皆さんは、「果汁100%のジュース」と聞くと、どのような物をイメージするでしょうか?中には、新鮮なフルーツをジューサー(搾り器)を使って果汁だけを取り出し、それを容器に入れたジュースのことを指していると考える人もいるかと思います。

しかし、コンビニなどでも販売されているパックジュースの中にも「果汁100%」と記載されている物もありますし、このような市販のジュースは「ジューサーで作るのは非効率だよな…」と感じてしまうことでしょう。実は、コンビニやスーパーなどで見かける「果汁100%のジュース」についても、濃縮還元とストレートの2種類が存在していて、実際に飲み比べてみると、味わいが大きく異なります。

同じ「果汁100%」のジュースなのに、なぜ味に違いが生じるのか不思議に感じる方が多いと思います。そこでこの記事では、意外に知らない方が多い果汁100%のジュースについて、濃縮還元とストレートの違いや、それぞれのジュースを飲む際のメリット・デメリットを解説します。

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果汁100%の濃縮還元とストレートは製法が異なる

果汁100%のジュースでも、濃縮還元とストレートの2種類があるのですが、実はこの二つは誰が飲んでもその違いが明確にわかるほど大きな差があります。濃縮還元は、名前に「濃縮」とついていることから、味がより濃くなると考えられがちですが、実はそのようなことはなく、フルーツ特有の甘さが弱くなり、香りもほとんどありません。一方ストレートの果汁100%はというと、フルーツ特有の自然な味わいを持っていて、香りや風味を強く感じるはずです。

それでは、同じ果汁100%のジュースなのに、ここまで明確な違いが生じるのはなぜなのでしょうか?実は、濃縮還元とストレートでは、製法がそもそも異なるため、同じ果汁100%のジュースでも、根本的に別物の飲み物になってしまうのです。

ここでは、濃縮還元とストレートの違いを分かりやすくご紹介します。

「濃縮還元」は、一度ペーストにしたものを水で戻す

果汁100%のジュースでも、「濃縮還元」と記載されているものは、絞り出した果汁を、加熱したり凍結させることで水分を飛ばし、ベースト状に濃縮します。そして、濃縮したペーストに、再び水分を加えて、元の濃度に還元させて作らているのです。つまり、フルーツを絞った果汁をそのまま飲むのではなく、「濃縮」と「還元」という工程を経ているから「濃縮還元」記載されているわけです。

それではなぜ、わざわざ絞り出した果汁の水分を一度飛ばし、後から元の濃度で水分を戻すなど、面倒に感じる工程を経ているのでしょうか?これについては、実はジュースの「製造コスト削減」が目的です。こう聞くと、「工程が増えるのだからコストは高くなるのでは?」と疑問に感じますよね。しかし、果樹100%ジュースを作るためには、さまざまな場所に輸送しなければならないことを考えると、一度ペースト状にして輸送性を高めることは理にかなっているのです。

一般的に、物を輸送するコストは、送るものの重さや体積で決定されます。輸送のグローバル化が進んでいる現在では、海外からジュースの原料となる果物を輸入するケースが多いのですが、この場合、果物そのものを輸入するよりも、現地で水分を飛ばしてペースト状に加工した原料にしたものを輸送する方が、多くのジュースの原料を輸送できるため、コストがおさえられます。さらに、食品内の水分が減少し、糖度が高くなることで、保存性も高くなるというメリットまで得られます。こういった理由から、果物そのものを輸送して、ジュース工場で果汁を絞り出すのではなく、ペースト状に加工したものを輸送し、工場で水分を調整することでジュースに戻すという工程を踏んでいるのです。

もちろん、ペースト状に濃縮する工程やジュースに戻す還元の工程でもコストはかかりますが、輸送コストの削減分の方が大きいことから、大量のジュースを作る必要がある大手メーカーなどで当たり前に採用されている製造法となっているのです。ちなみに、ストレートと比較した時に、香りや風味が落ちるのは、濃縮時に水分と一緒に風味が失われてしまうのが要因です。還元の際には、砂糖や香料、添加剤を加えることで味の調整が行われますが、フルーツの自然な風味を完全に再現することができないため、味に違いが出るのです。

「ストレート」は、そのままの果汁

果汁100%ジュースの中でも「ストレート」と記載されているものは、上述したような「濃縮」「還元」などの加工が行われておらず、搾り取った果汁をそのまま詰めたものを指しています。要は、自宅でジューサーを使って、オレンジジュースやリンゴジュースを作って飲むのと同じわけですので、自然な風味や香りを感じることが可能です。ちなみに、市販されているものは、加熱殺菌は行われています。

これからも分かるように、果汁100%のジュースにて、濃縮還元とストレートの違いは、「何か加えられているのか?」がポイントで、ストレートは「原則として何も加えていない」ところが濃縮還元との違いになります。

「濃縮還元」の果汁100%ジュースのメリット・デメリット

それではここからは、果汁100%のジュースについて、濃縮還元、ストレートそれぞれのメリット・デメリットを簡単に解説します。まずは、濃縮還元の果汁100%ジュースのメリットとデメリットからです。

