こんにちは、田中ブドウ園です。このサイトでは、毎日のように口にしている割に、意外と知らないことが多い果物に関するさまざまな情報をコラムにしてお届けしていこうと思います。第一回目のコラムは、甘みと酸味のバランスに優れていて、生のままおいしく食べられる『ぶどう』について、意外と知られていないブドウの分類などをご紹介します。

最近では、生鮮食品の保管や輸送に関する技術が飛躍的に進化していることから、スーパーなどで新鮮なフルーツを簡単に手に入れられるようになっています。皆さんも、お買い物に行ったときには、リンゴやミカン、ぶどうなどを手に取る機会は多いのではないでしょうか?

それでは、ぶどうについては、どのようなものをイメージしますか?リンゴと聞かれれば、誰もが赤くて丸い果物をイメージすると思うのですが、ぶどうの場合は、黄緑色や紫、赤みのある物など、さまざまな色をイメージする方が多いと思います。さらに、品種によって実の大きさまで異なるなど、フルーツの中でも特に種類が多いのが特徴です。
そこでこの記事では、ぶどうの分類について色味で分けてそれぞれ代表的な品種をご紹介します。また、第一回目のコラムですので、ぶどうに関する簡単な豆知識もご紹介します。

ぶどうの分類について

それではまず、ぶどうの分類についてご紹介していきます。実は、ぶどうは果物の中でも非常に品種が多いのが特徴で、世界中で品種改良が取り組まれたこともあり、現在では1万種類以上もあると言われています。実際に、ぶどうは粒の大きさや果皮の色、口にしたときの風味など、同じぶどうでもさまざまな品種が存在します。

ぶどうを分類する際には、「欧州種」と「米国種」など家系図のような系統による分類もあるのですが、ここではぶどうの果皮の色味で分類し、それぞれのいろの代表的な品種をご紹介します。ちなみに、ぶどうの果皮の色については、アントシアニンという色素の蓄積によるものとされていて、「赤」「黒」「緑」の3つに分類されます。(※農林水産省では黄緑系、赤系、黒系と表記しています)

緑系(黄緑系)のぶどうについて

緑系(黄緑系)のぶどうは、渋みが少なく、爽やかな香りのものが多いです。代表的な品種で言えば、シャインマスカットや瀬戸ジャイアンツ、バラディ、翠峰(すいほう)などが有名です。緑系のぶどうは、生食で食べられるフルーツとしても人気ですが、香りが高いという特徴から、白ワインなどの加工品として使われることもあります。
下で紹介する黒系や赤系のぶどうと比べると、渋みが少なく甘みがあるのが特徴です。以下に、緑系の代表的なぶどうをいくつかご紹介します。

■シャインマスカット
シャインマスカットは、贈答用のブドウとして高い人気を誇っています。ただ、2006年に品種登録されたばかりのまだ新しいぶどうの品種です。シャインマスカットは、さわやかなマスカットの香りと、18~20度ほどもある高い糖度が特徴です。また、酸味が控えめで、種が無いぶどうですので、小さなお子様や年配の方にも非常に好まれるブドウの品種と言えるでしょう。

■ロザリオ・ビアンコ
ロザリオ・ビアンコも、19~21度ほどの糖度があるぶどうの品種で、非常に甘みが強いのが特徴です。また、酸味も少ないので、幅広い年代の方に好まれる味だと思います。ロザリオ・ビアンコは、房自体が大きく、大粒の実がぎっしりついています。そして、他のぶどうと比較しても、粒が落ちにくいという特徴がありますので、輸送にも非常に強いことから、ギフト用のブドウとしても人気です。

関連:皮ごと食べられる高級ぶどう!シャインマスカットの特徴

赤系のぶどうについて

赤系のぶどうは、酸味が少なく、上品な甘みを持つものが多い事で人気です。さらに、品種によっては、他のぶどうにはない「シャキシャキ」とした食感を楽しめるような物もあります。
赤系のぶどうは、同じ赤系でも品種によって味がかなり違うものもありますので、いろいろなものを食べ比べして、自分の最も好みのものを探すという楽しみ方もできます。さらに、赤系のぶどうの中には、皮ごと食べられるような品種もあるので、子供がおやつとして手軽に食べられるのも嬉しい魅力になるのではないでしょうか?以下に、代表的な赤系ぶどうの品種をご紹介します。

■デラウェア
デラウェアは、スーパーなどでも良く並んでいる品種ですので、皆さんもよく見かけると思います。デラウェアは、アメリカで偶然発見された品種で、日本へはなんと明治時代の1872年に伝わったとされています。
このぶどうは、1房が100~150g程度で小粒なのが特徴です。強い甘みと程よい酸味が調和していて、さっぱりとした味わいで人気です。ちなみに、デラウェアは、「種なしで食べやすい!」ことから、店頭で最も目にする定番ぶどう品種になっているのですが、本来は種が入っている品種です。種なしのデラウェアは、栽培時にジベレリン処理を施すことで種を無くしています。

