日本の夏は、年々猛暑化が進んでいると言われています。実際に、一昔前まではなかった「猛暑日」という表現が登場していて、さらに気温の高い日には「熱中症警戒アラート」なるものがテレビなど紹介されるようになっています。小学・中学校に通うお子様がいるご家庭の場合、夏はいつでも水分補給ができるように、登校に際にはお茶を入れた水筒を持たせるようにしているのが当たり前になっています。

それでは、猛暑化が進む日本の夏において、日々の生活の中で熱中症の防止のための水分補給をする際、果物などから水分を摂取するという行為はありなのでしょうか?熱中症対策では、単に水分を補給するだけでなく、汗によって失われるミネラル分も補給しなければならないとされているため、水やお茶を飲むのではなく、さまざまな栄養素が含まれている果物を食べるのが良いのではないかと考える方も多いと思います。

そこでこの記事では、水分補給に役立つのではないかと考えられる多くの水分を含む果物の種類や、それらを水分補給目的で摂取するのはありなのかについて解説します。

水分を多く含む果物ランキング

果物には水分が多く含まれているということは皆さんも理解していると思います。ただ、どれぐらいの水分が含まれているのか、また水分が多い果物がどれなのかはいまいち分からないという方は多いのではないでしょうか?そこでまず、さまざまな果物の中でも、特に水分を多く含む物をランキング形式でご紹介します。

実は、果物の中でも以下のような物が水分を多く含んでいます。

  • 1位 いちご:90%
  • 2位 すいか:89.6%
  • 3位 グレープフルーツ:89%
  • 4位 オレンジ:88.7%
  • 5位 梨:88%
  • 6位 メロン:87.9%
  • 6位 ミカン:87.・9%
  • 8位 リンゴ:84.1%
  • 9位 キウイ:83.2%
  • 10位 バナナ:75.4%

上記は、それぞれの水分含有率順にランキング化しています。果物の大きさは全く違うので、食べた時に摂取できる水分量ではありません。

一般的に、水分を多く含む果物と聞かれると、スイカをイメージする方が多いはずです。しかし実は、水分含有率で見ると、いちごが最も多くなるのです。また、上のランキングを見ていただければ分かりますが、柑橘類は、総じて水分含有量が多い傾向にあります。

なお、果物と同様に、野菜類も多くの水分を含有しています。例えば、非常に身近な野菜であるキュウリに関しては、なんと水分含有率が96%と、ほぼ水と言っていいような食べ物なのです。この他でも、セロリが95.4%、トマトは94.5%、ズッキーニが92.7%と果物以上の水分含有率を誇る野菜は多いです。ただ、野菜に関しては、生のまま食べるのではなく、多くの場合、調理を必要とする点に注意しましょう。実は、調理の過程で野菜の水分は抜けてしまいますので、生食しない野菜から水分を摂取するのは難しいです。

果物で水分補給するのはあり?

上述したように、果物の中には、水分を非常に多く含むものが多いです。一般的に、水分を含んでいなさそうに思えるバナナでも、水分含有率は70%を超えているのです。

こう考えると、夏の熱中症対策として、果物を摂取することで水分補給をするという行為は、正しいのではないかと考える人が多いと思います。果物であれば、水分以外にもさまざまな栄養素を摂取出来ますし、汗と共に失われるミネラル分も摂取しやすいです。

しかし、水分補給を果物でするという行為は、基本的には『NG』だと考えた方が良いです。というのも、果物だけで必要な水分量を補給しようと考えると、相当な量の果物を食べなければいけません。熱中症対策では、小まめに水分を補給しなければならないとされていますので、果物で水分を摂取する場合には、何度も果物を用意して食べる必要があり、現実的には難しいと考えられるでしょう。

さらに、果物には、多くの糖分が含まれているので、水分の補給はできるものの、過剰な糖分を摂取することになってしまいます。甘みの強い果物は、カロリーも多く含まれていますので、水分補給を果物でした場合には、カロリーの過剰摂取にもつながり、太る原因となるでしょう。

