皆さんは、食中毒と聞くと、何が原因となるとイメージしますか?一般の方の食中毒のイメージは、傷んだもしくは腐った食品を食べてしまう、生焼け状態の肉や魚を食べることが原因で発生する物というイメージが強いのではないでしょうか?もちろん、これ以外にも、ノロウイルスなどのウイルス系の食中毒が家族間で拡大するといった状況をイメージする方が多いと思います。

こういった食中毒のイメージから、新鮮な物から食べるのが一般的な野菜や果物は、食中毒の原因になることはほとんどないと考えている方が多いと思います。しかし、これから夏に向かって気温が高くなる時期は、レジャーやイベントなどで、外で調理、飲食する機会が増え、野菜や果物を口にしたことによる食中毒の可能性も高くなるのです。もちろん、屋外で飲食は、肉や魚などによる食中毒も多いです。ただ、BBQなど、屋外での調理・飲食は、本来食中毒の原因になりにくい野菜や果物が危険な食材にかわることがあるのです。それは、いわゆる「交差汚染」と呼ばれる状況が増えることが要因で、食中毒の原因となる細菌(腸管出血性大腸菌、カンピロバクター、サルモネラ属菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌など)が付着した肉などを切った包丁でそのまま野菜を切ることで、生食する野菜が汚染されるといった状況を交差汚染と言います。

この記事では、家庭で発生する食中毒の危険性が高まるこれからの時期に向け、皆さんが注意しておきたいポイントをご紹介します。

交差汚染とは?

それではまず、食中毒の原因となるケースが多い『交差汚染』について、これが何を意味するのかについて解説します。交差汚染は、食品業界ではクロスコンタミネーションなどとも呼ばれており、非常に高い衛生管理体制が整えられている、食品工場などで発生する食中毒の原因となる場合も多いです。交差汚染については、以下のように解説される場合が多いです。

クロスコンタミネーション(交差汚染)とは、病原菌の汚染度が高いものが、汚染度の低いものに接触することによって広がる汚染のことです。
引用:株式会社バーテックコラムより

もう少しわかりやすく言うと、食中毒菌が付着した肉などを切った包丁を使って、野菜や果物を切ることで、細菌による汚染が広がることを指しています。冒頭でご紹介したように、野菜や果物は、新鮮な物を食べる限り、食中毒などを発症する可能性は非常に低いです。これは、新鮮な状態であれば食中毒の原因菌が付着する可能性が低いからです。

しかし、汚染された食材に触れた手や調理器具で、汚染度の低い野菜や果物に触れると、食中毒菌が野菜や果物にも付着してしまうことになり、食中毒を発症するわけです。すでに加熱した食品やそのまま食べられるような食品において発生する食中毒は、この交差汚染が主原因になるケースがほとんどとされています。

BBQなど、屋外レジャーで食中毒を防ぐには?

それではここからは、BBQなどの屋外レジャーを楽しむ際、食中毒を発生させないようにするための注意点を解説します。気温が高くなるこれからの季節は、家族や友人とBBQを楽しんだり、屋外イベントでお弁当を食べたりする機会が増えます。非常に楽しみな季節ではあるのですが、その一方で食中毒の発症リスクが高くなる点には注意が必要です。まず食中毒を防止するための、大前提として、以下のポイントをおさえておきましょう。

  • ・食品は、細菌が増殖しないように低温(10℃以下)で保管する
  • ・食材に触れる前に必ず手洗いする
  • ・抵抗力が弱い人(乳児やお年寄り)は特に注意する

屋外でBBQをする際には、クーラーボックスなどに食材を入れ、持ち運ぶことになります。この際には、きちんと保冷材などもいれて低温で保管できるようにしましょう。中には、冷凍した肉を保冷材として考える人がいるのですが、肉が解凍されていけばボックス内の温度が上がりますし、肉から出るドリップが他の食材に付着し汚染させる危険性が高くなります。したがって、このような食材の持ち運び方はやめましょう。
また、調理などで食材に触れる際には、必ず手洗いをしっかりと行ってからにしましょう。これらのポイントは「最低限絶対に行うべき注意点」ですので、以下でこれ以外にポイントもご紹介していきます。

