日本人にとって、最もなじみ深いフルーツは朝食代わりに食べられることもあるバナナだそうです。実際に、総務省が行っている家計調査を確認してみると、バナナの年間消費量は、2位のリンゴと比較しても2倍近い量を消費されているという結果が出ています。ちなみに、ぶどうはというと、バナナの消費量の約1/10で第10位に位置しています。

ただ、バナナがこれほどまでに人気なのは、味が要因になっているわけではなく、なんといっても『安いから』という答えが圧倒的です。バナナは、輸入品も多く出回るようになっており、単純なフルーツというよりも、小腹が空いたときでも満足感が得られるボリューム感が人気の理由なのだと思います。
一方、田中ぶどう園でも栽培しているぶどうはというと、どちらかというと、高級フルーツというイメージが強く、とても美味しいフルーツとはいえ、気軽に食べられるほど安くはないと考えている方が多いのではないでしょうか?もちろん、デラウェアのような安価な大衆ぶどう品種もありますが、最近ではシャインマスカットや巨峰など、どちらかというと贈答品などとして喜ばれる非日常のフルートと考える人が多いと思います。

こういったことから、食べた経験はそれなりにあるものの、ぶどうに関する細かな知識を持っていないという方が非常に多いです。そこでこのコラムでは、少しでもぶどうを美味しく食べるため、知っておいて損はないぶどうの知識について解説します。田中ぶどう園では、シーズンになるとぶどうの直売所などを開設するのですが、お客様からぶどうに関していろいろな質問を受けることもあるので、そういった部分についても解説します。

参照:家計調査より

よりおいしくぶどうを食べるために、知っておきたいこと

それでは、ぶどうをよりおいしく食べるため、皆さんにも知っておいてほしい事をいくつかご紹介していきます。ぶどうは、ほとんどの日本人は食べた経験があると思うのですが、意外に知られていない事実も多いです。例えば、日本人にとって「ぶどうは皮を剥いて食べる」フルーツというイメージが強いですが、諸外国では「ぶどうは皮のまま食べる」フルーツと言った感じに、国が変われば食べ方すら異なる変わったフルーツでもあるのです。

ここでは、お客様から質問されることが多いぶどうの知識などもあわせてご紹介します。

ぶどうの食べごろを見極めるには?

まずは、ぶどうの食べごろを見極めるための知識です。最近では、スーパーはもちろんとして、道の駅などでもぶどうが販売されているケースが増えていますが、「どれが食べごろのぶどうなのか分からない?」という声が意外に多いです。見た目上はどれも美味しそうに見えますが、可能であれば最も食べごろのぶどうを手にしたいと誰もが考えることでしょう。

なお、日本国内では、約60種類ものぶどう品種が栽培されていると言われており、ぶどうの旬は品種によって微妙に異なります。一般的には、8~10月上旬ごろまでがぶどうの旬と言われているのですが、それもハウス栽培が盛んになった現在、かなり変わってきています。そこで、店頭に並んでいるぶどうを見て、「食べごろのぶどうだ!」と判断するためのポイントをいくつかご紹介しておきましょう。ぶどうの食べごろを見極めるには、以下のポイントを確認すると良いです。

  • ■ぶどうの軸・・・緑色で太くてしっかりとしている軸ほど良い
  • ■ぶどうの実・・・ぶどうの実は、ふっくらとして粒に張りがあるものが良い。また大きさが揃っているものがオススメ
  • ■ぶどうの色・・・赤系、黒系ぶどうは色が濃いものほど熟れています。緑系は、色鮮やかで黄色みを帯びているものが熟れています

美味しいぶどうを見極めるためのポイントは、上記のような点を確認すると良いでしょう。ぶどうは、上側(軸の方)から徐々に成熟が進みます。したがって、未熟なものを購入すると、上側は甘いのに、ぶどうの先の方に進むと甘みが少なくなっていきます。成熟が進んだぶどうは、下側のぶどうも糖度が追い付きますので、全ての粒でぶどうの甘みを楽しむことができるようになります。

なお、ぶどうの収穫は、収穫基準に従って行われ、各産地から出荷されるようになっています。したがって、店頭に並んでいるものは基本的に食べごろを迎えていると考えて良いです。その中でも、よりおいしいぶどうを探すのなら、上のポイントを気にかけてみましょう。

ぶどう表面の白い粉は何?

これは、ぶどうの直売所などでもお客様から質問されることが多いです。新鮮なぶどうを販売している直売所や道の駅に行ったことがある人であれば、そういった場所で販売されているぶどうは、表面に白い粉のようなものがついていて「これは何だ?」と疑問に感じた経験があるのではないでしょうか?