■赤嶺(せきれい)
赤嶺(せきれい)も赤系ぶどうの代表的な品種です。なお、赤嶺は、甲斐路の枝変わり(植物の突然変異のこと)で、山梨県で発見されたのが始まりです。甲斐路よりも熟期が早いことから、「早生甲斐路」とも呼ばれています。
赤嶺は一粒の重さが10gほどの大粒で、1房は500~600gぐらいになります。鮮やかな紅色の果皮は、見た目にも美しく贈答用のぶどうとしても人気です。味については、甲斐路と同じく、高い糖度を持っていて、程よい酸味もあり、すっきりとした味わいを楽しめる品種です。なお、赤嶺と甲斐路は、日持ちが非常に良いので、輸送性に優れている点も贈答用として人気の理由なのだと思います。

関連:「甲斐路」の枝変わり「赤嶺(せきれい)」はどんなぶどう品種?赤嶺の特徴をご紹介

黒系のぶどうについて

最後は黒系のぶどうです。ぶどうと聞いて『黒い』というイメージを抱く方は少ないかもしれませんが、実は黒系はぶどうを代表する品種が非常に多いです。黒系のぶどうは、コクのある味わいの品種が多いのが特徴で、藤稔、巨峰、ピオーネ、ナガノパープルなどが有名です。この中でも、『巨峰』は、日本国内で一番多く栽培されている品種で、日本を代表するぶどうが黒系とも考えられるかもしれません。
黒系のぶどうは、皮の色が非常に濃く、ポリフェノールが多く含まれています。甘みと酸味のバランスが非常に良いので、黒系ぶどうの品種を好む方も多いのではないでしょうか?以下に、黒系ぶどうの代表的な品種をいくつかご紹介します。

■ナガノパープル
ナガノパープルは、巨峰とリザマートの勾配品種で、長野県のオリジナルぶどうとして2004年に品種登録された、まだ新しいぶどうの品種です。
一粒の大きさは、巨峰を少し小粒にしたぐらいで、可愛らしい丸型をしているのが特徴です。そして、ナガノパープル最大の特徴は、黒系ぶどうでは珍しく、皮ごと食べられるという点で、種もありません。黒系ぶどうのほとんどは、皮を剥いて食べるようになっていますので、皮の周りの渋みを味わえる珍しい品種なので、とてもおススメです。

■ピオーネ
ピオーネは、巨峰と並ぶ黒系ぶどうの人気品種です。巨峰とカノンホールマスカットを交配させてできた品種です。ピオーネは、巨峰のような実の大きさと、マスカットのような香りの良さが特徴で、贈答用のぶどうとしても非常に高い人気を誇ります。
最近では、種のない「ニューピオーネ」も登場しています。

■巨峰
巨峰は1942年に誕生し、1955年に商標登録され知れ渡るようになったなど、長い歴史を持つぶどうです。巨峰が登場する以前のぶどうは、小粒で酸味の強い品種が多っかことから、巨峰の登場は当時の人にとって衝撃的なおいしさだったと言われています。
巨峰は、紫黒色の大粒で身がしまった多汁な果実が特徴で、18度から20度程度と高い糖度を持っています。香り豊かな強めの甘味と、きめ細かな風味を持っており、コクのある優しい酸味とのバランスで長く愛されています。なお、巨峰は新しい品種がどんどん開発されていて、上で紹介したようなぶどうの親としても有名ですね。

関連:ぶどうの王様と呼ばれる巨峰の特徴をご紹介
関連:贈答品ぶどうの定番「ピオーネ」の特徴について

意外と知らないぶどうの豆知識

ここまでは、ぶどうの分類について、色による分類方法をご紹介してきました。多くの方は「ぶどう=紫色」と言った認識をしていると思いますが、実はぶどうは緑、赤、黒という分類になっています。そして、それぞれの分類の中で、さまざまな品種が開発されていて、現在では1万種類以上のぶどうが存在すると言われています。

それではここから、ぶどう好きの方でも意外に知らないぶどうに関する豆知識をご紹介してみます。日常生活ではあまり役に立たないかもしれませんが、トリビアのとして覚えておくのも良いのではないでしょうか?

日本と諸外国ではぶどうの生産目的が異なる!

