腐った食品を食べると、下痢や腹痛などを引き起こしますが、一般的にこのような症状が食中毒と呼ばれます。この時期は、腐ったみかんや腐ったイチゴなどを間違って口にしてしまう…なんてことも少なくないのですが、それでは腐った果物を口にしてしまった時には、どのような症状が出るのか、また異変はどれぐらい時間が経った時に生じるものなのでしょうか?

一般的に、食中毒は気温が高い時期に起きやすくなるのですが、果物は食べられる境目が分かりにくいことから、傷んで食べない方が良い状態のものを口にしてしまうことも珍しくありません。そこでこの記事では、腐った果物を食べたことによる食中毒の症状や潜伏期間などについて解説します。

腐った食べ物を食べたからと、全ての人が食中毒になるわけではない

果物の中には、常温で保存されるものも少なくありません。そのため、食べ掛けでしばらく常温で放置していた…なんて場合には、次に口にするまでに傷んでしまっていることも珍しくありません。この他にも、ミカンなどは箱買い等、一度に大量に購入する方が多いことから、食べきる前に賞味期限が切れてしまい腐ることも珍しくないでしょう。

当然、目に見えて傷んでいるとわかる、異臭がするなんて状態の果物であれば、食べる前に「腐っている」と気付くことができますが、中には傷んでいることに気付かずに食べてしまい、食中毒を発症してしまうこともあります。どのような食品でも、適切な保存方法や保存期間を守らなければ、腐ってしまいますので、果物に限らず食品全般について食べる前に状態は確認するようにしましょう。万一、腐った状態の果物などを口にしてしまうと、腹痛や下痢、嘔吐など、食中毒症状が現れます。食中毒の症状はこれ以外にもさまざまな症状があるのですがその辺りは後述します。

ちなみに、腐った果物を食べた人全てが食中毒になるのかというとそうでもありません。皆さんもTVのニュースなどで食品による食中毒事故の報道を見かけたことがあると思いますが、中には同じものを食べているのに何の症状も出ないという方もいるのです。それでは、同じように「腐った果物」を食べていたのに、食中毒の症状が出る人と出ない人は、何が異なるのでしょうか?

これについては、食べた人の健康状態や体内に取り込んだ食中毒菌の量に差があったからというのが要因です。健康状態が関係するのは、状態の良い人は、胃酸の分泌が十分で体内に取り込んだ食中毒菌を自ら殺菌することができているからだそうです。この他にも、腸内の乳酸菌など、健康維持に必要な菌類によって体内で食中毒菌が繁殖しにくい環境になっている場合も食中毒にならないそうです。なお、以下のような方は、食中毒症状が出やすいとされています。

  • ・免疫力が低下している人
  • ・胃酸の分泌が少ない人
  • ・腸内環境が良くない人
  • ・子ども・お年寄り・妊婦など免疫力が低い人

「免疫力が低下している人」というのは良く聞くと思いますが、さまざまな体調不良の危険があります。例えば、風邪なども免疫力が低下している時にひきやすいと言われますよね。実は、子どもやお年寄り、妊娠中の方は、健康な大人の人よりも免疫力が低いため、食中毒に注意が必要とされています。赤ちゃんなどは、離乳食に使っても良い食材について、食べても良い時期が決められているのですが、これは免疫力や消化力が大人よりも低いためです。
また、妊娠中は妊娠前よりも免疫力が下がりますので、食中毒には注意が必要です。妊婦さんは、お寿司やお刺身を控えた方が良いと言われるのは、生ものが食中毒リスクが高いため、免疫力が下がった状態で食べない方が良いと考えられているからです。

腐った果物による食中毒の症状や潜伏期間について

それではここから、腐ったみかんなどを口にした場合に生じる食中毒症状や、その症状がどれぐらいで発症するのかについて解説します。

腐った果物による食中毒の症状とは?

腐った食品を食べてしまい食中毒になった時には様々な症状が出ます。一般的には、下痢や腹痛など、消化器系のトラブルが思い浮かびますが、これ以外にも発熱や嘔吐、頭痛などを引き起こすことがあると言われています。

以下に、腐った果物による食中毒で発症すると考えられる症状をいくつか挙げてみます。

  • ・腹痛
  • ・下痢
  • ・吐き気
  • ・嘔吐
  • ・発熱
  • ・頭痛

食中毒の症状は何時間後に出る?

腐ったものを食べたことによる食中毒については、「半日程度経過したころに症状が出る」と考えている方が多いのではないでしょうか?

