皆さんは、果物の名前について疑問に感じたことはあるでしょうか?現在では、当たり前と感じる果物の名前でも、最初は何らかの意味を持って名づけられているはずですよね。

例えば、「梨(なし)」については、「無し」という意味で考えると、果物的にはあまり好ましい名前とは思えません。さらに、「グレープフルーツ」については、柑橘類なのになぜ「ぶどう」を意味する「グレープ」が名前に入っているの…と疑問に感じたことがある人は多いはずです。

当然、さまざまある果物の名前には、それぞれにその名前が付けられた由来というものが存在します。そこでこの記事では、多くの方に人気の果物について「なぜその名前が付けられたのか?」という由来について解説します。ちなみに、どのような物でも同じですが、名前の由来は複数あることが多いです。そのため、下で紹介する名前の由来が確実に正しい情報とは限らないので、その辺りは注意してください。

果物の名前の由来について

それでは、さまざまな果物の名前の由来についてご紹介していきます。ここでは、筆者の独断で果物をピックアップし、その名前の由来をご紹介していきます。

梨の名前の由来について

まずは、さまざまある果物の中でもトップクラスの人気を誇っている「梨」の名前の由来からです。梨という名前については「無し」に聞こえてしまうこともあるため「なんでこんな縁起の悪い名前にしたんだろう?」と疑問に感じる方も少なくないようです。梨の名前の由来については、以下のような説が有力とされています。

  • ・果実の中身が白いことから「なかしろ」と呼ばれ、それが略されて「なし」になった
  • ・風があると果実が実らないことから「風なし」と呼ばれ、略して「なし」になった
  • ・中心の芯に近い部分ほど酸っぱいため「中酸(なかす)」や「な(内部)すみ(酸味)」などと呼ばれるようになり、それが「なす⇒なし」と変化していった
  • ・甘味が非常に強い果物で「あまし」と呼ばれていたが、それが訛って「なし」になった

「梨」の名前の由来は、上記のように諸説あります。ちなみに、古くは「無し」に聞こえるという部分がやはり縁起が悪いとされ、逆の意味で「有りの実」と呼ばれることもあったそうです。平安時代の書物には「有りの実」という名称で登場していたりするほか、農家さんの中には現在でも「有りの実」と呼ぶ方もいるそうです。

グレープフルーツの名前の由来について

次は、スーパーなどで一年中見かけることができる「グレープフルーツ」についてです。冒頭でもご紹介したように、グレープフルーツについては、柑橘類なのになぜ「グレープ(ぶどう)」が名前に入っているのか…と疑問に感じたことがある人も多いのではないでしょうか?グレープフルーツは、酸味や苦みを感じる果物で、強い甘さを感じるぶどうとは似ても似つかない果物という印象が強いと思いますし、何らかの理由で日本特有の名前として使われているのではないかと考えてしまう方も多いはずです。ちなみに、グレープフルーツは、英語圏でも「Grapefruit」という表記なので、日本特有の名前というわけではありません。

それでは、グレープフルーツの由来ですが、この名前は「ぶどうと味が似ているから」という理由ではありません。実は、果実の実る様子が「ぶどうに似ている」という理由でグレープフルーツという名称がつけられたとされているのです。スーパーなどでグレープフルーツを見かける際は、一つ一つの果実に分かれ山積みになって販売されているため、ぶどうのような見た目に実るとは思えない…という方も少なくありません。

しかし、グレープフルーツが木に実る際は、複数個の果実がぶどうのように密集して成長するため、遠くから見ると正にぶどうの房のように見えるのです。日本では、グレープフルーツを栽培する農園が非常に少ないため、木に実っている姿を見かける機会はほとんどありません。そのため、「ぶどうに似ている」という理由はにわかには信じられませんが、これが理由なのです。

