今回は、マンションやアパートなどに住んでいる方が、ベランダを活用してガーデニングや緑化を楽しみたいと考えた時の注意点について解説します。

猛暑化が進む日本では、ベランダの緑化が暑さ対策になるなどと言った情報を見かけることが増えていると思います。ベランダに花壇などを設けて、緑化すれば、床に直射日光が当たらなくなるため、照り返しによる熱が少なくなる、またベランダの水分によって温度上昇を防いでくれるといった効果が期待できるため、暑さ対策に有効だと考える人が増えているのだと思います。

また、ベランダの緑化に関しては、居住空間にリラックスできるスペースが増えるため、自宅に居ながら自然を感じることができると「ベランダ緑化」に興味を持つ方が多いのだと思います。実際に、当サイトでも、プランターを利用した家庭菜園や果樹の育成について紹介した記事があるのですが、これらの記事へのアクセスは非常に多いです。

ただ、マンションやアパートなど、集合住宅に住んでいる方の場合、ベランダの活用は注意しなければならないポイントがたくさんあります。何も考えずに、ベランダガーデニングを楽しんでいると、規約違反などで退去を命じられる危険もありますので、この記事では、ベランダ活用の前におさえておきたいポイントをご紹介します。

集合住宅のベランダは『共用部分』

マンションやアパートなどの集合住宅は、専有部分と共用部分の2種類があることはご存知でしょうか?専有部分とは、自分が購入したもしくは借りている部屋の中で、居住者が自由に使えるスペースや設備のことを指しています。対して、共用部分とは、集合住宅に住む住人全員が一緒に利用できるスペース・設備のことを指しています。

つまり、共用部分に関しては、誰か一人の考えで自由に使えるスペースではないということです。

専有部分と共用部分の基本的な区分けについて

それでは、マンションなどの集合住宅について、専有部分と共有部分の区分けはどのようになっているのかも見ていきましょう。この区分については、物件ごとに多少の違いはあるものの、基本的には以下のように区分けされています。

  • 専有部分・・・物件の持ち主や借主が居住している部屋の内部(天井・床・壁・躯体・窓ガラス・窓枠を除く)
  • 共用部分(建物部分)・・・エントランスホール、エレベーターホール、階段、バルコニー、廊下など
  • 共用部分(付属物)・・・エレベーター設備、電気設備、ガス設備、配電盤、火災報知器、メールボックスなど
  • 共用部分(付属施設)・・・駐輪場、フェンス、植え込みなど

専有部分と共用部分の区分けは、上記のような形となっています。分かりやすく言うと、部屋から一歩外に出た“外気に触れている部分”は基本的に「共用部分」と考えておけば間違いないです。ただ、注意したいのは、部屋の中でも、建物の躯体(コンクリート等)にあたる天井・壁・床は共用部分となっていて、住人が勝手にリフォームなどをすることは許されていません。分譲マンションのリフォームなどの際、事前に管理組合に相談しなければならないのは、共用部分であるからというのも大きな理由です。

そして、各部屋のベランダ部分に関しても、共用部分に該当するのです。もちろん、普段の生活の中だけを考えれば、それぞれの部屋の住人が専属で使用する部分で、他の部屋の住人が勝手に入って使用することは禁止しています。しかし、建物そのものの大規模改修(塗装や外壁の修繕)の際には、作業員の方がベランダで作業することを住人が禁止することはできない決まりになっているはずです。さらに、各部屋のベランダは、緊急時の避難経路としての役割を持たされていて、緊急時に避難を困難にしないよう、ベランダに設置する仕切りは簡単に壊せるような素材が採用されているはずです。

これからも分かるように、ベランダは、各部屋の住人が自分の考えだけで自由に使用することができない場所と言えるのです。

共用部であるベランダはやってはいけないことがたくさん

マンションなど、集合住宅のベランダは、やってはいけないことがたくさん存在します。もちろん、洗濯物を干すなど、日常生活上の通常利用であれば、そこに住む人が自由に利用することができます。しかし、避難経路としても利用されるといった共用部分であるといったことから、以下のような行為はどのような物件でも禁止されていると考えましょう。