皆さんは、さまざまな場所でぶどうが栽培されている理由を考えたことがあるでしょうか?こういった質問をされたときには、考えるまでもなく「食用として栽培されている。」と思いますよね。

しかし実は、日本だけでなく世界中で行われているぶどう栽培の事を考えると、一概に食用とは言えないのです。なお、日本国内で栽培されているぶどうについては、その9割以上をそのまま食べる生食用として栽培されています。しかし、日本以外の世界で栽培されているぶどうについては、なんとその7割がワインの原材料として栽培されていて、食用の方が圧倒的に少ないのです。

ちなみに、現在では日本各地でブドウの栽培がおこなわれるようになっていますが、本来、雨の多い日本の気候はぶどうの栽培には向いていません。高温多湿で雨の多い日本の気候でぶどうを栽培した場合、病害や虫害が出やすくなってしまい、商品にできないぶどうがたくさんできてしまうリスクがあるのです。ただ、昔からフルーツとしてぶどうの人気が高いこともあり、研究者や生産者が品種改良に取り組み、日本の気候にも対応し、耐病性を兼ね備えた品種がどんどん開発されていきました。そしてさらに、栽培方法の研究も進み、土壌や水質の管理を徹底することで、現在では、世界一とも言える高品質なぶどうが栽培されるようになっています。ぶどうは、皆さんが考えている以上の、研究者・生産者の努力の結晶とも言える果物です。

日本で一番栽培面積が多いぶどうは?

現在、日本国内で生食用として栽培されているぶどうは60種類以上に上るとされています。それでは、それらの中でも最も大きい面積で栽培されているぶどうが何かご存知でしょうか?

最近では、シャインマスカットの名前をよく聞きますし、スーパーなどでは小粒のデラウェアが店頭で販売されているのを見かける機会が多いことから、これらのぶどうが最も栽培されていると考える方が多いかもしれませんね。しかし実は、日本国内で最も栽培面積が大きいのは『巨峰』なのです。巨峰は、日本国内のぶどうがまだまだ酸味が強かったころ、日本の気候でも栽培しやすい欧州種の大粒ぶどうを目指して品種改良されたと言われています。そして、1942年に巨峰が誕生し、果肉の甘みの強さや豊かなコクを持つ巨峰は、ぶどうの王様とも言われるようになっています。

ちなみに、日本全国で広く栽培されるぶどうですが、都道府県別の収穫量では山梨県が長らく1位です。そして、長野県、山形県、岡山県と続くのですが、この4県で日本全国のブドウ収穫量の約6割を占めています。

最も高価なぶどうは?

高価なぶどうと聞くと、シャインマスカットをイメージする人が多いのですが、日本で最も高価なぶどうは、石川県が誇る「ルビーロマン」です。ルビーロマンは、2021年の初セリにて、なんと一房140万円の値が付いたほどの高級ぶどうです。

鮮やかな赤色をしたぶどうは、まるで宝石のように美しいことからルビーロマンという名称がつけられたのでしょう。一粒の大きさは、なんと巨峰の2倍にもなると言われています。

※一房140万円はあくまでも初セリのご祝儀価格です。ルビーロマンは、8月頃が最盛期で、品数が揃うこの時期は、一房一万円前後が店頭価格になります。それでも十分に高価なぶどうです。

ぶどうの健康効果は?

ぶどうは果物の中でも栄養豊富だと言われており、欧州では「畑のミルク」などと表現されることがあるのだそうです。ブドウ糖や果糖など、吸収されやすい糖質がたっぷりと含まれていて、疲労回復効果などが期待できるとされています。

更に、黒系や赤系のぶどうの皮は、動脈硬化を予防し、目の疲れなどにも効果があると言われている、ポリフェノールの一種アントシアニンが豊富に含まれています。2019年には、長野県が『毎日グレープ(ナガノパープル)』を機能性表示食品として消費者庁に届出し、令和元年10月9日に受理されています。『毎日グレープ(ナガノパープル)』は、アミノ酸の一種のGABAが含まれていることから、血圧上昇を抑えるとしており、生鮮食品としての機能性表示届出は第一例目となっています。

参照:JA全農長野「毎日グレープ(ナガノパープル)」機能性表示食品の届出受理について

まとめ

今回は、色によるぶどうの分類と、意外に知られていないぶどうの豆知識をご紹介しました。この記事でご紹介したように、ぶどうは非常に多くの品種が存在しており、日本国内だけで考えても、60種類以上のぶどうが栽培されています。そして、日本では、栽培されるぶどうのほとんどが生食用となっており、皆さんの食卓に並んでいます。

なお、ぶどうの旬は、一般的に8月~10月ぐらいとなるのですが、現在ではビニルハウス栽培を導入している農場が増えていることや輸入品のぶどうが多くなっているなどと言った理由から、一年中食べたいときに食べられるようになっています。ブドウは、果物の中でも栄養が非常に豊富なので、健康的なデザートとしてもオススメですよ。

参考資料:農林水産省公式サイト