今回は、これから旬真っ盛りとなる『梅』について解説します。梅は、野菜なのか果物に分類されるのかいまいち判断ができない…という方も多いと思います。梅は、他の果物とは異なり、そのまま果実を食べるのではなく、梅干しや梅酒、梅シロップなどに加工してから食べる物ですので、フルーツというイメージを持っている方は非常に少ないはずです。ただ、日本国内での野菜と果物の分類方法では、木に実がなる梅は果樹に分類されるため、果物と言っても良いです。

梅干しは、日本人にとってソウルフードと言っても良い食品ですし、ほとんどの方が非常に身近に感じる食べ物なのではないでしょうか?そして、梅干しなど、梅を原料とした食べ物や飲み物は、さまざまな健康効果が期待できる、身体に良い食べ物といイメージが強いと思います。

それでは、私たちの身近にある食べ物の梅は、どのような栄養素が含まれているのでしょうか?この記事では、梅の旬の時期や含まれている栄養素をご紹介します。これからの時期は、スーパーなどでも梅の実が販売されているのを見かける機会が増えると思いますので、農林水産省の公式サイト内で紹介されている梅シロップの作り方もご紹介してみます。

梅の旬と梅干の歴史

梅や桜は、美しい花を咲かせる植物として有名ですね。1月から4月頃にかけて、梅⇒桜という順で美しい花を咲かせることで有名です。ただ、梅と桜の花については、どちらも非常によく似ていて「見分けるのが難しい」という声を聞く機会が多いです。というのも、梅と桜は、どちらもバラ科サクラ属の落葉高木で、梅については果実も同じ名前で呼ばれます。ちなみに、桃や林檎、アンズなども同じ系列の果樹になり、美しい花を咲かせます。

梅のややこしい点は、樹木もそれになる果実も同じように『梅』と呼ばれる点です。ただ、花を愛でる観賞用の樹木と果実を実らせる用の樹木は、きちんと異なる名称がつけられているのです。一般的には聞き馴染みがないと思いますが、観賞用の梅は「花梅(ハナウメ)」といい、果実を実らせる食用の梅は「実梅(ミウメ)」と呼ばれます。(記事内での梅は実梅を指しています)

それでは梅の旬の時期についてもご紹介しましょう。観賞用の花梅については、1~4月頃に美しい花を咲かせることが有名ですが、梅の実の旬は5~7月頃とされています。5月頃からは、徐々に気温があがり、湿度も高くなっていきますが、この時期に旬を迎える梅は、食欲増進効果や疲労回復効果があるとされ、まさに夏バテ防止にはうってつけの食べ物と言えます。

梅干の歴史

日本人にとって梅干しは非常になじみ深い食べ物だと思います。ただ、現在も食べられている赤色の梅干しが開発されたのは、江戸時代に入ってからと言われていて、それ以前の梅干しは現在とはかなり姿が違っていたとされています。

日本への梅の伝来については、諸説あるものの、原産地の中国から飛鳥時代に入ってきたとされる説が有力です。奈良時代に編集された万葉集には、梅の花を題材として読んだ歌も数多くあることから、これ以前には梅が伝来していたのは間違いないでしょう。

そして、現在の梅干しの前身となるものが開発されたのは平安時代の頃だとされています。ただこの時代の梅干しは、梅を塩漬けしただけで、現在のような赤色の姿ではなかったとされています。そのため、この時代の梅干しは「白梅干し」などと呼ばれています。平安時代以降の梅干しは、薬として用いられていたとされていて、特に室町や戦国時代には士気や食欲の増強に一役買っていたとされます。

これが江戸時代に入り、赤しそと一緒に梅をつける現在の梅干しの姿が開発されます。赤しそが加えられるのは、風味が良くなるというのも理由の一つですが、殺菌効果が向上すると考えられていたそうです。そして、この時代の梅干しが現在の姿につながっています。

梅に含まれる栄養素と期待できる健康効果

梅干しは、平安時代には開発されていたなど、1000年以上もの歴史を持つまさに日本のソールフードと呼べる食品です。皆さんも、子供のころに「梅干しは身体に良い」という話を聞かされたことがあるのではないでしょうか?

それでは、普段何気なく口にしている梅干しですが、これにはどのような栄養素が含まれているのでしょうか?ここでは、文部科学省が公表している食品成分データベースより、塩漬けの梅干し100g当たりの主な栄養成分をご紹介します。

  • ・エネルギー:29kcal
  • ・タンパク質:0.9g
  • ・脂質:0.7g
  • ・炭水化物:8.6g
  • ・ナトリウム:7200mg
  • ・カリウム:220mg
  • ・カルシウム:33mg
  • ・マグネシウム:17mg
  • ・鉄:1.1mg
  • ・ビタミンE:2.1mg
  • ・ビタミンB1:0.02mg
  • ・ビタミンB2:0.01mg

引用:食品成分データベース

梅干しには上記のように豊富な栄養素が含まれています。

梅干の健康効果

それでは、梅干しを食べることで期待できる健康効果もご紹介します。昔から梅干しは身体に良いと言われていますが、どのような健康効果が期待できるのでしょうか?

