今回は、以前ご紹介した「家庭菜園初心者の方におすすめ!プランターでも簡単に育てられる野菜をご紹介します」という記事の続編として、ベランダ菜園でプランターを使って栽培できる育てやすい果物の種類をご紹介します。

野菜と果物の違いについて、以前ご紹介しましたが、日本では「木に実る果実」のことを果物としています。分かりやすい例をあげると、リンゴや柿、ミカンなど、樹木にたくさんの果実が育つものが果物で、それ以外は野菜という分類がされています。そのため、ほとんどの方が野菜と判断するアボガドは果物、その逆にフルーツのイメージが強いいちごが野菜という分類になるなど、なかなか判断に困る分類方法をされているのです。

こう聞くと、樹木になるものが果物なら、「プランターではさすがに栽培できないのでは?」と感じてしまいますよね。しかし、ベランダ菜園が人気になっている現在では、プランターのサイズもさまざまな物が登場しており、自宅で果物を育てている方は少ないないのです。そこでこの記事では、ベランダ菜園でも、比較的育てやすい果物の種類について解説します。

参照:農水省「果樹とは」

果物をプランターで育てるメリットとは?

果物は、大きな木を植えられる庭がないと育てられないと考えている方が多いです。また、プランターなど、限られたスペースで育てられる果物は「美味しく成長しないのでは…」という不安を感じる方も多いかもしれません。

しかし実は、ベランダ菜園のノウハウが蓄積されてきた現在では、果物の育成についてもプランターで育てるメリットがたくさんあると言われるようになっています。ここでは、プランターを使った果物栽培のメリットを簡単にご紹介します。

①コンパクトに育てられる

果樹は、根が広がれば広がるほど、木が大きく成長するものです。もちろん、限界はあるものの、庭植えで育てた場合、根が広範囲に広がりますので、木も成長して放っておく20m近くまで伸びてしまうこともあると言われています。木が大きく育てば、たくさん果実が付くのでしょうが、成長しすぎると実の収穫が大変ですし、近隣に迷惑をかけないように剪定作業なども行わなければならず、素人ではかなり大変な思いをします。

これが、プランターで栽培する場合、土の量に限界がありますので、根の生育がおさえられ、必要以上に木が高くならないのです。したがって、プランター栽培の場合、コンパクトな果樹を育てることができるようになり、剪定や収穫が楽になるというメリットが得られます。

②移動が可能

これは、プランターを使ったベランダ菜園の大きなメリットです。。当然ですが、庭植えで植物を生育する際には、地面に根を張りますので、一度植えるとその場から移動させることは基本的にできません。そのため、果樹を植える時には、自分が食べたい、育てたいと考えている種類を自由に選べるわけではなく、地域の気候に合わせて育てるものを決める必要があるのです。例えば、冬場の寒さが厳しくなる地域であれば、耐寒性の低い果樹は枯れてしまうため、耐寒性の高い物を育てるしかありません。

これがプランター栽培の場合、鉢の中に根が収まるので、その日の天候や気温に合わせて、鉢ごと移動させることができるようになります。寒さが苦手な果樹を育てる時には、冬の間は部屋の中で育てるなど、自分が育てたいと考えるものを中心に選べるようになります。

③実がつくのが早い

プランターで果物を育てる最大のメリットがこれです。果樹の成長は、まず「木の成長」のために優先的に栄養を使い、その後、実をつけるために栄養を使うという順番となります。そのため、庭植えの果樹の場合、根の生育に制限がないため、ある程度、木が成長するために栄養が使われることになり、収穫までに時間がかかるのです。

一方、プランターで栽培した時には、根の生育に限界があります。そのため、木の成長にも限界が存在して、木の生育に栄養が回らなくなるまでが早くなり、実に栄養が回るようになります。このサイクルの違いから、庭植えとプランター栽培を比較すると、1~3年ほどプランター栽培の方が実の収穫が早くなると言われています。

プランターでも育てやすい果物

それではここから、ベランダ菜園にてプランターでも育てやすい果物の種類についていくつかご紹介します。もちろん、生き物の生育ですので、誰が育てても美味しい実をつけるとは言いませんが、きちんと注意深く育てれば比較的容易に美味しい果実が収穫できる物を以下でご紹介します。

いちご

プランターでも育てられる果物と聞くと、ほとんどの方は「いちご」を真っ先に思い浮かべると思います。実際に、いちごは、標準サイズのプランターを使って育てることができるため、ベランダ菜園で育てる果物の中でも、トップクラスの人気を誇っています。ただ、農林水産省の分類方法で考えると、いちごは「野菜」に分類されます。(ここでは果物として紹介します)

