近年では、都会で生活している方が地方に移住し農業を始めるというケースが増えていると言われています。東京一極集中という言葉が作られているように、大都市圏に人が集中し、地方都市の人口減少が社会問題となっている昨今では、自治体が積極的に移住者を求めるようになっており、移住に際してかなり手厚い補助制度を設けている場合が増えています。

そして、地方に移住する際には、大きな畑がついた家屋が格安で手に入れられるような時代になっており、若いうちに地方に移住して農業を始めたいな…と考える人が増えていると言われているのです。ただ、最初に言っておきますが、農業は皆さんが考えている以上に過酷なお仕事ですので、実際に移住して農業を始めてみたいと考えている方は、本当にその選択で良いのかは慎重に検討するようにしてください。

もちろん、農業は人が生きていく上で欠かすことができない仕事であることは間違いありませんし、やりがいがあることは確かです。そこでこの記事では、「農業に挑戦してみたい!」と考えている方に向け、事前準備として取得がおすすめできる農業に役立つかもしれない資格をご紹介します。

作物・資材の運搬に役立つ資格

農業では、重量のある荷物を運搬する機会が非常に多いです。例えば、植物に与える肥料を運んだり、収穫後の作物を倉庫まで運ぶなどです。このような場合、運搬のために役立つ資格・免許がたくさんあるので、可能であれば取得しておくと良いでしょう。

普通自動車免許

これは、農業に限らず、どのような仕事でも、採用条件に取得していることが推奨されますので、多くの方は持っていると思います。農業に関しては、作物や資材、人の移動に欠かすことができないのが自動車ですので、普通自動車免許は取得しておいた方が良いでしょう。ちなみに、土を耕したり種を蒔いたりするトラクターは、普通自動車免許で運転できますので、この点からも取得が推奨できます。

ちなみに、一般的には「AT(オートマ免許)」で良いとされているのですが、農業の現場ではミッション車が多いため、MTで免許を取得するのが良いかもしれません。

大型特殊免許

実は、農業の現場では、大型特殊免許が非常に役に立ちます。大型特殊免許を所持していれば、クレーン車やトラクター、コンバインなど、大型の特殊車両を運転することが可能です。農業の規模によっては不要になるのですが、余裕があれば取得しておいて損はないでしょう。ちなみに、大型特殊免許には教育訓練給付金制度という制度があるので利用するのも良いかもしれません。

けん引免許

けん引免許は、750キログラムを超える他の車をけん引した状態で、自動車が公道を走る際に必要な免許です。一般の方はほとんど必要としませんが、農業界では、コンバインやトレーラーをけん引して離れた農地に運ぶ…なんてことも珍しくないため、所持していると非常に便利な場合があります。
なお、けん引免許にもいくつかの種類がありますので、働く環境や使う車両のことを考えながら、どれが必要かを検討すると良いでしょう。

フォークリフトの運転

農業のお仕事では、フォークリフトが非常に役立ちます。したがって、フォークリフトの運転免許を取得していれば有利に働くといっても良いと思います。ちなみに、フォークリフトは、以下のように2種類の免許が存在します。

  • ・フォークリフト運転特別教育:荷重1トン未満のフォークリフトの運転が可能
  • ・フォークリフト運転技能講習:荷重1トン以上のフォークリフトの運転が可能

農業であれば、基本的には荷重1トン未満のもので問題ないと思いますが、働く環境や目的に合わせて必要であると考えられる方を取得すると良いでしょう。ちなみに、公道をフォークリフトで走る場合には、上記の免許の他に特殊免許が必要になります。

農業の実務で役立つかもしれない資格

それでは次は、実際に農作業を行う時に役に立つかもしれない資格をいくつかご紹介します。大きな農園に就職したいと考える場合などにも役立つかもしれないので、興味がある方は取得してみてはいかがでしょう。

日本農業検定

日本農業検定は、以下のような目的で行われています。

この検定を通して多くの人が農業への理解を深め、将来農業に関わる様々な担い手へと成長してくれることを期待するとともに、多くの方が食の安全や安心について高い関心と必要な知識を持った「良き農業の理解者・応援団」になっていただきたい
引用:公式サイトより