フェンスを塗装する壁を追加するなどのリフォーム行為

一つ目の禁止事項は、住人さんが自分の趣味に合わせて、ベランダ部分のフェンスや壁を塗装するなどのリフォームを行うという行為です。

ベランダが共用部分に指定されているのは、物件そのものに統一感のあるデザインを持たせるためという意味もあります。外部から目に入るベランダ部分が、統一感のある色彩や構造をしている方が、物件が美しく見えるわけです。賃貸などであれば、物件選びの際に外観の綺麗さを重視するような方も多いですし、ベランダのデザインや設備は、ほとんどの物件が統一しています。

これが、住人が勝手に塗装などをすれば、外観イメージが大きく壊されてしまう恐れがあるでしょう。そういったことから、ベランダ部分を共用部に指定し、勝手に塗装や改修をするという行為を禁止しているのです。

避難経路の妨害

上述しているように、集合住宅のベランダは、災害や火災が発生した時の避難経路の役割も担っています。そのため、隣家との仕切りは、簡単に壊せる素材で構築されているのです。

ベランダの仕切りには「避難時はここを破って隣戸へ避難してください」と言った記載がなされていて、避難用のはしごまで同階の住人が移動できるようになっています。逆に考えると、緊急時の避難を困難にするようなベランダの使い方はNGとされると考えた方が良いです。例えば、ベランダに大きな洗濯機を設置し、避難経路を塞ぐ、仕切りが破れないように加工する、物を置くといった使い方は、消防法上もやってはいけない行為となります。

レンガや土を使って花壇を作る

冒頭でご紹介したように、近年ではベランダ緑化やベランダガーデニングの人気が高くなっています。簡単に言うと、ベランダで植物を育てる行為のことを指すのですが、その方法によっては集合住宅での禁止事項に当てはまる場合があるのです。

例えば、避難の邪魔にならないように、プランターで植物を育てるといった簡易的なベランダガーデニングの場合、集合住宅のベランダでも何の問題もなく楽しむことが可能です。しかし、中には、ベランダでレンガなどを使用して仕切りを作り、土をまいて植物を育てるといった、本格的な花壇を作ってしまう方がいるのです。そして、ここまでのベランダガーデニングは、どのような物件でも禁止されていると考えた方が良いです。

広いベランダでも花火やBBQはNG

物件によっては、バーべーキューセットを設置できるほど広いスペースを持つベランダが用意されているケースもあります。特に、1階部分の居室を選べば、小さな庭のようなスペースが用意されている物件も増えていますよね。

ただ、こういった物件でも、花火やBBQなどは禁止されているのが一般的です。もちろん、「火を使うから」という理由が大きな要因ですが、これ以外にも、広範囲に臭いが拡散し、多くの方に悪影響を与えるという理由で禁止されているケースが多いです。

近年では、ベランダでのタバコも禁止される傾向が強いですし、それ以上の臭いが生じる花火やBBQはNGです。

このように、マンションなどの集合住宅は、各部屋にベランダが設けられているものの、住人が自由に使っても良いというわけではないのです。ベランダの利用方法については、マンションの管理規約や賃貸借契約書に記載されているはずなので、ベランダ緑化を考えた時には「どこまでやっていいのか?」をきちんと確認したうえで楽しみましょう。

ベランダガーデニングを楽しむときの注意点について

ここまでの解説で、マンションなどの集合住宅でも、避難経路を邪魔しないように工夫しながらであれば、ベランダでガーデニングを楽しむことが可能だということが理解していただけたと思います。ベランダでガーデニングを楽しむ際には、プランターなどを用意して、そこで植物を育てるという形になるかと思います。

ただ、マンションの管理規約など、ルールを守った上で植物を育てる際にも、いくつかの注意点が存在するので、以下のようなポイントは頭に入れておきましょう。

虫が寄ってくる

一つ目の注意点は、植物に虫が寄ってきてしまう…というものです。ベランダでガーデニングする際には、プランターに水やりをしなければならないのですが、鉢の受け皿に水が残ったままにしていると、それが要因で虫が湧いてしまうことがあるのです。また、育てている植物を餌とする生き物もいますので、気付いたときには大量の虫が湧いてしまい、ご近所さんにも迷惑をかけてしまっていた…なんてことになるケースは少なくありません。集合住宅は、各家庭の生活空間が非常に近いため、ベランダで虫が湧けば、他の居室にも大きな影響を与えてしまいます。