しかし、食中毒の潜伏期間は人によって異なり、早い人であれば食後1~5時間程度で症状が出ると言われています。そうでない場合、8時間後当たりが多いようですが、長い場合は36時間後など、1日以上経過した後に症状が出ることもあるようです。

これは、食中毒の原因菌の違いで潜伏期間が変わるからだそうです。食中毒の原因菌ごとの潜伏期間については、農林水産省が公表しているデータを参照に以下にまとめてみます。

  • サルモネラ菌
    十分に加熱していない卵・肉・魚などが原因です。食後、6時間~48時間で、吐き気、腹痛、下痢、発熱、頭痛などの症状が出ます。
  • 黄色ブドウ球菌
    ヒトの皮膚、鼻や口の中にいる菌で、傷やニキビを触った手で食べ物を触るなどが原因となります。食後30分~6時間で、吐き気、腹痛などの症状が出ます。
  • 腸炎ビブリオ菌
    十分に加熱されていない肉(特にとり肉)や、飲料水、生野菜などが原因。食後2~7日で、下痢、発熱、吐き気、腹痛、筋肉痛などの症状が出ます。
  • O157やO111(腸管出血性大腸菌)
    十分に加熱されていない肉や生野菜などが原因。食後12~60時間で、はげしい腹痛、下痢、血が多くまざった下痢などの症状が出ます。最悪の場合、死に至ります
  • ノロウィルス
    カキなどの二枚貝やウイルスに汚染された水などが原因。食後1~2日で吐き気、ひどい下痢、腹痛などの症状がでます。

参照:農林水産省食中毒ページより

腐った果物を食べた時の対処法

それでは最後に、間違って傷んで腐ってしまっていた果物を食べた時の対処法についてもご紹介します。食中毒の症状が出た時には、出来るだけ早く病院に行くことをおすすめしますが、応急処置としては以下のような対策を行ってみると良いでしょう。

水分補給をする

嘔吐や下痢などの食中毒症状が出た時には、応急処置として適度に水分を摂ることが大切です。食中毒による嘔吐や下痢が続くと、体内の水分が急激に減少してしまいます。

水分を摂らずにいると、体内の水分が減少しすぎてしまい、脱水症状も併発する恐れがあります。

下痢止めはNG

下痢が続く場合には、市販の下痢止め薬を飲もうと考える方が多いです。しかし、食中毒症状として下痢が発症している場合、下痢止め薬を飲むのはNGです。

というのも、食中毒症状として下痢や嘔吐など症状が出ているのは、体内の食中毒菌を排出するための防衛手段のような物なのです。したがって、下痢止め薬を飲んで、下痢を無理にとめてしまうということは、体内に食中毒菌を残すという意味ですので、菌が排出されにくくなり、症状が長引く恐れがあります。

症状が長引く場合は医療機関へ

腐った食品を口にしたことによる食中毒は、一定期間が経つと自然治癒します。これは、嘔吐や下痢などにより食中毒菌を体外に排出することで、徐々に症状が解消されていくからです。

ただ、中にはなかなか食中毒症状が改善しない…なんてケースもあります。したがって、しばらく様子を見ても、一向に症状が改善されない…なんて場合は、医療機関を受診しましょう。食中毒の原因によっては、抗生物質や整腸剤を処方してもらうことで早期に症状を改善できることもあるので、「早く治したい」という方も医療機関を受診するのがおすすめです。

まとめ

今回は、腐った食品を間違って食べた時に考えられる食中毒について解説しました。ちなみに、食中毒は、食品が腐っていない状態でも、食中毒菌が付着した物を口にすることで発症することもあります。そもそも、食中毒というのは

食中毒を起こすもととなる細菌(さいきん)やウイルス、有毒な物質がついた食べ物を食べることによって、げりや腹痛、発熱、はきけなどの症状(しょうじょう)が出る病気のことです。
引用:農林水産省webサイト

上記のような物を指します。もう少し噛み砕くと「何らかの菌によって腹痛や下痢、嘔吐」などを引き起こす症状が食中毒なのです。そして、食品を腐敗させる菌と食中毒菌は別物の場合もあります。フルーツの多くは、火を通さずにそのままの状態で食べることが多いため、何らかの菌が付着した状態だと、食中毒を発症する危険があります。また、常温保存する果物の場合、保存中に食中毒菌が増殖している可能性もある事でしょう。

果物を口にしたときに、味や香りに異変を感じた際は、そのまま食べるのではなく、状態をよく確認して危険なものは廃棄しましょう。

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