生肉や魚介類をBBQで食べる時に注意点

家族や友人とBBQを楽しむ際には、生肉や魚介類を取り扱う機会が多いです。しかし、これらの食材は、ちょっとした不注意で食中毒を引き起こしてしまう可能性がある点に注意しなければいけません。BBQの際には、以下の点に注意して、生肉や魚介類を取り扱いましょう。

  • ・肉や魚介類は加熱不十分な状態で食べない
  • ・野菜や果物など、生食用の食材に触れさせない
  • ・生の物を扱ったトングや箸を、焼きあがった肉や生食用のサラダなどを食べる際に使わない

食中毒の原因となる細菌やウイルス、寄生虫は、加熱することで死滅します。したがって、BBQの際に、しっかりと中心部分まで加熱してから食べるようにしましょう。
また、BBQでの食中毒は、交差汚染が原因となり発生することが多いので、その点は十分に注意してください。例えば、生食用の食材を生肉や魚介類の近くに置いて、気付かないうちに触れてしまう、ドリップが付着することで、食材に細菌などが移る場合が考えられます。この他には、生の物を取り扱った箸を使って、食事するなどと言った行為は、箸に付着した食中毒菌を体内に取り込む可能性があるため危険です。

BBQは、加熱する食材と生食用の食材を用意するケースがありますが、これらをごちゃまぜに保存するのではなく、きちんと分けて保管するように心がけましょう。

黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐポイント

黄色ブドウ球菌は、人や動物の傷口(特に化膿しているもの)をはじめ、手指・鼻・のど・耳・皮ふなどに広く生息しています。健康な人の20〜30%が保菌していると言われているのですが、この菌が食中毒の原因となることも少なくありません。

黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐには、以下のような点に注意しましょう。

  • ・食材に触る前、触った後は丁寧に手を洗う
  • ・切傷のある手で食材に触らない(絆創膏をしていてもNGです)
  • ・おにぎりなど、手で持って口に運ぶ食材は、ラップなどで保護し直接手で触らない

黄色ブドウ球菌による食中毒は、切傷のある手で食材に触れ、調理中に菌が増殖して食中毒に発展するというケースが非常に多いです。したがって、手に傷などがある方は、ビニール手袋などで完全に傷を隠すなどの対策を行わなければ、食材に触れない方が良いです。
また、上述しているように、黄色ブドウ球菌は健康な人でも保菌している場合があるため、おにぎりなど手に持って食べる食材については、ラップやビニール手袋などで保護するなど、直接手で食品に触らないようにしましょう。

まとめ

今回は、これから気温が高くなるにつれて危険度が増している食中毒について解説しました。家庭で発生する食中毒に関しては、誤って腐った食材を食べてしまった…なんてことが原因で発症するとイメージしている方が多いかもしれませんね。しかし実は、一般家庭で起きる食中毒は、加熱用の食材と生食用の食材の取り扱いについて、ごちゃまぜにしてしまっているというケースが非常に多いのです。

特に、これから夏に向けては、家族や友人とBBQを楽しむなど、屋外レジャーで飲食をする機会が増えていくと思いますが、こういった機会に食中毒が発生する可能性が高くなるのです。特に、夜間にBBQを行う時には、周囲が暗くなって食材が見えにくくなり、生焼け状態の物を口にしてしまう…、生食用の食材に生肉や魚介類が触れてしまう…なんて状況になりがちです。そして、それらを口にした人が食中毒を発症してしまう訳ですね。

なお、黄色ブドウ球菌を原因とする食中毒は、屋外ではなく家の中のキッチンなどで発生することも多いと言われているので、特に注意しましょう。

参照:厚生労働省「家庭での食中毒予防