したがって、ベランダでガーデニングを楽しむ際には、虫よけスプレーなどで虫対策をしっかりする、虫が付きにくい植物を育てるなどの工夫が必要です。ちなみに、ハーブの一種のレモングラスは防虫効果が高いとされていますので、これを一緒に育てるという手も有効だと言われています。

避難経路を塞がないようにしなければならない

上述していますが、集合住宅のベランダは、災害や火災時の避難経路として利用されます。これは、消防法など、法律も関係していますので、避難を困難にするようなガーデニングのやり方は、強制的に撤去されてしまう可能性もあると考えましょう。

また、管理会社などに注意されたのに、それを無視して避難経路を塞ぐようなガーデニングを行っていた場合、賃貸契約の解約などを命じられる理由になるはずです。何度も言いますが、ベランダは、そこに住む人が自由に利用できるスペースではなく、共用部分としてのルールが設けられているため、きちんとそのルールを守らなければならないと考えてください。

物の落下に注意する

ベランダでガーデニングする際には、物を落下させないように注意しなければいけません。ベランダのフェンスよりも高い位置に鉢植えを置く、ぶら下げるといった様子を見かける機会も多いのですが、こういった置き方は鉢植えごと外に落下して、通行人に怪我をさせてしまうリスクが生じます。したがって、ベランダでガーデニングをする際には、落下の危険がないような位置に鉢植えを設置する、落下の危険が無いようにしっかりと固定するといった対策を施しましょう。

また、水やりの際は、ベランダ外に水が出ないように注意しなければいけません。外に水がこぼれてしまうと、通行人にかかりトラブルに発展する危険があります。

台風など、強風時は片付けられるようにする

ベランダガーデニングは、台風など、強風を伴う悪天候時の対策をきちんと検討しておく必要があります。

台風などの際には、横殴りの雨がベランダに打ち付けるほか、ベランダ部分が吹き溜まりとなるため、強風の影響を大きく受けてしまいます。そのため、何の対策もしなかった場合には、強風などの影響で、鉢植えが倒れてしまったり、ベランダ外にまで飛ばされてしまう…という危険があるのです。ベランダ内で鉢植えが倒れるだけならマシ…と考える人もいますが、排水口が土で詰まってしまうと、同じ階の他の部屋にも大きな影響を与える可能性が出てきます。

したがって、こういった被害を防止するためには、台風などの悪天候時は、屋内に鉢植えを片付けられるようにしておくのが最も良いです。鉢植えの量的にすべてを屋内に移動させられない…という場合は、ロープなどでしっかりと固定して、強風で倒れる、飛ばされるといったことが無いようにしなければいけません。

まとめ

今回は、集合住宅のベランダでガーデニングを楽しみたいと考えている方の向け、集合住宅でのベランダの取り扱いと注意点を解説しました。

近年では、ベランダガーデニングやベランダ緑化と言った言葉を耳にする機会が増えているなど、自宅で手軽に植物を育てられる趣味として人気になっています。ただ、戸建てではなく、マンションのような集合住宅のベランダについては、住人さんが自由に利用することができないという点に注意しなければいけません。
こう聞くと、「賃貸なら理解できるけど、物件を購入している分譲はベランダも自分の敷地なのでは?」と考えてしまう方も多いです。しかし、分譲マンションでも、ベランダは基本的に共用部分に指定されていて、使用方法にはさまざまなルールが設けられているのです。これは、ベランダ部分が災害や火災時の避難経路になっていることや、建物全体の外観デザインに大きな影響を与えることが主な要因です。共用部分ということは、その建物に住んでいる人全ての共有財産ということですので、ルールを守った上でしかガーデニングを楽しむことはできないと考えてください。

なお、べランドの使用に関するルールに関しては、物件ごとに異なる点があるため、その辺りは管理規約などで確認してみてください。中には、この記事でご紹介した内容よりもかなり緩めのルールになっている場合もあるかと思います。

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