日本人にとって非常になじみ深い食べ物に『梅』があります。梅は、田中ぶどう園がある関西地方では、和歌山県の名産として有名で、5〜6月頃に旬を迎えます。ちなみに、田中ぶどう園でも、梅の栽培を行っています。

それでは皆さんに質問ですが、多くの方がそれなりの頻度で食べる「梅」とは、分類上、果物なのでしょうか?それとも野菜に分類されるのでしょうか?梅は、収穫して生のまま食べることはほとんどなく、何らかの加工品として皆さんも口にしているため、「甘くないし果物ではないと思う」という方が多いのではないでしょうか?

そこでこの記事では、日本国内で栽培される植物の中でも、トップクラスの知名度を誇る『梅』について、梅の実は果物、野菜どっちなのかを解説したいと思います。

梅は果物?それとも野菜?

それではまず、梅というものについて、皆さんが口にしているものは、果物なのか野菜なのかを解説してみましょう。皆さんは、過去に梅にまつわる食品を食べていて、「梅は果物と野菜どっち?」ということについて考えてことはあるでしょうか?このコラムにたどり着いた方は、梅が果物か野菜か疑問に感じてネット検索したのでしょうし、今現在考えているかもしれませんね。

それでは、このコラムを読んでいる皆さんは、梅は果物だと思いますか?それとも野菜だと考えますか?この問題をあまり引っ張っても意味がないので、答えをご紹介しますが、『梅は果物!』が正解です。

果物のイメージと言えば、高い糖度を持っていて、口にすると甘さを楽しむことができる食べ物というイメージが強いため、梅を果物ではなく野菜と考えている方がいるのだと思います。ただ、野菜と果物の分類方法については、「甘いかどうか?」で判断しているのではありません。最近では、野菜でも、高い糖度を保有するように品種改良が進められている物も多いですし、収穫したての野菜をそのまま食べると「甘い!」と感じるものは少なくないのです。

それでは、その他のフルーツとは食べ方もかなり違う『梅』が果物に分類されるのはなぜなのでしょうか?次項でその辺りを解説していきます。

梅が果物に分類される理由とは?

前項でご紹介したように、梅は果物に分類されています。ただ、ここで気になるのは、果物と野菜の分類は何をもって行われているのかという問題ですね。一般の方からすると、「高い糖度を持っている=果物」と言った分類をしてしまいがちですが、最もわかりやすい分類方法があります。

ここでは、梅が果物に分類される大きな理由2つをご紹介します。

木に成るから

一つ目の理由は、梅は「実が木に成る」というものです。梅は、収穫されるまでリンゴや柿のように一本の木にたくさんの実をつけます。果物と野菜の分類では、以下のようなルールが基本となります。

  • ・果物・・・木に成るもの
  • ・野菜・・・草に成るもの(草として生えるもの)

これにより、木にたくさんの実をつける梅は果物という分類になるわけです。ちなみに、ほとんどの方が「果物」と認識しているスイカ・イチゴ・メロンについては、正式に言うと野菜に分類されます。また、一般的には野菜と思われているアボカドは、木に成る実なので、野菜ではなく果物と言われています。この分類方法については、農林水産省の公式サイトでも以下のように解説されています。

果樹とは
農林水産省では、園芸作物の生産振興を効果的に推進するため、概ね2年以上栽培する草本植物及び木本植物であって、果実を食用とするものを「果樹」として取り扱っています。
従って、一般的にはくだものとは呼ばれていないと思われる栗や梅などを果樹としている一方で、くだものと呼ばれることのあるメロンやイチゴ、スイカ(いずれも一年生草本植物)などは野菜として取り扱っています。
引用:農林水産省サイトより

梅の実は、木にできるものなので、上述の分類方法にならって「梅=果物」という分類になるのです。果物の中でも、リンゴ、さくらんぼ、桃などは梅と同じルールで果物に分類されています。

バラ科サクラ属に属しているから

梅は、「バラ科サクラ属」に属す植物であることも果物に分類される理由です。実は、りんご・さくらんぼ・梨などの果物も、バラ科に分類される植物ですので、同じバラ科の梅の実も果物であるという考え方になっているわけです。

この理由だけだと、少し弱い…と感じるかもしれませんが、上で紹介した「木に成る」という理由と合わさると、梅の実が果物に分類されるのは納得できるのではないでしょうか。

梅が野菜と思われている理由は?

ここまでの解説で分かるように、梅は、分類上、野菜ではなく果物です。ただ、前項の理由を聞くまでは多くの方が「梅=野菜」と考えていたのではないでしょうか?見た目だけで考えると、十分に果物に見える可愛らしい姿なのですが、ある食品のせいで梅の実は野菜という扱いを受けるケースが多いのだと思います。

その食品とは、皆さんも良くご存知の『梅干し』です。

多くの方は、梅の実の存在は知っているものの、生の梅に触れる機会は少ないと思います。正直な話、生の梅よりも梅干しの姿で目にすることの方が圧倒的に多いはずです。そして、梅干しは、甘い果物とはかけ離れた味で、独特の酸っぱさが特徴の食品になります。また、「ご飯お供」となる漬物に分類されることから、スーパーなどで販売されるときには、フルーツとは全く異なり、野菜や総菜などの近くにある漬物コーナーに置かれていますよね。このことから、「梅=野菜」というイメージが根付いていったのではないでしょうか。

まとめ

今回は、果物か野菜かで意見が分かれてしまう『梅』について、実際にはどちらに分類される食べ物なのかを解説しました。

梅は、多くの方が「梅干し」に加工されたものしか目にしたことがなく、独特の酸っぱさやスーパーなどに置かれているコーナーから「梅=野菜」という認識になっている方が多いです。ただ、記事内でご紹介しているように、梅は木にたくさんの実をつけるという特徴から、果物に分類される食べ物なのです。なお、生の梅については、毒性があるため「生では食べられない」と考えておいた方が良いです。梅は、梅干しなどの加工品や加熱してから食べるのが一般的なのですが、青梅には青酸配糖体と呼ばれる毒性があるため、加工して毒性をなくすのが目的です。ちなみに、スーパーなどで販売されている生の青梅を一粒食べたぐらいでは身体に問題が出るような事はありません。青梅の毒は、ピンポン玉ぐらいの大きさの梅を、成人なら300個、子どもなら100個ほど食べないと深刻な影響は出ないとされているので、基本的には中毒などの心配はないでしょう。ただ、どちらにせよ、生の青梅は強い酸味と渋味・えぐみがありますので、生のままではとても食べられる代物ではありません。完熟すると生でも食べられると言われていますが、熟した梅は日持ちしないので、市場に出回ることがなく、手に入れることが基本的にできないと思います。

梅は、ほとんどの場合、梅干しなどの加工品として食べるのですが、分類上は果物だということは覚えておきましょう。何かの時にトリビアとして話題にしてみてください。

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