しているように、いちじくは「不老長寿の果物」と重宝されていたように、さまざまな健康効果が期待できる果物です。ただ、キウイなどと同じく、成人後も突然アレルギー症状が出る可能性がある果物ですのでその点は注意しましょう。特に、花粉症を持っている方は注意が必要とされていますし、ほとんどの日本人はいちじくにアレルギーを持っているかもしれません。

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