いちごは、十月から十一月と気温が下がり始めるころが植え付けの時期となりますので、苗を植え付けたら敷き藁などで保温しておくのがおすすめです。また、いちごの実を楽しみにしている方は、肥料が非常に重要なポイントになります。いちごを育てる時には、植え付け後、1カ月を目安に緩効性の肥料を与えて、収穫が終わるまで続けましょう。また、冬場に花をつけるのですが、それをそのままにしておくと、実の数が少なくなってしまうので、冬場は小まめに花を取り除いてあげましょう。そうすることで、春に多くの実を楽しむことができます。

ベランダ菜園での失敗の多くは、水に関するものなのですが、いちごを育てる際も水やりは注意しましょう。いちごは、水や肥料のやりすぎで生育が遅くなります。特に、冬場に水を与えすぎるのを注意してください。冬場は、外葉が枯れることがあるのですが、これを見て「水が足りないのかな」と焦って水を与える方がいるのですが、中心が生きていれば春になるときちんと成長するので、必要以上に水は与えないでください。ちなみに、いちごは病害虫が付きやすい植物で、ハダニが発生するケースが多いです。この場合、葉に水を与えてハダニの駆除を行ってください。駆除が遅れて被害が大きくなっていた場合は、ハダニがついている葉を取り除きましょう。

レモン

さわやかな香りと酸味で、料理やお菓子、ジュースなどにも使われるレモンは、ベランダでプランターを使って育てることができます。

レモンは、その他の果樹と比較しても、木の生命力が非常に強く丈夫なため、家庭菜園初心者で植物の世話に慣れていない方でも、失敗せずに育てられる可能性が高いです。レモンを育てる時のポイントは、日当たりを良くしてあげるという点で、これがプランター栽培に向いている理由でもあります。レモンは、日当たりの良い場所に置くことで良く育つので、鉢ごと日当たりの良い場所に移動させてあげることで、良く育ちます。その逆に、極端な寒さには弱く、外気温が-3℃以下になると枯れてしまう危険が高くなります。したがって、気温が極端に下がる日は、屋内に避難させることができるプランター栽培が安心な訳です。

水やりに関しては、土の表面が乾燥したら、鉢底から水が流れ出るほど、しっかりと水を与えるのがポイントです。水が不足すると葉が落ちてしまいますので、小まめに土の状態を見て、水やりをしましょう。害虫対策については、青虫が付きやすい植物なので、葉に卵がついていないか確認し、卵があればすぐに取り除きましょう。レモンの葉に青虫が付くと、すべて食べられてしまう恐れがありますので、殺虫剤などで駆除しましょう。
害虫対策としては、適度に剪定を行って、枝の間の風通しを良くしておくと良いでしょう。そうすることで、病害虫の予防だけでなく、葉同士が傷つけあい病気になるのも防ぐことができます。

ぶどう・キウイなどのツル性果樹

ぶどうやキウイフルーツなど、ツル性果樹は、広い面積が必要で、庭植えでしか育てられないと考えている方が多いです。しかし実は、ぶどうやキウイフルーツも、ベランダ菜園でプランター栽培を行うことが可能なのです。さらに、庭植えであれば広大な面積が必要な果物なのに、鉢植えで育てれば、かなりコンパクトに育てることができるという点もメリットです。

なお、ツル性果樹をプランターで育てる場合、大きめのプランターを用意し、ツルを巻き付ける支柱などを用意してあげる必要がありますので、その点は注意しましょう。ちなみに、キウイフルーツの場合、二年程度はまっすぐに成長させ、その後支柱を用意して支柱につるを巻き付けていくといった感じで育てます。実が収穫できるまで、それなりの時間が必要ですが、上手に育てることができれば、プランター栽培でも10個程度の果実を収穫することができます。

ラズベリー

ジャムなどに使用されるラズベリーは、庭植えで育てるのではなく、プランター栽培がおすすめされる植物です。ラズベリーは、地下茎という地中に茎をのばす果樹なので、庭植えで育てていると、いつの間にか地下茎がいろいろなところに伸びてしまい、手が付けられないほど繁殖しすぎてしまう…なんてことになる場合があります。これが、プランターで育てることで、根の行き場に限界が生じますので、必要以上の繁殖を抑えることができるわけです。

