今回は、私たちに日常生活にも非常になじみ深い食べ物であるトマトの豆知識を解説します。記事タイトルにあるように、トマトについては「野菜なのか果物なのか?」といった議論が長らく行われていますよね。結論から言ってしまいますが、日本国内でのトマトの扱いについては、「野菜」に分類されています。最近では、フルーツトマトなるものが栽培されるようになっていますので、果物に分類されても良いような気もしますが、そもそも日本国内での野菜と果物の分類方法は、味や糖度で行われているわけではないため、フルーツのように甘いトマトであっても、野菜には違いないのです。

そして、このトマトという食べ物に関しては、日本以外の海外での取り扱いも非常に複雑です。特に、アメリカでのトマトの扱いは、日本では考えられないような面白い話もありますので、この記事でご紹介します。実は、アメリカでは、トマトが野菜か果物かで裁判が行われたことがある、トマトソースがたくさん使われたピザは野菜に分類するという法律が作られているなど、ちょっと信じられないような扱いを受けています。意外に面白そうな話なので、ぜひ最後までご参照ください。

日本におけるトマトの扱いについて

それではまず、日本国内におけるトマトの分類について簡単にまとめてみます。日本国内における果物と野菜の分類については、以前「野菜と果物の違いとは?野菜と果物を分類するためのポイントについて解説します!」という記事の中でご紹介していますので、詳細はこちらの記事で確認してください。

トマトについては、その見た目からも果物に分類されるのではないかと考える方がいますが、冒頭でご紹介したように、日本国内の分類方法(農林水産省や総務省による)では野菜にあたります。
野菜生産出荷安定法では、消費量が多い野菜や多くなることが見込まれる野菜を指定野菜としています。指定野菜は、野菜の値段を安定させて、みんながいつでも野菜を食べられるようするという目的で指定されているのですが、指定野菜は以下の14品目が指定されています。

指定野菜は、
キャベツ、きゅうり、さといも、だいこん、トマト、なす、にんじん、ねぎ、はくさい、ピーマン、レタス、たまねぎ、ジャガイモ、ほうれんそうの14品目です。
引用:農林水産省公式サイトより

これからも分かるように、農林水産省では、トマトを野菜と看做しています。さらに、総務省の日本標準商品分類の野菜区分にもトマトが含まれていて、日本国内では「トマトは野菜」というのが公式な認識と言っても過言ではないでしょう。

果物と野菜の分類方法について

果物と野菜の分類については、はっきりとした定義があるわけではありませんが、以下に、日本国内における野菜と果物の分類に関する基本をご紹介します。食べる分には「美味しいか?」どうかの問題ですので、分類方法など知らなくても構わないとは思いますが、知っておいて損はないので、以下の内容は覚えておいても良いと思います。

農林水産省の果物と野菜の分類に関する見解

以前、別の記事で紹介した際も記載していますが、果物か野菜かの分類について、明確な定義のような物を農林水産省が作っているわけではありません。一般的に、以下のような特性を持つ植物を日本では野菜と分類しているようです。

  • ①田畑で栽培される植物(山野でとれるものは「山菜」)
  • ②副食物である(要は、ごはんのおかずになるもの)
  • ③加工を前提としていない(こんにゃくなどは加工が前提なので野菜ではない)
  • ④草本性であること(木になるものは野菜ではない)

基本的には、上記の特性を持つ植物は野菜に分類されます。ただ、市場で販売される場合には、この法則が完全に守られているわけではありません。例えば、スイカやイチゴなどは、市場でも購入する顧客も「果物」として取引しているはずです。しかし、上述した定義によると、どちらも果物ではなく野菜に分類されるものなのです。

野菜と果物の違い

「野菜」というものは、一般的に食用となる植物の総称で、苗を植えてから1年で収穫できる草本植物を指しています。

一方、果物と呼ばれるものの定義は、以下の2つの条件を満たしている必要があるとされています。

  • ①2年以上栽培する草本植物および木本植物
  • ②果実を食べるもの

トマトは、②の「果実を食べる」という点は満たしていますが、1年で収穫できる植物ですので、果物の条件となる「2年以上栽培する草本植物」をクリアできていないわけです。

この分類方法を使うと、一年で収穫できる草本植物であるメロンやイチゴ、スイカは野菜、一般的には果物と考えられていない栗や梅は2年以上栽培する木本植物の果実であることから果物になります。
果物と野菜の違いからも分かるように、トマトはやはり野菜に分類されるわけですね。

