夏から秋にかけてが旬の果物がぶどうです。近年のぶどうは、「高級な贈答品用の果物」というイメージが強くなっていますが、一昔前まではデラウェアなど、子供がおやつとして手軽に食べることができる大衆フルーツというイメージも強かったです。そこから、巨峰やピオーネ、シャインマスカットなど、大粒ぶどうの人気が高くなってきたころから、子供のおやつとしてではなく、贈り物に最適な果物と言ったイメージにかわっていったのです。

そしてそこからさらに時代が進んだ現在では、もともと高級フルーツの代表格となったシャインマスカットが、スーパーの店頭などで手軽な価格で手に入るようになっています。これは、シャインマスカットが全国で爆発的な人気を誇るようになったことから、さまざまな農園が栽培し始め、収穫量が急激に伸びたことが要因です。それでは、シャインマスカットがここまで人気になったのはなぜなのでしょうか?
もちろん、ぶどうとしても非常に美味しい品種であることが大きな要因なのですが、実は「種無しで皮ごと食べられる」というポイントが非常に大きかったように思えます。実際に、シャインマスカット以降は、皮ごと食べられるぶどう品種の人気が総じて上昇していて、現在では「ぶどう=皮ごと食べる物」という認識を持っている方も増えているようです。

そこでこの記事では、昨今のぶどうのトレンドである皮ごと食べられるぶどうについて、その基礎知識について解説します。

皮ごと食べられるぶどうが登場した理由は?

皆さんは「ぶどうの食べ方は?」と聞かれると、どういった方法をイメージするでしょうか?実は、この質問をされた場合には、年齢によってその答えが変わるケースが多いのです。

シャインマスカットなど、皮ごと食べられるぶどう品種が増えている現在では、20代以下の若者層に質問した場合は「軸からとって皮ごと食べる!」と答える人が多い傾向にあります。しかし、30代や40代以上になると「ぶどうは皮を剥いて、種を吐き出さなければいけないから、食べるのが面倒…」と言ったイメージを持つ方も少なくないのです。実際に、現在でも贈答品市場で人気の巨峰やピオーネについては、皮は剥いて食べるのが一般的です。

それでは、ここ最近、ぶどうの品種改良として「皮ごと、種無し」がトレンドになっているのはなぜなのでしょうか?皮ごと食べられるぶどうが開発されたのは、生産者と消費者の需要がマッチしたというところが大きいとされています。実は、ぶどうはその他の果物と比較しても、生産過程における機械化が難しい果物と言われています。実際に、栽培に手間がかかるという特徴があるため、ぶどうの生産量や生産者の数は、年々減少傾向にあったとされるのです。

しかしその一方、消費者側がぶどうの購買にかける金額については、年々増加傾向を示したとされています。そこで、ぶどう農家が考えた工夫が、生産量を増やすことではなく、「価格が高くなったとしても、消費者が買いたい(食べたい)と考えるようなぶどうを作る」ということだったのです。
そして、さまざまなぶどう農家が試行錯誤して誕生したのが、シャインマスカットや瀬戸ジャイアンツを始めとした「皮ごと食べられるぶどう」なのです。近年のぶどう市場で、軸から外してそのまま口にすることができる「皮ごと・種無し」のぶどう品種がどんどん増えているのは、このような歴史があるのです。

ちなみに、諸外国でのぶどうの食べ方については、昔から「皮ごと食べる」という方法が一般的だったそうです。ただ、海外の品種については、「皮ごと食べても美味しく感じられるように」と言った方向の品種改良は行われていないため、日本人にとっては「ぶどう本来の美味しさが失われている…」と感じるかもしれません。

ぶどうを皮ごと食べることで得られるメリット

皮ごと食べられるぶどうの登場は、消費者と生産者との需要がマッチしたのが大きいです。上述したように、ぶどうは「味は良いけど、皮を剥くのや種を出すのが面倒だから苦手」と言った意見が根強くあります。皆さんも、巨峰やピオーネなど、皮を剥いて食べる品種について「皮が無ければな…」「誰かに皮だけ剥いてほしい…」と感じた経験があるのではないでしょうか?

ただ、ぶどうは、本来皮ごと食べる方がメリットが大きい果物であることはご存知でしょうか?これは、近年トレンドとなっている皮ごと食べられる品種のみを指しているのではなく、一般的には皮を剥いて食べる品種でも、皮を剥かずに食べる方が良いとされているのです。

なぜなら、ぶどうは、皮や皮付近に多くの栄養素が含まれているからです。例えば、ぶどうを皮ごと食べた時と皮を剥いたときでは、以下のように摂取できる栄養素の量が大きく変わるのです。

■可食部100gあたりの栄養素について

  • ・食物繊維:(皮あり)0.9g/(皮なし)0.5g
  • ・カリウム:(皮あり)220mg/(皮なし)130mg
  • ・β-カロテン:(皮あり)39μg/(皮なし)21µℊ
  • ・葉酸:(皮あり)19μg/(皮なし)4μg
  • ・ポリフェノール:(皮あり)200mg/(皮なし)―

上記のように、ぶどうは皮ごと食べる方が多くの栄養素を摂取可能です。特に、ポリフェノールに関しては、そのほとんどが皮に含まれているため、皮を剥いて食べると摂取出来なくなる可能性まであるのです。

ぶどうを皮ごと食べることによる健康効果

ぶどうは、栄養素が豊富な果物として有名ですが、特に皮ごと食べることで多くの栄養素を摂取できます。ぶどうに含まれる栄養素は、以下のような健康効果が期待できるとされています。

  • ・ポリフェノール:老化防止(美肌づくり)、動脈硬化の予防、生活習慣病の予防
  • ・β-カロテン:老化防止(美肌づくり)、目の健康を守る、粘膜の乾燥を防ぐ
  • ・カリウム:むくみ解消、高血圧予防
  • ・食物繊維:腸内環境を整える、生活習慣病の予防

健康効果を期待してぶどうを食べる場合は、やはり皮ごと食べられる品種がおすすめです。

皮ごと食べられるぶどう品種とは?

