
濃縮還元は身体に悪いの?ストレート果汁との違いとメリット・デメリット
手軽に果物を口にする方法として「ジュースを飲む」という方法があります。昨今では、コンビニなどに行けば果物100%のジュースが販売されているため、健康維持の目的で小まめに果物のジュースを口にしているという方も多いと思います。
しかし、果物100%ジュースのパッケージをよく確認してみると、「濃縮還元(のうしゅくかんげん)100%」と書いているものや「ストレート果汁100%」と書かれているものがあり、この記載の違いに悩んでしまう人も少なくないのです。さらに、ネットで果物のジュースについて調べてみると「濃縮還元は身体に悪い」などという情報を見かけることもあり、健康目的で飲んでいるジュースが逆の効果をもたらすなんて本当なのか…と不安に感じてしまう人もいるようです。
そこでこの記事では、果物100%ジュースに記載されている濃縮還元について、ストレート果汁と何が違うのか、また濃縮還元にするメリットは何なのかなどを解説します。
濃縮還元とストレート果汁の違い
それではまず、濃縮還元とストレート果汁について、それぞれの特徴について解説します。
濃縮還元について
まずは濃縮還元です。果物100%ジュースでも、濃縮還元と記載されているものは、果物を絞った果汁がそのまま入っているわけではないのです。
濃縮還元は、搾汁した果汁から一度水分を取り除いて濃縮するという工程を挟みます。そして、ジュースにする際には、一度濃縮した物に水分を加え、元の濃度に戻すという製法になっているのです。濃度自体は、元の果汁から抜いた水分を加えているだけなので100%ジュースという扱いになるわけですね。
ちなみに、果汁を濃縮する方法はいくつかあり、それぞれ異なる特徴があります。
- ・真空蒸発法
原料を加熱することで水分を蒸発させる方法です。果物の芳香成分が減少しやすい、熱に弱い一部の栄養素が損なわれる可能性があるという問題があります。ただ、効率性などの観点からこの方法が最も広く採用されています。 - ・凍結濃縮法
液体中の水分を凍結することにより、物質と分離して濃度を高める濃縮法です。熱を加えないため、熱による成分劣化を防げるというメリットがあります。 - ・逆浸透濃縮法
濃度が異なる溶液の間に水分子以外が通過できない膜を張り、圧力をかけることで原料から水分を抜く濃縮法です。果汁の芳香成分や栄養素など、熱による変化の可能性がある成分に変化が見られないことが利点です。ただし、非常に高度な設備が必要になるため、コストの面などから利用数が少ないのが現状です。
果汁の濃縮方法は、上記のような方法があるのですが、現状は真空蒸発法が広く利用されているそうです。
ストレート果汁について
次はストレート果汁なのですが、ストレート果汁は非常に単純です。
ジュースのパックに「ストレート」と記載されているものは、原料から搾汁した果汁をそのまま商品にしているというものです。濃縮還元の場合、水分濃度を戻す際に、砂糖などを加えて味の調整をするため、果物の味わいそのままとは言えません。しかしストレート果汁は、余計な添加物を使用することなく製造されているため、原料の味わいをそのまま楽しむことができるのです。
※市販されている果物100%ジュースは、加熱殺菌はなされていると思います。
濃縮還元のメリット・デメリット
ここまでの解説で、濃縮還元は、果物を搾って出た果汁をそのまま利用しているわけではないということが分かっていただけました。一度水分を抜き、ジュースにする際に同じ濃度になる量の水分を加えるという工程を挟んでいるのです。
それではなぜ、そのような面倒な工程を挟んでいるのでしょうか?ここでは、濃縮還元という加工方法が存在する理由を理解するためにも、そのメリットやデメリットを解説します。
濃縮還元のメリット・デメリット
果物100%ジュースを作るなら、原料を搾ってできた果汁をそのまま利用するストレートの方が手っ取り早いのでは…と感じますよね。しかし実は、濃縮還元にすることで、以下のようなメリットが得られるとされているのです。
- ・運送費や保管費用を削減することができる
- ・保存が効く
- ・比較的安価で販売される
- ・味が安定しやすい
濃縮還元は、果汁から水分を抜いて一度粉末にするという方法です。そのため、保存や輸送が容易になり、それにかかるコストも抑えられるという点が最大のメリットになるのです。当然、液体と粉末の保存を考えた時には、液体の方がスペースをとります。運搬時も液体の方が重くて大きいため、一度に輸送できる量が少なくなってしまいます。粉末状にしていれば、運んだ先で水分を加え、ジュースに作り直すということができるので、保管・輸送の面で非常に大きな利点があるのです。
当然、保管や輸送コストを抑えることができれば、その分、商品価格も下げることができますよね。つまり、私たち消費者側から見ても、お手頃な価格で100%ジュースを飲めるというメリットが得られるのです。
ただその一方、濃縮還元には、以下のようなデメリットが存在します。
- ・一部の栄養素が損なわれる可能性がある
- ・香料や砂糖を加えるため本来の味わいが変わる
濃縮還元は、上述したように真空蒸発法によって粉末にされるケースがほとんどです。そして、この方法の場合、加熱という工程が挟まれるため、熱に弱い栄養素が失われる、芳香成分が減少するという問題が生じるのです。例えば、一般的に水溶性のビタミン(B群、C)は熱に弱く、加熱によって分解されやすいとされています。そのため、濃縮還元の100%ジュースは、果物を食べることで得られるはずのビタミンが摂取出来なくなっている可能性が高いのです。
このほか、水分を戻す際に、香料や砂糖が加えられているため、本来の味わいとは異なり、違和感を感じる人もいるようです。
まとめ
今回は、果物100%ジュースによくある疑問、濃縮還元とストレートの違いは何という点にお答えしました。濃縮還元は、一度水分を除去して、元の濃度の果汁に戻すという工程を経ることで輸送性を高めているという感じです。
ただ、水分を戻す際に、砂糖や保存料を加えることとなるため、本来の果物の味わいからズレてしまう、香りが変わってしまうという問題があります。さらに、味の調整のために、大量の砂糖や保存料が加えられることが要因となり、「身体に悪い」という指摘がなされるようになっているのです。また、濃縮還元の場合、一度粉末状にされることで果物の産地や育て方がわからなくなってしまうという点も「身体に悪い」という指摘の要因です。例えば、日本では禁止されている農薬を使用して栽培された果物だったとしても、粉末状にされると、それに気づくことはできません。つまり、「どこのどんな果物が原材料か分からないため、体に悪い」という意見があるわけです。
ちなみに、国産の果物を使用したジュースであれば、常識の範囲の量を飲んでいるだけなら、体に悪影響が出るような事はありませんよ!