「濃縮還元」のメリット

濃縮還元のメリットは、輸送コストを大幅に削減することができるため、大量生産が可能となり、飲料としての価格がおさえられる点です。購入する側から言えば、安く購入できるということですね。
また、果汁をそのまま詰めるジュースではなく、砂糖や添加物を加えることが前提となるため、ストレートの果汁100%ジュースよりも長期保存が可能です。ペースト状のものは、水分が少なくなり糖度が高いので腐りにくいですし、ジュースに加工した後も、ストレートの物よりは賞味期限が長く設定されます。この他には、味を調整することが前提なので、大量生産に向くというのもメリットと言えるでしょう。分かりやすく言うと、水分を戻す際に、砂糖や香料で風味を調整するため、全ての製品が安定した品質を確保できます。自然の果汁の場合、果物の出来によって味が左右されるので、一定以上の美味しさを保てるのは、ジュースメーカー、消費者共にありがたいメリットになるはずです。

「濃縮還元」のデメリット

次は、濃縮還元のデメリット面です。最もわかりやすいデメリットで言えば、「自然な果物の風味が損なわれる」という点でしょう。果汁100%と聞くと、果物そのままの味、香りをイメージしますが、濃縮還元のジュースは、砂糖や香料で風味を調整するわけですので、どうしてもストレートのジュースよりは味や香りが劣ります。中には、濃縮還元の果汁100%ジュースは、人工的な嫌な甘さや不自然さを感じるため、嫌いだという方までいます。これは、ペースト状にしたものに、後から手を加えて作る製法から致し方ないデメリットです。
最後は、原材料の詳細が分からないものが多いため、農薬などの危険性がある点です。もちろん、大手食品メーカーが販売している製品は、人体に危険がある原材料が使用されるようなことはないと思います。しかし、ジュースに使用されている果物の詳細が記載されていない(原産国名など)ケースも珍しくなく、その場合、日本で認可されていない農薬で育てられた果物が使用されていてもおかしくないのです。つまり、健康のために果汁100%ジュースを飲んでいたのに、逆に身体に悪いものを取り入れていた…なんて結果になる恐れもある点が大きなデメリットです。濃縮還元の果汁100%ジュースを購入する際には、原材料の原産国などもきちんと確認しましょう。

※日本国内で販売されている果汁100%ジュースについては、「加糖5%以下ならば、100%ジュースと表記してもよい」という規定があります。つまり、商品に「100%ジュース」と記載されていても、何らかの添加物が入れられているケースが結構あります。

「ストレート」の果汁100%ジュースのメリット・デメリット

それでは次に、「ストレート」の果汁100%ジュースのメリットとデメリットです。

「ストレート」のメリット

ストレートの果汁100%ジュースのメリットは、なんといっても自然な果物本来の味わいを楽しむことができる点でしょう。ストレートの果汁100%ジュースは、加熱殺菌はするものの、原則的に何も加えていないものを指しています。そのため、無添加なので安心、果物本来の風味を味わうことが可能です。

なお、ストレートの果汁100%ジュースは、国産フルーツが利用されている場合が多いため、身体に悪影響を与えるような農薬の心配なども少なくなるでしょう。

「ストレート」のデメリット

ストレートは、国産の果物が利用されるケースが多い、果物をそのまま輸送し、絞る必要があるという点がデメリットにつながります。簡単に言うと、原材料の仕入れにかかるコストや輸送コストが高くなるため、必然的にジュースとしての販売価格が高くなるのです。さらに、添加物などが加えられないため、日持ちしないという点も、取り扱い上のデメリットになるでしょう。
このような事から、ストレートの果汁100%ジュースは、大量生産には向かず、果物を栽培している農園などが現地で販売する形式が多いです。

※果汁100%ジュースに含まれる栄養素については、濃縮還元でもストレートでも「加熱する」という工程を踏みますので、大きな差は生じません。ただ、ビタミンCなどは、加熱することで減少するとされていますので、そういった栄養素が目的の場合は、ジュースとしてではなく生のまま果物を食べるのがおすすめです。

> 加熱によるビタミンCへの影響

まとめ

今回は、果汁100%ジュースの容器に記載されている「濃縮還元」と「ストレート」について、これが何を意味していて、どのような違いがあるのかを解説しました。

記事内でご紹介したように、ストレートは、絞り出した果汁を加熱殺菌はするものの、原則として何も加えていないジュースを指しています。したがって、果物本来が持つ香りや味を楽しむことが可能です。一方、濃縮還元は、絞り出した果汁を「輸送コストの削減」などのため一度ペースト状に濃縮し、輸送先で元の濃度に還元するという工程を経たジュースです。還元の際には、砂糖や香料、添加物などを加えて風味を調整するのですが、自然な果物の風味を完全再現するのは難しく、どうしても味や香りが落ちてしまいます。

濃縮還元とストレートは、ジュースとしての販売価格が大きく変わるため、日常的に飲む場合は安価な濃縮還元の方が良いと思います。ストレートでも濃縮還元でも、含まれている栄養素は大きく変わりませんし、原材料をきちんと確認すれば、農薬などによる健康被害の心配はありません。ただ、美味しさを求めて果汁100%ジュースを飲みたいと考えているのなら、絶対に「ストレート」の物を選ぶべきです。ストレートのジュースは、加熱殺菌がなされている程度で、何も加えられていないことから、自然の果物の美味しさを楽しむことが可能です。

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