バナナの名前の由来について

次は、大衆フルーツの代表と言えるバナナの名前の由来です。バナナは、非常に安価で購入できるうえ、栄養価が高いということもあり、朝食などとして毎日バナナを食べている人も多いです。そのため、日本人にとっては最も身近な果物の一つと言えるでしょう。ただ、現在では「安価な果物」の代表という存在ですが、第二次大戦直後は、GHQにより輸入が制限されていたということもあり、非常に高価な果物だったそうです。バナナが現在の立場を得たのは、1960年代に入ってからで、1963年に輸入の自由化が認められ、フィリピンなどから大量に輸入できるようになったことで「安価な果物」として一気に普及したとされています。

それでは、バナナの名前の由来はどこから来ているのでしょうか?これは、皆さんもイメージしているかもしれませんが、人の手足の指が関係します。バナナの名前の由来は、以下の説が有力です。

  • ・アラビア語で「手足の指」を意味する「banan」が由来となった
  • ・西アフリカの言語で、「(複数の)指」を意味する「banema」が由来となった

バナナの名前の由来は、上記の二つの説が有力です。これが、コンゴ川の河口にある「Banana」という港から英語圏に伝わったことから「バナナ」と呼ばれるようになったとされています。ちなみに、サンスクリッド語の「ベルナ・ブシャ(Veranabusha)」がヨーロッパに伝わる際に「バナナ」と訛って伝わったという説もあるようです。

スイカの名前の由来について

次はスイカの名前の由来です。スイカは、漢字で書くと「西瓜」と記載されるのですが、日本語読みの「スイカ」はこの漢字から来ています。

西瓜の漢字は中国語の「西瓜(シーグァ)」に由来しているのですが、日本語の発音は広東語の「サイクワァ」が訛り「スイカ」に転化していったとされています。なお、スイカの原産は、熱帯アフリカのサバンナ地帯や砂漠地帯で、中国からすると「西方(中央アジア)から伝来した瓜」となり西瓜という名称がつけられたようです。日本に伝来した時期は定かではないものの、室町時代以降に入ってきたとされ、そのまま「西瓜(スイカ)」と呼ばれるようになったのだと思います。

ちなみに、英語圏では「watermelon」と呼ばれており、これはスイカの果肉は水分が90%を占めていることが由来になっているそうです。日本でも、水分が非常に多い瓜として「水瓜」と記載されることもあります。

いちごの名前の由来について

最後は、酸味と甘さのバランスが非常に良く、美味しいのに栄養価も高いと果物の中でも非常に高い人気を誇るいちごの名前の由来です。

「いちご」という名前は、果物の見た目とは何の関係もなさそうというのは皆さんも考えるのではないでしょうか?実は、いちごという名前に関しては、日本古代の大和言葉である「いちびこ」が由来となっていると考えられていて、果実の特徴などからこの言葉が名付けられたのではないかと推定されています。いちごが日本で初めて登場したのは、奈良時代に編纂された歴史書の「日本書紀」とされています。この日本書紀では「いちびこ」という名で登場しています。ただ、その後平安時代に執筆された「和名抄(わみょうしょう)」や「枕草子」では、「いちご」という名で登場するようになっていて、この間に「いちびこ」から「いちご」に転化したと考えられています。

いちごは、漢字で記載すると「苺」となります。草冠に「母」という文字で成り立っています。少し違和感のある漢字のように思えますが、これはいちごが一つの株に次々とたくさんの果実をつけるという特性から、「どんどん子を生み出す」という意味で「母」という文字が使われたのではないかと考えられています。

ちなみに、いちごは英語で「ストロベリー(strawberry)」と呼ばれています。これについて「straw(わら)」と「berry(丸く膨らんだ実)」を組み合わせた言葉とされています。いちごは、栽培する際に、苗の周りに藁を敷き、その上に果実ができるということから「straw(わら)berry(丸く膨らんだ実)」と呼ばれるようになったそうですよ。

まとめ

今回は、さまざまな果物の名前の由来をご紹介しました。果物は美味しいかどうかが重要な問題で、名前の由来なんてどうでも良いと考える方もいるかと思いますが、こういった豆知識は知っておいて損はないと思うので、是非どこかで自慢げに話してみてください。

今回ご紹介しきれなかった果物の名前の由来については、また別の機会にでもご紹介したいと思います。