食物繊維は、腸内環境を整える、便秘予防に適しているなど、さまざまな健康効果がある栄養素として有名です。また、食物繊維は健康的なダイエットの味方になるなどという情報もありますし、積極的に摂取したいと考えている方が多いのではないでしょうか?実際に、インターネットで食物繊維について検索する際には、「食物繊維を多く含む食品」と言った感じのキーワードが使用されていることが多く、効率的に食物繊維を摂取できる食品を探している方は多いように思えます。

ただ、さまざまな健康効果を持つと言われる食物繊維ですが、正しい知識を持っておかなければ予想外の結果をもたらす可能性もあるようです。そこでこの記事では、食物繊維に関する基礎知識と、食物繊維が多く含まれている食品について、いくつかの分類ごとにそのランキングをご紹介します。

食物繊維の基礎知識を抑えておこう!

それではまず、食物繊維に関する基礎知識として、食物繊維に期待されている役割やどの程度摂取すれば良いのかについて簡単に解説していきます。

食物繊維に期待される役割について

それではまず、食物繊維の役割についてご紹介します。厚生労働省が運営するe-ヘルスネットでは、以下のように解説されています。

食物繊維は小腸で消化・吸収されずに、大腸まで達する食品成分です。便秘の予防をはじめとする整腸効果だけでなく、血糖値上昇の抑制、血液中のコレステロール濃度の低下など、多くの生理機能が明らかになっています。
引用:厚生労働省e-ヘルスネット「食物繊維の必要性と健康」

食物繊維は、便秘予防を始めとして整腸効果があることが有名ですが、それ以外にも、「食事などによる血糖値の急上昇を防ぐ」「コレステロールや中性脂肪の量をコントロールする」などと言った役割があるとされています。しかし、現在の日本人の多くは、この食物繊維が不足していると言われており、厚生労働省などでも、積極的に摂取することを推奨しています。

食物繊維には水溶性と不溶性がある

一口に食物繊維と言っても、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の2種類が存在するということはおさえておかなければいけません。

なお、「水溶性食物繊維」と「不溶性食物繊維」の二つは、両方とも腸内環境を整えてくれる善玉菌のエサになるということは変わりありません。ただ、以下のような違いがあるので、きちんと押さえておきましょう。

■水溶性食物繊維の特徴

  • ・水への溶解性:水に溶ける
  • ・腸内での主な役割:便をやわらかくする
  • ・腸内での変化:腸内でゲル状になる

■不溶性食物繊維

  • ・水への溶解性:水に溶けない
  • ・腸内での主な役割:便の量を増やす
  • ・腸内での変化:腸内で膨張する

上記のように、同じ食物繊維でも、水溶性と不溶性では、かなりの違いが存在します。水溶性食物繊維は、水に溶け便を軟らかくする働きがある一方、不溶性食物繊維は、水分を吸収することで膨らみ、便の量を増やして腸を刺激します。その結果、腸の働きが活発になり、便通を促すと言われています。

食物繊維はどれぐらい摂取すれば良い?

厚生労働省が公表している情報によると、日本人の食物繊維摂取量は減少傾向にあるとされています。例えば、1950年頃の日本では、食物繊維の摂取量は一人あたり一日20gを超えていたとされているのですが、最近の報告によると、平均摂取量は一日あたり14g前後と推定されています。

それでは、さまざまな健康効果を持つとされる食物繊維について、一日にどの程度摂取するのが望ましいのでしょうか?この問題については、成人男性の1日あたりの食物繊維摂取の目標量が「21g以上」、女性の場合は「18g以上」と設定されています。これは、厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」で公表されているのですが、この資料の中には年齢や性別に応じた食物繊維の目標摂取量も公表されているので、以下でご紹介します。

  • ・3〜5歳:男性8g以上、女性8g以上
  • ・6〜7歳:男性10g以上、女性10g以上
  • ・8〜9歳:男性11g以上、女性11g以上
  • ・10〜11歳:男性13g以上、女性13g以上
  • ・12〜14歳:男性17g以上、女性17g以上
  • ・15〜17歳:男性19g以上、女性18g以上
  • ・18〜29歳:男性21g以上、女性18g以上
  • ・30〜49歳:男性21g以上、女性18g以上
  • ・50〜64歳:男性21g以上、女性18g以上
  • ・65〜74歳:男性20g以上、女性17g以上
  • ・75歳以上:男性20g以上、女性17g以上

年齢別の目標摂取量は上記のような感じです。

食物繊維の摂りすぎは注意

ここまでの情報で、食物繊維が人にとって大切な栄養素で、決められた量を摂取しておきたいと分かっていただけたと思います。ただ注意しておきたいのは、一般的に便秘予防に役立つとされる食物繊維ですが、不溶性食物繊維に関しては、これを摂取しすぎると、逆に働いてしまい便秘の原因となると言われているのです。

食物繊維を摂取するためには、やはり食物繊維が多く含まれている食品を食べるのが良いです。ただ、「食物繊維が多く含まれている」とされる食品でも、水溶性食物繊維と不溶性食物繊維が含有されるバランスが異なるため、どのような割合で食物繊維が含まれているのかきちんとチェックしておくべきでしょう。水溶性と不溶性食物繊維の含有バランスについては、食品によって異なるので、一つの食品に頼るのではなく、多くの食品を組み合わせて食物繊維の接種を目指すのがおすすめです。