また、ラズベリーは、虫がつきにくい植物なので、安心してベランダ菜園を楽しむことができます。さらに、水はけに注意しておけば、土の性質なども特にこだわる必要がないなど、家庭菜園初心者の方にとってうれしポイントが非常に多いのです。注意が必要なのは、ある程度実が熟してきたら、カラスなどの鳥に狙われる可能性がある点です。ベランダでラズベリーを育てる時には、防鳥ネットなどはきちんと用意しましょう。

いちじく

いちじくは、庭植えで育てる果樹と言うイメージが非常に強いと思います。いちじくは生命力が強く、剪定しても果実をつけてくれることから、庭植えであればそこまで手をかけなくても、果実を収穫できる植物として人気なのだと思います。ただ、いちじくの生命力は、ベランダなどでプランター栽培を行う時にも役立ちます。特に、剪定しても果実をつけてくれるというポイントは、スペースに限界のあるベランダ菜園では、非常にありがたい特徴になるはずです。

いちじくを育てる際の注意点としては、出来るだけ日当たりの良い場所が好ましい点です。ただ、真夏の強い直射日光は苦手とする果樹なので、日陰に移動できるような場所か、日よけを用意できる場所で育てましょう。その他には、しっかりと水やりをすることが大切な植物で、特にプランター栽培の場合、土の量の問題から水が足らなくなることが多い為、しっかりと水を与えてください。

なお、美味しいいちじくを収穫するためには、適度に間引きする必要があります。特に、1年目のいちじくは、木を大きく成長させるため、全ての実を間引きしなければいけません。

果物をプランターで育てる際の注意点について

それでは最後に、ベランダ菜園で果物をプランターで育てる際の注意点について解説します。プランターで果物を育てる時には、以下のような点に注意しましょう。

水やりについて

プランターで果樹を育てる場合、小まめな水やりが大切です。フルーツは、多くの水分を含んでいるように、果樹を育てる時には、水が必要不可欠なのです。水やりを忘れて、水分がなくなってしまうと、木や枝葉がしおれてしまい、実の付きが悪くなってしまいます。

庭植えで果樹を育てる場合には、雨が降ることで地面が水分を保持しているため、水やりは基本的に不要です。例えば、真夏に2週間ほど雨が降らなかったなんて時には、水やりが必要ですが、この程度の間隔でも構わないのです。
しかし、プランターで栽培する場合には、土の量が少なく鉢の底から水が抜けていくことから、水分が乾きやすくなってしまいます。そのため、小まめに水やりを行わないと、水分不足に陥ってしまう訳です。水やりの頻度は、育てる果樹によって異なりますが、基本的に「夏場は1日1回」「冬場は1週間程度に1回」を水やりの最低限の頻度と考えておきましょう。

植え替えが必要

プランターで果樹を育てる場合、木の成長に合わせて植え替えが必要という点に注意しましょう。プランターで果樹を育てている場合、プランター中に根が回ることで、吸収できる養分がなくなる所謂「根詰まり」という現象が起こります。根詰まりを起こしてしまうと、木に養分が行かなくなりますので、最悪の場合、果樹そのものが枯れてしまう恐れがあるのです。

したがって、果樹が根詰まりを起こさないように、木の成長に合わせて大き目の鉢に植え替えていくという作業が必要です。庭植えの場合、この作業は不要なので、プランター栽培特有の手間となるので注意しましょう。

庭植えと比較すると収穫できる実が少なくなる

果樹と言うものは、植えてから徐々に成長し、大きく成長するほど、多くの実をつける傾向にあります。そのため、庭植えで育てていれば、どんどん木が成長していき、その分、多くの果実を収穫することが可能です。

しかし、プランター栽培の場合、コンパクトに育てることができる反面、木が大きく成長しないことから収穫できる実の数はどうしても少なくなってしまう訳です。なお、多くの実を収穫したい場合は、木を大きく育てる必要があるため、植え替えの際に、大きなプランターを選ぶのがおすすめです。

まとめ

今回は、ベランダ菜園を始める方が増えている中で、比較的育てるのが簡単な果物をご紹介しました。もちろん、どのような植物でも、植えれば勝手に育つなんてことはなく、小まめに水を与えたり肥料をあげる、虫よけをするなど、きちんと世話をしてあげる必要があります。ベランダ菜園の楽しさは、こういった作業ののちに、美味しい果実が収穫できることですので、まずは世話を楽しむという心持でベランダ菜園を始めてみると良いでしょう。

果物は、広い庭がないと育てられないと考えている方も多いのですが、日本人にも人気の果物はプランターで育てられるものも多いです。野菜よりは収穫まで時間がかかりますが、その分楽しめる期間も長くなると考え、スタートしてみてはいかがでしょう?