今回は、個人が趣味の範囲で栽培を行っている野菜や果物について、食べきれない分を販売することはできるのか、また販売する際に何らかの許可を取得する必要があるのかについて解説します。

まず、答えから言ってしまいますが、家庭菜園などで栽培した野菜や果物については、なんの加工もせずにそのまま販売するケースであれば、基本的に販売許可などは不要です。つまり、買手がいるのであれば、自分で値付けを行い売却しても良いと言えます。ただ、自宅で栽培した野菜や果物でも、少しでも加工を加えているのであれば、販売許可(営業許可)を取得しなければいけません。例えば、野菜を漬物にして売る、果物をジャムにしてから売るという場合は、勝手に販売することができないわけです。

この記事では、家庭菜園などで個人的に栽培した野菜・果物について、販売したいと考えた時におさえておくべき基礎知識をご紹介します。

野菜・果物の販売に許可は必要?

個人で何らかの商品の販売を考えた時には、売るためには許可や資格が必要になるのではないか…という点が気になる方が多いと思います。特に、野菜や果物は、人が口にする食べ物であることから、厳しい基準などが設けられているのではなか…と気になってしまう方が多いと思います。

ただ、冒頭でご紹介したように、野菜・果物に必要な販売許可については、自分で栽培した野菜や果物を販売する場合、特に資格や許可を取得する必要はありません。しかし、販売する物が自家生産した野菜や果物でもそれを加工た農産物加工品である場合や販売する場所によっては、食品営業許可または食品営業届出などが必要になるケースがあります。

もちろん、物を販売する限りは、なんの制限もないというわけではありません。例えば、ネット通販を利用して販売する場合、特定商取引法を守る義務がありますし、移動販売などであれば場所によって何らかの許可を取得する必要が生じることもあります。また、自家生産ではなく、他農家の農産物の販売や加工品の販売に関しては、許可が必要です。

なお、野菜や果物の販売を考えた時、許可や資格の要・不要の判断が難しいという場合は、管轄の保健所などに確認してみると良いでしょう。

野菜や果物を販売する方法について

個人の方が自分で栽培した野菜や果物を販売する方法はさまざまです。ここでは、比較的、取り組みやすい販売方法について簡単に解説します。

ネット販売

最も手っ取り早い方法がネット販売をするという方法です。コロナ禍以降、ネット通販の利用者が増加していますし、個人の方でもコストをかけずに販売を開始できる方法が増えているので、最もとっつきやすい方法といえるでしょう。なお、ネット販売についても、以下のように複数の販売方法があります。

  • ネットショップを開設する
    通販サイトを開設するには、専門業者に依頼する必要があり、多額の費用がかかると考えている方が多いです。しかし近年では、商品さえあれば、誰でも簡単にネットショップを開設できるサービスが登場しています。例えば、BASEなどのサービスは、決済機能なども付属されているため、個人の方でも使いやすいです。デザイン性などにこだわらないのであれば、初期費用をかけずにネット通販が開始できる点も嬉しいポイントです。
  • モール型ショップサイトに出品する
    楽天市場やYahoo!ショップなどのモールに出店するという方法です。楽天市場は、月額費用がかかりますが、既にモール側に顧客がついているという点から商品点数が多い人に有利です。
  • フリマアプリで販売する
    メルカリなどのフリマアプリも、個人間の販売では非常に手軽に利用できます。

野菜や果物を、加工せずに販売する場合、上記のような方法を利用すれば、許可なども不要です。ただ、特定商取引法など、守らなければならない法律はあるので、完全に自由というわけではありません。また、ジャムや漬物などの加工食品を販売する場合は、許可や資格が必要です。

無人販売

これは、その名の通り、無人で販売する方法です。 加工食品の販売ではない、自身が所有する土地の敷地内で販売するという場合は、許可などがなくても販売可能です。

皆さんも、地方に足を運んだ時に見かけたことがあると思うのですが、テーブルなどに野菜を並べておき、購入したい人はお金を貯金箱のようなBOXに投入することで、勝手に持ち帰ることができるといった仕組みで野菜などを販売するケースは多いです。この場合、商品がなくなれば補充する必要はあるものの、その他の作業は基本的に何もしなくても良いので、自動で稼ぐことが可能です。

ただ、無人の販売となるため、盗難被害の可能性がどうしても残ってしまいます。また、人通りが少ない場所などであれば、売上もそこまで上がりませんし、立地などに集客が左右されてしまいます。販売する商品がそこまで多くない、趣味の延長で少しでも売れたらよいといった考えの方にはオススメですが、それなりの売上を見込む人にはあまりおすすめの方法とは言えません。

直売所や移動販売

野菜や果物を自分で販売する方法には、直売所や移動販売を開始するという方法もあります。

直売所については、無人販売を少し拡大した感じの売り方で、自宅の敷地内などに小屋を立てて販売するという方法になります。こちらも、「自宅の敷地内」であれば許可・届出は不要です。無人販売との違いは、販売のための人員が常駐する形になる点なので、それなりの売り上げ規模が期待できる場合でなければあまりおすすめではありません。

移動販売は、軽トラックなどを用いて、さまざまな場所で野菜や果物を販売するという方式です。注意が必要なのは、移動販売の場合、どこでも自由に販売しても良いというわけではなく。販売する場所によっては許可が必要になります。
例えば、イベントスペースに移動販売店を出店する場合は、運営元に販売の許可を取らなければいけません。また、公道に車を停めて販売する場合、道路使用許可を取る必要があります。

まとめ

今回は、自家栽培した野菜や果物を販売することができるのかについて解説しました。記事内でご紹介したように、野菜や果物を加工せずにそのまま販売するケースでは、基本的に許可や資格の取得は必要ありません。移動販売に関しては、販売する場所によって許可などが必要になりますが、「食品を販売するための許可」ではなく、場所を利用するための許可を取得するといった感じになります。

記事内で紹介した以外にも、道の駅や農協などを利用するという方法もあるのですが、これらの方法は、それなりの収穫量が無ければ取引してもらえない可能性が高いです。