食物繊維が多く含まれている食品

それではここから、食物繊維が多く含まれている食品をご紹介していきます。ここでは、いくつか分類に分けて、食物繊維が多く含まれている食品をご紹介します。

なお、下で紹介する食物繊維含有量は、「日本食品成分表2020年版(八訂)」から引用しています。

野菜類

「食物繊維が多く含まれる食べ物」と聞くと、やはり野菜を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか?以下に、可食部100g当たりの食物繊維含有量が多い野菜類をあげてみます。

  • ・切り干し大根(乾):21.3g
  • ・パセリ:6.8g
  • ・ごぼう(生):5.7g
  • ・だいこん(葉、ゆで):3.6g
  • ・にんじん(生):2.8g
  • ・ほうれんそう:2.8g
  • ・キャベツ:1.8g

野菜の中では、ダイコンやゴボウが食物繊維を多く含んでいます。なお、切り干し大根が圧倒的な含有量になっていますが、これは乾燥させていることから、100g当たりの含有量が多くなっているだけです。実際に食べられる量に変換するとそこまで突出した含有量になるわけではありません。

野菜は、食物繊維以外の栄養素もバランスよく摂取できるため、積極的に食べるのがおすすめです。

果物類

続いて、食物繊維を多く含む果物類をピックアップします。果物の中でも、多くの食物繊維を含んでいるのは以下のような種類です。

  • ・干し柿:14.0g
  • ・アボカド:5.6g
  • ・レモン:4.9g
  • ・ブルーベリー(生):3.3g
  • ・キウイフルーツ:2.6g
  • ・りんご:1.4g
  • ・いちご:1.4g
  • ・バナナ:1.1g

このように、果物の中で食物繊維の含有量が突出して多いのは、干し柿です。ただ、切り干し大根と同じく、乾燥させて水分が抜けた状態なため、これほど多い含有量になります。その他の果物に関しても、ドライフルーツとして摂取すれば、多くの食物繊維を摂ることができるでしょう。注意が必要なのは、果物は、果糖などの糖分も多く含まれていますので、食べ過ぎはオススメできません。

※アボガドは、「果物ではなくて野菜では?」という印象を持つ方が多いと思います。ただ、農水省による野菜と果物の分類方法では、アボガドは果物で、イチゴやメロンは野菜に分類されるのです。野菜と果物の分類の詳細については、別記事で解説しているので、そちらをご参照ください。

関連:野菜と果物の違いとは?野菜と果物を分類するためのポイントについて解説します!

海藻類

さまざまな食品の中でも、食物繊維が特に多く含まれているのが海藻類です。以下のように、野菜や果物とは比較にならないほどの含有量を誇っています。

  • ・ひじき(乾):51.8g
  • ・焼きのり:36.0g
  • ・わかめ(乾):32.7g
  • ・あおさ(乾):29.1g
  • ・昆布(乾):27.1g

ひじきは、食物繊維が非常に豊富に含まれていることで有名ですが、実はその他の海藻類も多くの食物繊維が含有されているのです。ちなみに、海藻類の食物繊維が多く見えるのは、乾燥させているからというのも大きな理由です。
海藻類は、食物繊維以外にも鉄分が多く含まれていますので、朝食時に摂取することで貧血予防などにも役立ちます。

キノコ類

次は、キノコ類です。

  • ・きくらげ(乾):57.4g
  • ・干ししいたけ:46.7g
  • ・生しいたけ:4.6g
  • ・なめこ:3.4g

このように、キノコ類の中には食物繊維を多く含む種類があります。ただ、シイタケを見ればわかるように、乾燥前のことを考えると、そこまで突出しているとは言えません。

キノコ類は、食物繊維だけでなく、ビタミンを豊富に含む食品ですので、健康的な食生活の維持の助けになるはずです。

穀物類

最後は、穀物類です。意外かもしれませんが、皆さんが良く口にする穀物にも食物繊維は含まれています。

  • ・ライ麦粉:12.9g
  • ・オートミール :9.4g
  • ・ライ麦パン:5.6g
  • ・そば(干):3.7g
  • ・中華めん(干):2.9g
  • ・フランスパン :2.7g
  • ・うどん(干):2.4g
  • ・こめ(うるち米):0.5g

上記のように、穀物類には以外にも食物繊維が含まれているのです。蕎麦やうどん、パンなど、日常的に口にする食品にも食物繊維は含まれています。特に、注目したいのはオートミールで、オートミールは、スーパーフードなどともてはやされているように、さまざまな栄養素が豊富に含まれていることで有名です。

まとめ

今回は、近年、ダイエットや便秘解消に役立つ栄養素と注目されている食物繊維について、これを多く含む食品が何なのかについて解説しました。

食物繊維はさまざまな食品に含まれていますので、バランスの良い食事を心がけていれば、自然に摂取することが可能です。したがって、食物繊維にこだわって食事メニューを決定するといった対策などは特に必要ないのではないでしょうか。また、本来は便秘解消に役立つとされる食物繊維も、摂取しすぎると便秘の原因となってしまう場合があります。何事も、やりすぎることが良くないので、あくまでもバランスの良い食事を心がけるようにしましょう。