実際に、田中ぶどう園でも、お客様から「ぶどう表面の白い粉は残留農薬ですか?」と言った質問を受けたことがあります。答えからご紹介しますが、ぶどう表面の白い粉は、残留農薬ではなく「ブルーム」と呼ばれる天然成分です。そして、ぶどうは、このブルームがしっかりと残っているものほど新鮮な証拠です。

ぶどうは、水分が多い果物です。そのため、ぶどう自身が自分を守るために、ブルーム(果粉と呼ばれる場合もあります)と呼ばれる脂肪酸で出来た天然成分が、果皮の表面に浮き出てくるのです。このブルームは、雨や朝露などをはじいてぶどうを病気から守ったり、水分が蒸発するのを防ぎ、鮮度を保つ働きを持っています。要は、ぶどうの美味しい状態を長く保ってくれるためのものなのです。
こういったことから、我々ぶどう生産者は、ぶどうを収穫する際、可能な限りブルームを落とさないように注意しながら、丁寧に扱っています。そのため、新鮮なぶどうを販売している直売所などでは、しっかりとブルームが残った状態のぶどうが並んでいるわけですね。

ぶどうのブルームは、新鮮なあかしで、無害ですので「ブルームが残っているぶどう」を優先して選ぶようにしましょう。また、持ち帰ったぶどうについても、食べる直前までブルームを残した状態で保存しておくのがオススメです。

ぶどうの適切な保存方法とは?

ぶどうの美味しい食べ方と言えば、「食べる2~3時間前に冷蔵庫に入れておくのがオススメ」と解説されている場合が多いです。この情報から読み解くと、購入したぶどうは、少し冷蔵庫で冷やしてその日のうちに食べなければいけないと受け取る方が多いのではないでしょうか?

ただ、ぶどうはその日のうちに食べなければいけないというほど足が速い果物ではありません。保存方法に関しても、常温保存が可能なフルーツで、冷蔵庫ではなくて冷暗所などであれば、2、3日なら保存可能でしょう。しかし、ぶどうの旬は真夏や残暑が残る時期ですので、昼間はかなり高い気温になる日も少なくありません。そして、ぶどうは温度が高いほど傷みやすくなりますので、常温保存の場合は、購入後できるだけ早く食べるのが基本となります。

現在では、どの家庭にも冷蔵庫はあると思いますので、数日間に渡ってぶどうを楽しみたいと考える場合、冷蔵庫で保存するようにしましょう。冷暗所でも、真夏は気温が高くなるので、想像以上に早く傷む可能性があります。なお、ぶどうを保存する時のポイントは、以下の点に注意しましょう。

■ぶどうの保存方法について

  • ・乾燥しないように新聞紙やポリ袋に包んでから冷蔵庫に入れましょう
  • ・軸から外して保存する場合、軸を少し残してカットするのがオススメです
  • ・食べる際は、冷蔵庫から出して20分ほど置き、常温近くに戻した方が甘みを感じることができます

ぶどうは、冷蔵保存でも3~5日ほどが限界と考えましょう。なお、ぶどうの賞味期限については、別の記事で詳しくまとめているので、そちらをご参照ください。

関連:ぶどうの賞味期限ってどのぐらい?ぶどうの保存に関する基礎知識

ぶどうの皮の剥き方は?

上でご紹介したように、諸外国ではぶどうは皮ごと食べるのが一般的です。しかし、日本人の多くは、ぶどうの皮は剥いて食べたいと考える方が多いと思います。最近でこそ、種無しで皮ごと摘まめるぶどう品種が登場していますが、そういったタイプのぶどうでも皮は剥いて食べたいという方が一定数います。

それでは、大粒ぶどうについて、上手に皮を剥くにはどういった方法はあるのでしょうか?ここでは、ぶどうの皮を綺麗に剥くための方法をいくつかご紹介します。

■ぶどうの皮の剥き方

  • ・一度冷凍して解凍すると、皮が剥けやすくなります
  • ・さっと茹でてから水で冷やすと皮が剥けやすくなります
  • ・ぶどうの軸と逆側に十字の切れ目を入れると剥きやすいです
  • ・軸から外した時にできる穴に、爪楊枝をさして実をくるっと回すと実が皮から離れます

大粒のぶどうでも、上記のような方法を使えば、意外に簡単に皮が剥けます。ぜひ試してみてください。

ぶどうはどの部分が美味しい?

ぶどうは、軸に近い部分から徐々に熟れていく果物ですので、基本的に食べる部分によって甘さが異なります。上の画像を見ていただければ分かりやすいのですが、一房のぶどうについては、軸側を上、ぶどうの先端を下と見た場合、上の方が糖度が高い傾向にあります。もちろん、下の方になると味がしない…なんてことになるほど糖度に違いはありませんが、糖度が1度程度変わることもあるようです。

これからも分かるように、一般的なぶどうは、食べる場所によって味に少し差があります。下側から徐々に食べていけば、最後ま甘みを感じながらぶどうを楽しめまると思いますよ。なお、物によっては食べる位置で糖度にほとんど差が無い場合はあります。

まとめ

今回は、ぶどうをよりおいしく食べるためのいくつかのポイントをご紹介しました。この記事でご紹介したように、ぶどうはバナナやリンゴとは違い、日常的に食べるようなフルーツではないため、意外に知らないことが多いようです。特に、ぶどう表面に発生するブルームについては、多くの方が残留農薬と勘違いしているようですね。

田中ぶどう園では、全国でも珍しいぶどう品種をたくさん栽培していますので、いろいろなぶどうを食べ比べしてみてはいかがでしょう。今年の夏は、お子様も楽しめるぶどう狩りを営業しますので、ぜひご家族のレジャーとして遊びに来てみてください。