果物による水分補給は、さまざまな栄養素が補給できるのではなく、過剰摂取になってしまう危険性の方が高いと考えるべきです。

赤ちゃんや糖尿病を持つ方は特に注意

上述のように、果物を食べることで水分の補給をすることは可能です。ただし、果物は水分を含んでいる以外にも、糖質を多く含む食べ物なので、同時に多くの糖分を摂取することになる点に注意しなければいけません。

熱中症対策を目的とした場合、小まめに水分を補給しなければならないため、大量の果物を摂取することになります。したがって、水分は補給できるものの、同時に多くの糖分を摂取することになるため、血糖値のコントロールをしなければならない糖尿病の方などの場合、糖質の過剰摂取により熱中症とは別の問題が発生する可能性があるのです。

また、赤ちゃんの水分補給を目的に果物を利用するのもNGです。赤ちゃんの場合、果物アレルギーを発症してしまう恐れがありますし、甘味を覚えてしまうことで、ミルクなど他の物を飲まなくなってしまう恐れがあるためです。

こういったことから、熱中症対策としての水分補給は、水やお茶を飲むようにし、ミネラルに関しては塩分タブレットなどで補給するのが良いでしょう。

果物の摂取目標量は、1日当たりおおよそ200〜300g

農林水産省が公表している資料によると、果物の 摂取目標量は、1日当たりおおよそ200〜300gとされています。ちなみに、日本人が一日に摂取している平均の果物摂取量について、目標量には全く満たない状態で、平成28年度に行われた調査では、98.9gだったとされています。果物の好適摂取量についての研究では、特に、 総死亡、心血管・脳血管疾患のリスク低下と強い関連があるとされているため、農林水産省などでは「毎日果物200g運動」という活動を行っており、日々の食事で200g程度の果物を摂取するように推奨しています。

それでは、一日の摂取目標量である200~300gの果物を食べた場合、どれほどの水分量となるのでしょうか?これについて、最も水分含有率が高いイチゴを食べたとしても、180~270cc程度にしかなりません。人間の日常生活を考えた時には、一日当たりの1.5~2リットルの水分が必要になると言われていますし、一日の摂取目標とされる果物をきちんと食べたとしても、全く足りない状態なのです。

また、一日に人が必要とする水分全てを果物で摂取した場合のことも考えてみましょう。上で紹介した果物の水分含有率から考えて、水分を多く含む果物を100g食べたとしても、水分量は70~90㏄程度しかありません。もし、果物から一日に必要な水分を全て摂取しようと考えると、2kg以上の果物を毎日食べなければならない計算になるのです。
この量をリンゴに換算すると、約50個(可食部1個あたり400g)に相当する計算です。上述しているように、果物は、水分を補給するのと同時に、カロリーの摂取にもつながり、50個のリンゴを食べたとすれば、それだけで10,000kcalにもなるのです。一日に必要なエネルギーは、成人男性で2000~2200kcalと言われていますので、明らかにカロリー過多になってしまいますよね。

こういったことからも、熱中症などの対策として、水分補給を考えた時には、水やお茶で水分を補給するのがおすすめなのです。

参照:農林水産省資料より

まとめ

今回は、夏の熱中症対策のため、果物で水分補給をするのはありなのかについて解説しました。

記事内でご紹介しているように、果物の中には、水分含有率が90%近くあるものも多いため、他の栄養素と一緒に水分を補給すると考えると、熱中症対策として考えた場合も、非常に有効な食べ物なのではないかと考えてしまいます。しかし、人が一日に摂取しなければならない水の量は、1.5~2Lと言われていることを考えると、大量の果物を食べなければならないため、果物だけで水分補給をするのは現実的ではないと考えるべきです。例えば、水分含有率が80%を超えるリンゴでも、50個ものリンゴを一日に食べきるのは不可能だと言えるでしょう。また、大量の果物を手に入れるには、コスト的な負担も非常に大きいです。

こういったことを考えると、夏場の水分補給のことを考えた時には、水やお茶をメインとするのが望ましいです。なお、果物には貧血や熱中症予防に効果的な成分がたくさん含まれているのも事実なので、朝食時に果物を摂取することで熱中症を予防するという対策は有効だと思います。

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