今回は、多くの方が冬の楽しみにしている焼き芋について、好みの焼き芋にたどり着くために知っておきたいさつまいもの品種について解説します。

近年では、焼き芋専門店などが登場しているなど、空前の焼き芋ブームとなっています。さつまいもは、トースターやストーブなどを使えば、自宅で簡単に焼き芋を作ることができますし、さつまいもの品種を選べば、まるでスイーツを食べているような強い甘みを楽しむことができることから、健康的な冬のおやつとして人気になっています。

ただ、焼き芋については、食べた時にねっとりした食感のものとホクホク感を楽しむことができるものなど、モノによって食感がかなり違う点に驚く方も少なくありません。そして、同じ焼き芋でも、「ねっとりしているものは苦手…」「ホクホク感のある物は食べ応えがありすぎる…」など、人によって感じ方がかなり違います。実は、同じ焼き芋なのに、ねっとり系の物とホクホク感のある物は、焼き方が異なるのではなく、原材料であるさつまいもの品種が違うのです。そのため、自分の好みの焼き芋を食べるためには、さつまいもの品種ごとの特徴をおさえておく必要があります。

そこでここでは、さつまいもの品種について、焼き芋にしたときにねっとり感を楽しめる品種とホクホク感を楽しめる品種、それぞれの代表的なものをご紹介します。

ねっとり系のさつまいもの品種

焼き芋と聞くと、ホクホクした食感を楽しむことができるおやつと言ったイメージを持っている方もいますが、昨今の焼き芋業界では、ねっとり系の食感の品種が人気です。特に、安納芋や紅はるかという品種のさつまいもは、非常に糖度が高く焼き芋にしただけでスイートポテトを食べているような強い甘みを楽しむことができることから、ここ数年の焼き芋ブームに火をつけたとされています。

ねっとり系の焼き芋が好きな方におすすめのさつまいも品種は、以下のような物があります。

安納芋

ねっとり系のさつまいもの代表と言えるのが「安納芋」です。コンビニで販売されている焼き芋コーナーで安納芋が登場した時、その美味しさに衝撃を受けたという方は多いのではないでしょうか?

安納芋は、その他のさつまいもと比較すると、多くのショ糖が含まれているため、非常に濃厚な甘みを楽しむことができます。口当たりは、とてもクリーミーで滑らかなさつまいもなので、ホクホク感のある焼き芋しか食べたことがないという人は、初めて食べるとかなりびっくりすると思います。

安納芋は、鹿児島県の種子島で作られている品種の総称で、この品種としては「安納こがね」と「安納紅」があります。どちらも1998年に品種登録されています。「安納こがね」と「安納紅」の違いは、皮の色にあり、安納こがねが淡黄色で、安納紅は赤褐色をしています。安納芋は、9月~11月頃が旬で、蒸しても煮ても美味しく食べられるのですが、特に焼き芋にするさつまいもとして近年では人気が出ています。

※安納芋が全国で栽培されるようになってから、JA種子島では安納こがねを「安納もみじ」という名で商標登録を行っています。

紅はるか

紅はるかは、近年の焼き芋ブームの火付け役になったと言われるほど人気の品種です。紅はるかの焼き芋は、焼き立ても非常に美味しいのですが、他の品種と比較しても圧倒的に高い糖度を誇っていることから、冷やして食べても十分に美味しく食べられます。そのため、夏場でも食べられる「冷やし焼き芋」として販売されるようになり、全国で人気を博しています。

紅はるかは、2010年に品種登録と、まだまだ新しい品種です。九州沖縄農業研究センターが「九州121号」と「春こがね」を交配して選抜・育成した品種で、高い糖度を誇っているうえ、貯蔵されたものは粘質でしっとりとした食感となり、ねっとり系の焼き芋が好きな方には非常におすすでです。

紅はるかは、高い糖度を誇っていることから、焼き芋以外にもスイートポテトやモンブラン、大学芋に芋のてんぷらなど、さまざまな方法で楽しむことができます。

ひめあやか

ひめあやかは、鹿児島県や茨城県、埼玉県などで栽培されている品種で、12~翌2月頃が旬のさつまいもです。

やや粘質と、安納芋などと比較するとねっとり感は少ないのですが、繊維が少なくて非常に食べやすく、バランスの良い味わいと年々人気が高くなっています。いものサイズ感も、コンパクトで女性も食べやすい点も人気の理由かもしれません。

あまはづき

あまはづきは、2021年8月に公表されたばかりと、まさに最新のさつまいも品種です。あまはづきの特徴は、従来のさつまいもと比較すると、収穫時期がかなり早く、8月頃から楽しむことができます。

現在、主な産地は関東地域となっているのですが、今後、全国へ普及していくことが期待されている品種です。この品種は、収穫直後から甘さが感じられ、濃厚でねっとりした食感が特徴です。

ホクホク感のあるさつまいもの品種

昔ながらの焼き芋と聞くと、ホクホク感と程よい甘みを楽しむことができる食べ物というイメージなのではないでしょうか。筆者も、ねっとり系の焼き芋と比較すると、ホクホク感のある品種の方が個人的に好みです。

