皆さんは、「赤嶺(せきれい)」と呼ばれるぶどう品種はご存知でしょうか?このぶどう品種は、山梨市の三沢昭氏が発見したもので、甲斐路の早熟着色系枝変わりの品種とされるぶどうです。なお、「枝変わり」とは、植物の突然変異のことを指しているのですが、簡単に言うと、赤嶺は他のぶどう品種のように、人為的に他のぶどう同士を掛け合わせて改良されたのではなく、自然発生的に登場したぶどう品種だと言えます。なお、赤嶺が市場に出回り始めた時期については、はっきりとした時期が確定しているわけではなく、昭和60年代に山梨県内で広まったとされています。

赤嶺は、外見はほとんど「甲斐路」と変わらないことから、「早生甲斐路」という意味で「甲斐路」として出荷されることもあるようです。この記事では、赤系ぶどうの代表種でもある赤嶺の特徴について簡単に解説します。

甲斐路よりも熟期が早い赤嶺について

冒頭でご紹介したように、赤嶺は「甲斐路」の早熟着色系枝変わりの品種で、赤系ぶどうに分類されます。早熟着色系枝変わりとは、簡単に言うと、甲斐路よりも熟期が早いぶどう品種ということで、この特徴から「早生甲斐路」とも呼ばれています。ちなみに、外見上は「甲斐路」とほとんど変わらないことから、「単に熟期が早い甲斐路」という意味合いで甲斐路として出荷されることもあるようです。

赤嶺は、果実一粒の重さが10g前後で、一房になると500~600gぐらいになります。外見は甲斐路と同じく鮮やかな紅色の果皮で、色づきが非常に良いです。味も甲斐路によく似ていて、高い糖度と心地よい酸味を持っています。香りのよいぶどう品種で、多汁でスッキリとした味わいを持ちますので、日本人に好まれる特徴を多く持っていると思います。

なお、赤嶺は甲斐路と同じく、日持ちが良いという特徴があることから、輸送性に優れていてギフトとしても人気です。

赤嶺の特徴

赤嶺は「甲斐路」の早熟着色系枝変わりの品種であることから、ぶどう品種としての特徴は「甲斐路」とほぼ同じです。

甲斐路と何が違うのかというと、熟期が異なるだけで、赤嶺の熟期は9月初旬から上旬にかけてと、甲斐路よりも20日ほど早いです。また、甲斐路よりも着色しやすく、縮果病や黒カビ病などに対する耐病性が強いです。なお、赤嶺は本来着色しやすく、鮮紅色から紫紅色が特徴の赤系ぶどうです。ただ、その年の気候により、薄い色しか着色しないことがあります。例えば、昼夜にわたり高温が続く、日照量が不足しているといった場合は、色づきが悪くなります。

赤嶺の産地や旬について

赤嶺の産地は、山梨県が有名です。農林水産省がまとめている特産果樹生産動向調査によると、令和元年度の赤嶺の栽培面積は125.6haとなっています。ちなみに、甲斐路は全国で28haの栽培面積となっていますので、赤嶺の方が約5倍もの栽培面積を誇っています。なお、この調査結果を見ると、赤嶺は山梨県でのみ栽培されている数値になりますが、このほかにも愛知県や新潟県、長野県などでも少量栽培がおこなわれています。(※田中ぶどう園でも栽培しています)

赤嶺は、発見から30年以上の年月が経過して、これを親とする新品種が次々と登場していることもあり、年々その栽培面積が減少しています。数年後には、手に入れることが難しい希少品種になるかもしれないので、今のうちに食べてみるのがオススメかもしれませんね。

赤嶺の旬について

赤嶺は、ぶどう全体でみると中生種に当たりますが、早生甲斐路と呼ばれるように、甲斐路よりも20日ほど早く収穫時期を迎えます。

基本的には、9月初旬ごろから収穫が始まり、収穫が遅い地域で10月上旬ごろまで、産地を変えながら続きます。赤嶺の出盛り期となる旬は、9月上旬から下旬にかけてと考えておきましょう。

赤嶺の見分け方と保存方法について

赤嶺は、全体的にきれいな紅色が出て、粒ぞろいが良いものがオススメです。ただ、上述しているように、その年の気象条件などによって色づきがどうしても悪くなる場合があるので、その場合はこの限りではありません。
鮮度については、表面に白い果粉(ブルーム)が残っていて、軸がまだ青く、みずみずしいものほど新鮮です。鮮度が落ちてくると、軸が茶色く枯れてきたり、果粉が落ちてぶどう表面の皮がテカテカになります。表面がテカテカだと、「艶があるから新鮮なのかな」と思いますが、ぶどうは表面にブルームが残っているものほど鮮度が高いです。

赤嶺は、皮が薄めのぶどう品種ですので、皮ごと食べることも可能です。ただ、皮がやや口に残る感じがしますので、ぶどうの皮に抵抗感がある人は皮を剥いて食べるのがオススメです。赤嶺の皮は、手で簡単に剥けるので、皮を剥くのもそこまで手間ではないと思います。味は、しっかりと高い糖度を持っており、酸味は甘味に対して程よく感じるぐらいですので、とても食べやすい部類のぶどうだと思います。

赤嶺の保存方法

赤嶺は、日持ちがよく粒がしっかりと付いていて脱粒しにくい品種ですが、保存する時には冷蔵庫や冷暗所で保管しましょう。ぶどう全般に言えますが、乾燥に強くないので、新聞紙やラップでくるむ、ポリ袋などに入れるなどの対策で乾燥を防いでください。近年では、パントリーがある家も多いので、そういった場所で常温保存されることも少なくありません。ただ、パントリーの室温が高くなるようであれば、冷蔵庫の野菜室で保管するのがオススメです。赤嶺は、ぶどう品種の中でも日持ちが良い方ですが、新鮮なうちに食べるのがオススメです。

少しずつ長く楽しみたい方は、冷凍庫で保存することもできます。冷凍保存する場合は、ハサミなどを使って果実を軸から切り離して袋に入れて保存しましょう。なお、ハサミで切る時には軸を少し(2mm程度)残しておくのがポイントです。冷凍保存の場合は、1カ月程度持つでしょう。

まとめ

今回は、甲斐路の早熟着色系枝変わりの品種である赤嶺の特徴をご紹介しました。甲斐路と赤嶺は、収穫期が赤嶺の方が少し早いだけで、ぶどうとしての特徴はほぼ同じと考えても構いません。そのため、赤嶺が出荷される際には、甲斐路として出てくることもあるそうですよ。

なお、赤嶺は、さまざまな品種の親となっていることもあり、年々栽培面積が減少しています。そのため、数年後には手に入れる事が非常に難しいぶどう品種になることも考えられますので、まだ赤嶺を食べたことが無い人は是非一度口にしてみ欲しいです。

田中ぶどう園でも、赤嶺の栽培を行っていますので、収穫時期が来たときには通販サイトの方で販売します。ぜひお楽しみに!