  • 食欲増進効果
    梅干しは、食欲増進効果が有名です。これは酸味成分であるクエン酸の効果で、唾液の分泌を促進し、胃液をはじめとする消化酵素の働きを活発にすることで食欲を増進させるとされています。夏バテ防止に梅干しが良いとされるのは、食欲不振を防ぐことができるからです。
  • 疲労回復効果
    梅には、クエン酸やリンゴ酸と言った有機酸が含まれています。これらの成分は、体内で糖質などの代謝を促して効率的にエネルギーへ変換してくれます。エネルギー代謝が向上すると、疲労回復効果が得られるとされます。また、肩こりや腰痛などの症状緩和も期待できるとされます。
  • 血流改善効果
    梅を加熱すると、ムメフラールという成分ができます。この成分は、血液中に血栓ができることを防ぎ、動脈硬化の予防に役立つなど、血流の改善効果が期待できます。血流の改善は、老廃物の排出にも役立ちますので、この点からも疲労回復効果が期待できます。
  • 殺菌除菌効果
    梅干しは、殺菌除菌効果があると考えられています。昔から、お弁当やおにぎりには梅干しが当たり前のように使われていますが、これは梅干しが持つ殺菌・除菌効果を期待してのことだと思います。殺菌・除菌効果については、食べたら意味ないのではないかと感じますが、体内でも食中毒菌の増殖を抑制するといった効果を期待されています。

梅干しは、上記のような健康効果が期待されています。梅は、カリウムや鉄、ビタミンなどを多く含む食品ですので、さまざまな健康効果が期待できるのはうなずけます。

簡単に作れる梅酒と梅ジュースの作り方

それでは最後に、農林水産省の公式サイトで紹介されている梅酒と梅ジュースの作り方をご紹介します。

梅酒の作り方

まずは梅酒の作り方です。梅酒は非常の飲みやすいお酒として有名で、好んで梅酒を飲んでいる方は多いと思います。そして実は、梅酒は誰でも簡単に作ることができるので、この時期に梅酒を自宅で仕込むという方は非常に多いです。

自宅で梅酒を作りたい場合、まずは「青梅1kg、氷砂糖700g、ホワイトリカー(焼酎)1.8L」を用意しましょう。そして、以下の手順で梅酒を作ることができます。

  • STEP1 青梅をよく洗い、2時間ほど水にさらす。
  • STEP2 梅の水気を布巾でふき取り、竹串を使ってヘタをとる。
  • STEP3 熱湯消毒した広口瓶に梅→氷砂糖→梅と交互に入れ、最後にホワイトリカーを注ぎ入れる。
  • STEP4 しっかりと蓋をして、冷暗所で保存する。(3か月ほどで飲めるようになります)

梅ジュースの作り方

次は梅ジュースの作り方です。梅酒よりもかなり早く仕上がりますので、夏場にお子様に飲ませるジュースとして用意しておくのもおすすめです。梅ジュースを作る際には、材料として「青梅1kg、氷砂糖800g」を用意しましょう。

そして以下の手順で梅ジュースを仕込みます。

  • STEP1 青梅をよく洗い、2時間ほど水にさらす。
  • STEP2 梅の水気を布巾でふき取り、竹串を使ってヘタをとる。
  • STEP3 袋に入れて冷凍庫で一晩凍らせる。
  • STEP4 煮沸消毒した保存瓶に梅、氷砂糖を交互に入れ常温で保存。

梅ジュースは、1週間ほど常温で保存しておけば飲めるようになります。梅のシロップを炭酸水や水でお好みの濃さに割って飲めば美味しい梅ジュースになります。

参照:農林水産省公式サイト

まとめ

今回は、まさにこれからが旬の梅について解説しました。梅は、他のフルーツとは異なり、生のままその果実を口にすることはありません。ただ、梅干しや梅ジュース、梅酒など、誰でも簡単に自宅で加工できる食材として非常に人気が高いです。梅を利用する加工品は、最初にちょっと手間をかけるだけで、後は放っておくだけで美味しいジュースやお酒が出来上がりますので、皆さんにもぜひ作ってみてほしいです。

これから梅雨に向かっては、スーパーなどで梅酒を作るための製造キットのような物が販売されるはずですので、是非作ってみてはいかがでしょうか!