ホクホク感を感じられる焼き芋が好みという方には、以下のような品種がおすすめです。

鳴門金時

鳴門金時は、高知県で育成された「高系14号」という品種の系統選抜で、主に西日本で流通している品種となります。上品な甘みで、ホクホクとした舌触りを楽しむことができます。昔ながらの焼き芋は、この鳴門金時が使用されています。

鳴門金時は、8月上旬~9月下旬にかけて旬を迎えるのですが、熟成して甘味が増すのは1〜3月頃とされています。鳴門金時は、焼き芋だけでなく、蒸す、揚げる、煮るなど、どのような調理法でも美味しく食べられる万能さも人気の理由です。

紅あずま

鳴門金時が西日本なら、東日本で多く栽培されているのがこの紅あずまです。「関東85号」×「コガネセンガン」という交配の品種で、命名登録が1984年と歴史も長いさつまいもです。

紅あずまは、果肉が黄色で、繊維質が少ないため食味が非常に良く、上品な甘みを楽しむことができる品種として人気です。加熱することで、甘味が増すことから、焼き芋やてんぷらなどにして食べられることが多いです。なお、ホクホクした粉質の品種なのですが、貯蔵することでしっとり感が増します。

2つの味が楽しめる「シルクスイート」

最後は、「春こがね」×「べにまさり」を交配したシルクスイートです。シルクスイートは、ねっとり感もホクホク感も両方楽しむことができる品種として非常におすすめです。

この品種は、名前に「シルク」とあるように、非常に滑らかな舌触りが特徴です。収穫したてのシルクスイートは、ホクホクとした食感を楽しむことができるのですが、貯蔵しておくことで、粘質になっていきしっとりとした食感を楽しむことができるようになるのです。

甘味がとても強い品種なので、焼き芋としてだけでなく、スイートポテトなどの菓子としても人気です。

糖度が高いさつまいもランキング

焼き芋は、食感の好み以外にも、糖度の高さに注目する方も多いはずです。近年の焼き芋ブームの立役者となった安納芋などは、非常に高い糖度を誇っているため、焼いただけの芋なのに、砂糖を使ったスイーツよりも甘く感じる点で人気に火がついたという面もあると思います。

それでは、数あるさつまいもの品種の中で、特に高い糖度を誇るのはどれなのでしょうか?甘味を十分に楽しむことができる焼き芋が好みという方は、以下に紹介する品種を選ぶと良いです。

  • 1位:紅はるか・・・糖度約30度(加熱後の糖度50〜60度)
    先ほどご紹介したように、ここ数年の焼き芋ブームをけん引しているのが紅はるかです。この品種は、非常に高い糖度を誇っていることから、冷やしても強い甘みを感じることができ、夏場は「アイス焼き芋」として楽しまれています。
  • 2位:安納芋・・・糖度約20度(加熱後の糖度40度前後)
    安納芋は、甘味が非常に強い焼き芋の代名詞のような品種です。コンビニの焼き芋コーナーに安納芋が登場した時には、衝撃の美味しさで大人気になったのは記憶に新しいはずです。
  • 3位:紅あずま・・・糖度約14度(加熱後の糖度約30度)
    紅あずまは、昔ながらの焼き芋を感じられる品種で、ホクホク食感が人気です。ただ、糖度については、さつまいもの中でも上位にランクインし、甘味の中に上品さもあると人気です。紅あずまは、繊維質が少ない点も食感を良くする理由です。
  • 4位:シルクスイート・・・糖度約8.8度(加熱後の糖度40~50度)
    一般的なさつまいもの糖度は7度程度とされているので、そこまで高い糖度ではないと思うかもしれません。しかし、シルクスイートは、加熱後の糖度が安納芋並みにまで高くなる点が大きな特徴です。

甘い焼き芋が好みという方は、上記の糖度の高い品種を選ぶと良いでしょう。

まとめ

今回は、さまざまあるさつまいもの品種の中でも、特に焼き芋にして食べるのが適している品種をご紹介しました。記事内でご紹介した以外にも、多くの品種が栽培されており、どのさつまいもでも、焼き芋にして食べれば十分な甘さを感じることができるはずです。

ただ、昨今の焼き芋業界では、安納芋や紅はるかと言った、ねっとり食感のさつまいも品種が登場していて、昔ながらの「焼き芋はホクホクした食感が好き!」という方が驚いてしまうケースも増えているようです。ちなみに、ねっとり食感のさつまいもは、安納芋や紅はるかと言った、非常に糖度が高い点も特徴です。ただし、これらのさつまいもはブランド化されていることで、一般的なホクホク食感のさつまいもよりも割高になるのでその辺りは注意しましょう。

これから、本格的に焼き芋が美味しい時期がやってきますので、自分の好みに合う品種を探してみると良いのではないでしょうか?

参照:スイーツにも使われるさつまいもは野菜?それとも果物に分類されるの?