それでは、さまざまあるぶどう品種の中でも、皮ごと食べられる品種はどのような物があるのでしょうか?ここでは、皮ごと食べられるぶどうの代表品種をいくつかご紹介します。

皮ごと食べられるぶどう品種はこれ

近年では、「皮ごと、種無し」のぶどう品種が増えています。シャインマスカットが有名ですが、それ以外にもさまざまな品種が存在します。例えば、以下のような品種は皮ごと手軽に食べられるので、この夏に食べてみてはいかがでしょう?

上記以外にも、皮ごと食べられる品種が年々増加しています。

皮ごと食べられない品種は皮を剥くべき?

冒頭でもご紹介したように、一昔前までのぶどうは「皮を剥いて食べる」のが一般的でした。例えば、巨峰やピオーネは、皮を剥いてから口に入れる、もしくは口に入れた後に皮を吐き出して食べるのが一般的です。大衆ぶどう品種として人気のデラウェアに関しても、皮は食べないというイメージが強いですよね。それでは、一般的に「皮ごと食べられない品種」というイメージのあるぶどうは、皮は必ず剥かなければならないのでしょうか?

実は、これらの品種に関しても、皮ごと食べても問題はありません。ぶどうの皮は、毒などが含まれているわけではなく、あくまでも食感が悪く感じる、皮に渋味などがあるといった理由から、ぶどう本来の美味しさを感じられなくなる可能性があるため、「皮を剥いて食べる」ようになっただけなのです。したがって、ぶどうの栄養素を余さず摂取したいと考える場合には、こういった品種についても皮ごと食べても構いません。

「皮ごと食べられるぶどう」として開発されているものは、果皮が薄くなっているため、果肉と一緒に口に入れても違和感を感じることなく、美味しく食べられるのです。

ぶどうを皮ごと食べる注意点について

それでは最後に、ぶどうを皮ごと食べる時の注意点についても簡単に解説します。

まず、ぶどうを皮ごと食べると聞いたときに「農薬は大丈夫なのかな?」という点を気にする方もいるかと思います。結論から言ってしまいますが、ぶどうを皮ごと食べたとしても、農薬による健康被害の心配はありません。なぜなら、日本で使用できる農薬は、非常に厳しい基準が設けられているため、皮ごと食べたとしても体に害が出るような事はないからです。

この他の注意点については、以下のような点に気をつけましょう。

食べる前によく洗う

ぶどうを皮ごと食べる際には、事前によく水洗いしてから食べてください。これについては、残留農薬を落とすことが目的ではありませんよ。

ぶどうは、自然の農園の中で育ちます。そして新鮮な状態を保つためには、ぶどう表面のブルームを残しておく必要があるのです。そのため、農園などで収穫されたぶどうなどは、必要以上に洗浄などはされずに出荷されます。

つまり、ぶどう表面には、残留農薬の危険はないものの、汚れや小さな虫などが付着している可能性が高いのです。したがって、食べる直前に、良く水洗いして、汚れを落としてから食べるようにしましょう。

参照:ぶどうのブルームについて

食べ過ぎはNG

「ぶどうは皮ごとの方が栄養素が豊富」と聞くと、身体に良いならたくさん食べたい…と感じてしまう人もいるようです。しかし、どのような食品でも同じですが、食べ過ぎは身体に良くありません。特に、皮ごとぶどうを食べる場合、食べ過ぎてしまうと以下のような問題が生じる可能性があります。

  • ・ぶどうを皮ごと食べると、食物繊維が豊富なので、消化不良の原因になる
  • ・ぶどうはカロリーが高めなので、カロリーの過剰摂取になる

どのような食品でも、食べ過ぎてしまうとお腹を壊してしまうなどの問題が生じる可能性があります。したがって、食べ過ぎには注意するようにしましょう。

なお、果物の一日の摂取量については、ぶどう以外に食べる果物も併せて「1日200g程度」が目安とされています。もちろん、ぶどうのみの場合は、200gまでは食べても構わないと考えられます。なお、「ぶどう200g」というのは、巨峰のような大粒ぶどうの場合なら、およそ1/2房程度です。

まとめ

今回は、近年のぶどう市場でトレンドとなっている皮ごと食べられるぶどうについて解説しました。

一昔前までは、ぶどうは皮を剥いて食べるのが日本国内では一般的でした。もちろん、現在でも品種によっては皮を剥いて食べた方が美味しく感じられるぶどう品種がたくさん存在します。しかし、シャインマスカットを始めとして、近年開発が進んでいる新しいぶどう品種については「皮ごと食べられる」よう、果皮が薄く育つようなものが多くなっているのです。そのため、若者世代にとってのぶどうは、「種がない」「皮ごとそのまま食べられる」果物と認知されるようになっています。

田中ぶどう園でも、皮ごと食べられるぶどう品種をたくさん栽培しています。2024年は、8月2日より収穫がスタートし、直売所や通販サイトで販売していきますので、是非皆さんも食べてみてください。

> 田中ぶどう園のweb直売所はコチラ