諸外国でのトマトの分類について

ここまでの解説で分かるように、日本国内では「トマトは野菜」という分類が公式見解と言っても良いでしょう。ただ、トマトがややこしい存在なのは、国によってその扱いが変わる点です。実は、日本では野菜とみなされているトマトですが、以下のように果物と分類している国もあるのです。

  • ・アメリカ:野菜
  • ・中国:大きいトマトは野菜、ミニトマトは果物
  • ・台湾:果物
  • ・フランス:果物
  • ・イギリス:果物

このように、トマトを果物に分類している国は意外に多いです。近年、日本人の旅行先としても人気の台湾などでは、イチゴ飴やりんご飴のように、トマトを飴でコーティングしたトマト飴がお菓子として屋台などで販売されているようです。

アメリカでは「果物か野菜か?」で裁判になったことも

トマトが果物か野菜かという問題については、過去にアメリカで裁判にまで発展したという事例もあるようです。19世紀ですので、かなり古い話なのですが、アメリカではニックス・ヘデン裁判と呼ばれる「トマトが野菜か果物か?」をめぐる裁判が行われています。

この裁判は、国産野菜の保護を目的に、輸入関税法を改正して輸入野菜の関税を引き上げようとしたのがきっかけと言われています。この裁判の内容については、トマトの輸入業者であるジョン・ニックスに対して、ニューヨーク港で税金の徴収を行っていたエドワード・L・ヘイデンが、トマトを野菜とみなして関税を課したことがスタートだそうです。ひとまず、税金の支払いには応じたものの、ジョン・ニックスは、植物学的にトマトは果物であるという主張を行い、税金を課すべきではないと訴えたわけです。

この裁判の詳細は省きますが、最高裁までトマトが野菜か果物かで争われましたが、結果的に「トマトは野菜畑で育てられデザートにはならない」という理由から、トマトは野菜に分類するという判決が下ったそうです。この裁判があったことから、アメリカでは「トマトは野菜」という分類になっているわけです。

驚きの事実!アメリカではピザも野菜

この情報は、日本人からすると俄かには信じられない…と感じてしまいますよね。しかし、アメリカ合衆国では、「ピザに大さじ2杯(30ml)のトマトペーストを加えた食品は野菜」と認定されているのです。ちなみに、「ピザは野菜」という分類については、遠い昔の話ではなく、2011年に制定された法律で決められ、現在もこの認識が通っています。

これは、アメリカ人の肥満対策を行う際にピザチェーンなどの抵抗によりできた分類方法のようです。

日本では考えられませんが、アメリカの学校給食では、冷凍食品やピザ、ハンバーガーなどを子供たちに提供するのが一般的です。しかし、若いころからジャンクフードばかりを食べている弊害か、2008年に行われた統計では、アメリカ中の子どもの内、約1/3が肥満に分類されてしまったのです。この当時のアメリカはオバマ政権下であったのですが、当時のアメリカ大統領夫人であるミシェル・オバマ氏が、この肥満率の高さに危機感を持ち、健康食推奨の活動を行い始めたそうです。

しかし、ピザチェーンなどのジャンクフード業界からの抵抗があり、「トマトペーストをふんだんに使用したピザは野菜である」という主張がなされたそうです。正直、日本人からすると、無茶苦茶な論争のように思えますが、このジャンクフード側の主張が認められ、2011年に大さじ2杯のトマトペーストを塗布したピザは「野菜」として分類されることが継続されることとなったそうです。

この動きの詳細については、Wikipedia内にあったので、以下にそのページのリンクを置いておきます。

参考:Wikipedia「ピザは野菜」

まとめ

今回は、私たちの食卓を豊かにしてくれるトマトについて、トマトは果物か野菜なのかについて解説しました。

記事内でご紹介したように、日本国内の分類でいえば、トマトは野菜に分類されています。ちなみに、近年ではフルーツトマトという呼称で販売されているトマトもありますが、これも果物ではなく野菜です。そもそも「フルーツトマト」は、品種名なのではなく、特別な栽培方法で高い糖度を誇るものをそう呼んでいるだけなのです。一般的に、糖度が8度以上あるものをフルーツトマトと呼んでいるようですが、糖度の基準などについても明確な定義もありません。

果物か野菜かという分類について、糖度の高さは全く関係がないため、フルーツトマトも上で紹介した日本国内の定義では野菜になるわけですね。ただ、日本以外の諸外国では、トマトを果物として扱っている国も多いです。