この検定は、農業の知識が全くない方や、農業に対して関心を持っている方が基礎知識を学びたい、仕事や趣味などで農業の知識を必要とする方など、幅広い層に向けた比較的易しい資格となっています。農業に関する幅広い知識を、基礎から体系的に学ぶことができるとされていて、初心者向けの検定である事から、これから新たに就農を考えている方には最適だと思います。

農業技術検定

農業技術検定は、上述した日本農業検定よりもより専門的な知識を学ぶことができる検定です。農業学校などに通う学生さんや、農業に従事したいと考えている方に向けたものですので、より高度な専門知識を学ぶことが可能です。
検定の目的も、農業界の人材育成や人材の確保とされていることから、取得する級によっては、実技試験なども実施されます。

> 農業技術検定

危険物取扱者

危険物取扱者は国家資格として有名ですが、農業との関連性などないのではないか…と感じる方が多いと思います。しかし実は、農業では消防法で「危険物」という扱いを受けるガソリンや灯油などを取り扱う機会が多いため、非常に重宝される資格の一つとなるのです。
さらに、ハウス栽培を行う場合は、ボイラー施設の取り扱いに欠かせない資格となりますので、栽培する物によっては取得を検討すると良いでしょう。ちなみに、ハウス栽培の温度管理ではボイラー施設を用いることになります。このような施設では、ボイラー技士の資格を取得することで、ボイラーの操作や点検が可能になります。

> ボイラー技士

農業機械士

農業では、効率的に作業を行えるようにするため、さまざまな機械が使用されています。ただ、非常に残念な事に、機械を使った農作業では毎年多くの死傷者が出ているのが実情です。そこで、農業に使用される機械の安全な操作方法や点検・メンテナンスに関する知識を学ぶために作られたのが農業機械士という資格なのです。
農業機械士は、都道府県知事の認定資格となります。

農薬管理指導士

名称から分かるように、農薬に関わる資格です。この資格は、農薬の適正な使用や管理を指導するためのもので、農業従事者に対して農薬の正しい使用方法や安全管理について指導することができます。農薬に関する知識を得ることができますので、規模などに関わらず農業の現場で役に立つことは間違いないでしょう。
なお、農薬管理指導士は各都道府県の農業関係機関や農薬協会が主催する講習会などで取得可能とされていますが、受験資格や試験内容が地域ごとに異なる可能性があるので注意しましょう。

毒物劇物取扱責任者

農業で取り扱う農薬の一部は、人にとって毒物や劇物となり得るものもあります。つまり、農業で農薬を扱うにあたっては、劇物や毒物と関わると言っても過言ではないのです。
そこで役立つ資格が毒物劇物取扱責任者で、劇物などに指定される農薬などについて、正しく安全に使うための知識を養うことができます。

その他、農業に役立つ資格について

上記以外にも、農業に役立つ資格はたくさん存在します。以下にいくつかまとめてみますので、将来的に農業に従事したいと考えている方がいれば、取得を検討してみてはいかがでしょう。

  • ・土壌医検士
  • ・水田環境鑑定士
  • ・農業簿記検定
  • ・農業経営アドバイザー
  • ・有機JAS認定検査員
  • ・JGAP指導員
  • ・産業用マルチローター技能認定

上記のような資格は、農業に役立つ可能性があります。なお、産業用マルチローター技能認定については、農業と全く関係がなさそうに思えますが、これは簡単に言うと、ドローンの運転免許のような物です。ドローンを用いて農薬の散布を行いたいと考える場合には、「産業用マルチローター技能認定」を受ける必要があります。

まとめ

今回は、将来的に地方に移住して農業に従事したいとお考えの方に向け、農業に役立つかもしれない資格について解説しました。もちろん、上で紹介した資格がなくても、農業に従事することが可能ですので、紹介された資格を取得していないから農業ができない…などと考えないでください。また、地方に移住して家庭菜園レベルで農業を楽しもうと考えているのであれば、特に資格などは必要ないので、楽しみながら農業を行ってみると良いでしょう。